2013 Fiscal Year Research-status Report
未分化維持因子Musashi1による神経細胞の分化・回路形成制御の解析
Project/Area Number |
24500447
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀澤 健一 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (70424207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 貴雄 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (10383712)
芝田 晋介 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70407089)
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Keywords | Musashi1 / RNA結合タンパク質 / 翻訳制御 / 神経発生 / 分化 / 幹細胞 / 転写後制御 / 再生医学 |
Research Abstract |
Msi1は神経幹細胞を始めとした未分化細胞に発現し、未分化状態の維持と成熟細胞への分化を制御するRNA結合蛋白質である。それら幹細胞・前駆細胞は、再生医療を実現する上で非常に重要な研究対象であり、その未分化・分化を司ると考えられるMsi1の詳細な分子機構を明らかにすることは、社会的にも非常に重要なタスクである。 Msi1は標的mRNAに配列特異的に結合し、その翻訳を制御することで機能を発揮することが明らかにされている。しかし標的となるmRNAをはじめ、その分子機構には未知の部分が数多く残されている。我々はこれまでに、試験管内スクリーニングを行うことで、細胞遊走に関与 するDcx、また神経回路形成に関与するDccを、Msi1の新規標的候補遺伝子として報告してきた。本研究では、さらにMsi1の新規標的mRNAを同定すると共に、標的候補因子Dcx, Dccについて、Msi1が中枢神経幹細胞の分化にあたり、どのような制御を行っているかを明らかにすることで、幹細胞の性質解明と再生医学的利用価値の追求を目的とした。 これまでの生化学的、細胞生物学的検討により、Dcx、Dcc共にin vitroにおいて特異的なMsi1のターゲットmRNAであり、翻訳レベルでの発現抑制を受けることを証明することができた。しかしながらDcxに関しては、Msi1ノックアウトマウスを用いた解析を行ったが、目立った表現型の変化を観察することができなかったため、本年度は特にDcc遺伝子に着目して解析を進めた。 昨年度における検討により、DccがMsi1と特異的に相互作用し、その翻訳を抑制することを証明したが、本年度は更に、レポータージーンアッセイによる翻訳抑制分子機構の解析、アトラクションアッセイによる軸索誘導の機能的解析を行うことができた。今後は更に、in vivoでの解析を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のプランとしてリストアップしていたin vitroでの解析に加え、レポータージーンアッセイ、および神経軸索のアトラクションアッセイによる機能解析といった、Msi1タンパク質とDcc遺伝子に関するより詳細、かつ生理的に意義のある解析を行うことができた。これにより、Dccはより確度の高いMsi1ターゲットであると言うことができた。しかしながら、Dcx遺伝子に関しては、Msi1ノックアウトマウスを用いたin vivo解析から、in vitro解析の結果とは対照的にMsi1の特異的標的であることを示す良好な観察結果を得ることはできなかった。したがって、今後はDccにより注力した研究を、特にin vivoにおいて行うことが望ましいと考える。また共同研究者の解析においても、神経回路形成に関する他の重要な知見が得られており、今後はMsi1を軸とした神経回路形成の統合的理解を深めていくことができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
In vitroおよび培養細胞を用いたアッセイを当初の計画以上に詳細に行うことで、Msi1のDcc遺伝子に対する分子レベルの機能解析を詳細に進めることができ、生理的に意義のある結果を得ることができた。Dcx遺伝子に関しては、Msi1ノックアウトマウスを用いたin vivo解析において良好な結果を得ることができなかったため、今後は、Dcc遺伝子を軸にin vivoでの解析を進める。その為には、Msiパラログ遺伝子の機能的代償なども視野に入れ、包括的な機能解析を行いたいと考える。また、更なる新規標的の機能解析や、これまでも行ってきたように、マウス以外の種における解析なども進めることにより、Msi1のより詳細な機能を明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度大きな次年度使用額が生じた理由は、1)先行してin vivo解析を行ったdcx遺伝子で良好な結果が得られなかったため、当該年度はin vivo実験の量が計画よりも少なくなったこと。2)in vitroの実験に用いた試薬類が、既存および昨年度購入のものを多く使用することができたこと。3)主たる支出者である研究代表者が年度内に所属が変更となった為、実験の中断期間が生じたこと。などが挙げられる。 最終年度は、dcc遺伝子のin vivo解析に特に注力するため、これまでよりも大きな額の資金が必要になると考えられ、本年度生じた繰越金を有効に使用できると考える。また最終年度である為、成果報告のための学会発表、論文作製・投稿等にも費用がかかると考えられる。
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[Journal Article] Involvement of ER stress in dysmyelination of Pelizaeus-Merzbacher disease with PLP1 missense mutations shown by iPSC-derived oligodendrocytes2014
Author(s)
Kuroiwa-Numasawa Y, Okada Y, Shibata S, Kishi N, Akamatsu W, Shoji M, Nakanishi A, Oyama M, Osaka H, Inoue K, Takahashi K, Yamanaka S, Kosaki K, Takahashi T, Okano H
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Journal Title
Stem Cell Reports
Volume: 未定
Pages: 未定
Peer Reviewed
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[Journal Article] Rewiring of regenerated axons by combining treadmill training with semaphorin3A inhibition.2014
Author(s)
Zhang L, Kaneko S, Kikuchi K, Sano A, Maeda M, Kishino A, Shibata S, Mukaino M, Toyama Y, Liu M, Kimura T, Okano H, Nakamura M.
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Journal Title
Molecular Brain
Volume: 7
Pages: 14
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] The long non-coding RNA nuclear-enriched abundant transcript 1_2 induces paraspeckle formation in the motor neuron during the early phase of amyotrophic lateral sclerosis.2013
Author(s)
Nishimoto Y, Nakagawa S, Hirose T, Okano HJ, Takao M, Shibata S, Suyama S, Kuwako K, Imai T, Murayama S, Suzuki N, Okano H
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Journal Title
Molecular Brain
Volume: 6
Pages: 31
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Differential cellular localization of antioxidant enzymes in the trigeminal ganglion.2013
Author(s)
Sato H, Shibata M, Shimizu T, Shibata S, Toriumi H, Ebine T, Kuroi T, Iwashita T, Funakubo M, Kayama Y, Akazawa C, Wajima K, Nakagawa T, Okano H, Suzuki N.
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Journal Title
Neuroscience
Volume: 248C
Pages: 345-358
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Sema3A regulates bone-mass accrual through sensory innervations.2013
Author(s)
Fukuda T, Takeda S, Xu R, Ochi H, Sunamura S, Sato T, Shibata S, Yoshida Y, Gu Z, Kimura A, Ma C, Xu C, Bando W, Fujita K, Shinomiya K, Hirai T, Asou Y, Enomoto M, Okano H, Okawa A, Itoh H.
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Journal Title
Nature
Volume: 497
Pages: 490-493
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Sox10 is a novel marker of acinus and intercalated duct differentiation in salivary gland tumors: A clue to the histogenesis and diagnosis2013
Author(s)
Ohtomo R, Mori T, Shibata S, Tsuta K, Maeshima M, Akazawa C, Honda K, Yamada T, Yoshimoto S, Asai M, Okano H, Kanai Y, Tsuda H.
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Journal Title
Modern Pathology
Volume: 26
Pages: 1041-1050
DOI
Peer Reviewed
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