2012 Fiscal Year Research-status Report
ピロカルピン処理マウスにおける脳由来神経栄養因子と不安様行動の解析
Project/Area Number |
24500446
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
板倉 誠 北里大学, 医学部, 講師 (30398581)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳神経栄養因子 / 不安様行動 / ProBDNF / ピロカルピン / アストロサイト |
Research Abstract |
本研究は脳神経栄養因子(BDNF)を介した不安感を亢進する脳内機序の解明を目的としている。BDNFは、ProBDNFあるいはPro体が切断されたMature BDNFとして脳内に存在している。ProBDNFはp75受容体、Mature BDNFはTrkB受容体を介して情報伝達を行うことから、ProBDNFとMature BDNFを区別して、定量することは非常に重要である。そこで作製したBDNF抗体を用いて、ELISA系の確立を行った。結果、ProBDNF,Mature BDNFともに5~1000 pg/mlの範囲で測定することに成功した。この系を用いて、神経モデルPC12細胞に強制発現したBDNFの放出を測定したところ、高カリウム刺激依存的なProBDNF,Mature BDNFの放出を検出することができた。さらにカリウム濃度依存性が、ProBDNFとMature BDNFでは異なることから、それぞれを含んでいる分泌小胞の開口放出に必要なカルシウム濃度が異なっていることが示唆された。そこで、さらに詳細な開口放出制御機構の検討を行っている。 次に、ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト, ピロカルピン処理をBDNFノックアウトヘテロマウスに行い、不安様行動に対するBDNFの役割の検討を行った。 ピロカルピンを投与により、てんかん重積を起こした野生型マウスは、海馬でのBDNF発現が3~8倍上昇し、かつ明暗選択テストによって不安様行動を示すことを、これまでの実験によって明らかにしている。BDNFヘテロマウスでは、ピロカルピン処理によるBDNFの発現上昇が抑制され、不安様行動を示さなくなることが期待されたが、本実験で用いた投与条件ではBDNFの発現量が3倍程度上昇し、かつマウスは不安様行動を示した。今後は、BDNFの発現量の上昇を抑制するような実験条件を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳神経栄養因子(BDNF)の生理作用を解明してくためには、ProBDNFとMature BDNFを区別をしながら研究を進めていくことが必須になる。今年度は、サンドイッチELISA法によるProBDNFとMature BDNFそれぞれを高感度に定量する実験系の構築に成功した。この実験系は、本研究だけでなく、血清診断などに用いことで臨床的な応用も可能であり、BDNF研究に大きな寄与ができると考えられる。 本課題ではProBDNFとMature BDNFの脳内局在を免疫染色およびin situ ハイブリダイゼーション法を用いて検討することも研究目的に上げている。免疫染色法では、mature BDNFの断端抗体およびProBDNFのプロ領域に対する抗体での免疫染色には成功したが、Pro領域の抗体ではProBDNFだけでなく切断されたPro領域も染色されてしまう。そのためProBDNFのみを認識する抗体の作製が必要であり現在行っている。in situ ハイブリダイゼーション法についてはコントロール実験は成功しており、BDNFについて実験を始めたところである。 また遺伝子改変マウスを用いた不安様行動の解析もBDNFノックアウトヘテロマウスにおいては実験を始めている。しかしながら、ピロカルピン処理によるてんかん重積の誘発はマウスのストレインによる差が大きく、Balb/cマウスなどではほとんどてんかん重積を起こすことができなかった。よってBDNFヘテロマウス以外の遺伝子改変マウスについてはバッククロスを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行った研究を続けるとともに、さらに3つの課題をスタートする。 1. p75受容体ノックアウトマウスのピロカルピン処理と行動実験を行う。ノックアウトマウスと同腹の正常マウスにメチルスコポラミンを投与した後、ピロカルピンを腹腔内投与する。そのおよそ1時間後に、マウスはてんかん重積を起こす。てんかん重積時間が1時間半または4時間半になった時点で、抗けいれん薬を用いて、てんかん重積を止める。てんかん重積のダメージから十分回復した3~4日後以降のマウスについて行動実験 (明暗選択テスト) および免疫組織化学を行う。 2. ピロカルピン処理マウスへのTrkB受容体アンタゴニストの投与と行動実験を行う。ピロカルピン処理3~4日後のマウスにTrkB受容体アンタゴニストを腹腔内投与する。その後、マウスから脳を摘出し、抗リン酸化TrkB抗体で ウエスタンブロッティングすることでアンタゴニストの効果を検討する。さらに行動実験および免疫組織化学を行う。 3. ピロカルピン処理マウスの不安様行動に関与するBDNF以外のタンパク質を同定する。てんかん重積時間が、1時間半のマウスは重積後4日目には不安様行動を示すが、10~20日目以降では不安様行動を示さなくなる。そこで重積なし,重積4日後,重積20日後のマウスから脳を摘出する。次に、脳から抽出したタンパク質を蛍光ラベルし二次元電気泳動を行う。さらに蛍光イメージアナライザーで電気泳動したゲルのスポットを定量する。コントロールと比較し、てんかん重積4日後では変化があり、20日後にコントロールレベルに戻るタンパク質が、BDNFとともに不安様行動に関与する可能性のあるタンパク質である。そこでそのタンパク質をin-gel digestion し、LC-MS/MSを用いて同定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度ではin situ ハイブリダイゼーション法についてはコントロール実験までしか行えなかった。そこで本年度はBDNFについてのin situ ハイブリダイゼーション法を行うために繰越の研究費を物品費として使用する。
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Research Products
(1 results)