2012 Fiscal Year Research-status Report
ガス分子依存性多元的情報伝達系を標的とした脳エネルギー代謝・血流制御機構の解明
Project/Area Number |
24500448
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梶村 眞弓 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (10327497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 真実 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60212859)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 一酸化炭素 / heme oxygenase / 硫化水素 / 脳血流循環代謝 / 低酸素応答 / neruovascular coupling / 質量分析イメージング |
Research Abstract |
本研究は、脳組織で産生されるガスの生成・受容機構を探究し、ガス分子によるエネルギー代謝と血流調節のカップリング機構を解明することを目的とする。ガス分子の作用は、可逆的・即効的であり、かつ多元的な標的をもつことを特徴とする。それ故に、複数のガス分子とその受容蛋白質が時間的・空間的に複雑な相互作用を形成する生体内において、ガス分子の生成・受容及び情報伝達機構と生理作用との因果関係は立証されていない。我々は昨年度までに、複数の代謝物の組織内分布及び量的な変化を、時空的に解析可能にする「定量的質量分析イメージング」という新規解析法の構築に成功した。平成24年度は、本法を武器として、脳で恒常的に産生される一酸化炭素(CO)の生理学的意義の洗い出しと、標的の絞りこみを目指した。具体的には、CO産生酵素である heme oxygenase-2 (HO-2)の欠損マウスを用い、左中大脳動脈閉塞(MCAO)による偏在性脳虚血モデルを作成し、定量的質量分析イメージングによって部位特異的に惹起されるCO感受性の低分子代謝物リモデリングを野生型と比較検討した。その結果、虚血60分という急性期の患側脳では、ATP 濃度(<1.6 micromol/g tissue)で規定される虚血コアの領域が、HO-2欠損マウスで著増した。さらに、健常側においても、HO-2欠損マウスでは、ADP, AMP,乳酸が著増し、ATPは減少することが判明した。これらの結果から、HO-2/CO系は、MCAOに伴い顕著な血流減少が起こる患側コア領域のみならず、健常側で起こるマイルドな虚血に対しても、鋭敏に反応し、保護的な役割を担う可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度には、HO-2欠損マウスのみならず、硫化水素産生酵素であるcystathionine beta-synthase (CBS)のtetracyclin誘導型ノックダウンマウスの応用までを視野に入れていたが、繁殖が遅延したため計画通りに進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ガス分子の作用点を洗い出すためには、質量分析イメージングの方法論の最適化を推進し、より多くのターゲットを効率よくイオン化し、可視定量化することが必要となる。具体的には、①組織採取時の代謝物の分解を最小限に止める方法としてマイクロウェーブ固定法の確立、②試料の前処理法の最適化による効率のよい代謝物のイオン化、③代謝物の誘導体化することによるイオン化効率の指摘化等と取り組む予定である。 なお、24年度研究年度より繰越額が生じたが、これは効率的な物品調達を行った結果である。25年度においては、質量分析イメージング法の最適化を行う上での必需消耗品である導電性スライドガラスの購入に充当する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、遺伝子欠損マウスを用いたCOによる血流代謝調節機能の修飾作用を検証する予定であるが、これに使用する動物の購入費及び飼育維持費を計上する。またこれらのマウスのgenotyping及びphenotype解析のために不可欠であるPCR関連試薬、免疫組織染色キット・抗体・制限酵素・培地・血清などの一般試薬、マトリックス・特殊コートスライドガラスなど顕微質量分析用試薬及びディスポーザブル実験器具購入のための消耗品費に用いる予定である。
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Research Products
(15 results)