2013 Fiscal Year Research-status Report
ガス分子依存性多元的情報伝達系を標的とした脳エネルギー代謝・血流制御機構の解明
Project/Area Number |
24500448
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梶村 眞弓 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (10327497)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 真実 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60212859)
|
Keywords | 一酸化炭素 / 硫化水素 / heme oxygenase / 脳血流循環代謝 / 低酸素応答 / neurovascular coupling / 質量分析イメージング |
Research Abstract |
昨年度までに、複数の代謝物の組織内分布及び量的な変化を、時空的に解析可能にする「定量的質量分析イメージング」という新規の解析法の構築に成功した。平成25年度は、本法を武器として、脳組織において恒常的にmicromolオーダーで産生されている一酸化炭素(CO)の生理学的意義の洗い出しと、標的の絞りこみを目指した。CO産生酵素である heme oxygenase-2 (HO-2)の欠損マウスを用い、左中大脳動脈閉塞(MCAO)による偏在性脳虚血モデルを作成し、定量的質量分析イメージングによって部位特異的に惹起されるCO感受性の低分子代謝物リモデリングを野生型と比較検討した。その結果、虚血60分という急性期の患側脳では、ATP 濃度(<1.6 micromol/g tissue)で規定される虚血コアの領域が、HO-2欠損マウスで増加することが判明した。さらに、健常側においても、HO-2欠損マウスでは、ADP、 AMP、乳酸が増加し、ATPは減少することが判明した。従来の方法では困難であった、超急性期の虚血病態で惹起される代謝変動を、複数の代謝物の量的変化を指標として、しかも領域特異的に検証することが可能となった。 血管径測定に加え、脳実質の細動脈や毛細血管内の赤血球速度をline scanによって測定することに成功し、その結果、微小血管床での絶対血流量の算出が可能となった。野生型と内因性CO産生が半分に減弱しているHO-2欠損マウスの両群で、虚血前後での血流動態を比較した。ベースラインの血管径には両群で差が認められなかったが、赤血球速度は、HO-2欠損マウスで顕著に上昇しており、驚いたことにCO産生が低下したマウスのprecapillary arterioleのベースライン血流量は、野生型の約3倍に増加していることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、繁殖が困難になり、やや遅延を余儀なくされたHO-2欠損マウスの交配が、25年度は順調に経緯したことにより、研究計画を順調に進展されることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
脳循環代謝領域においては、ATP産生を支える基質供給機構の同定など、脳血管障害におけるエネルギー代償機転の分子機構の解明が大きな課題となる。脳虚血時に特定の部位でどのような代謝の変動が起こるのかを探究することにより、治療の標的を絞り込みに結びつけたい。また、病態解明の鍵となる代謝のポイントを制御することによって神経細胞死を回避し、新しい脳梗塞治療戦略の開発を目指したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
使用計画どおりに資金執行ができなかった理由は主に下記の3点である。 1. 24年度に難航した実験動物の交配が、うまく行ったため、実験用動物購入のため予定していた経費がかからなかったこと。 研究最終年度となる今年度は、昨年度より繰り越した研究費で、免疫組織化学用の試薬購入、繁殖が順調に行えるようになった遺伝子改変マウスのgenotyping用試薬、論文投稿料、論文出版費等に充当する予定である。
|
Research Products
(9 results)