2012 Fiscal Year Research-status Report
ストップコドンリードスルーによるミエリン構成タンパク質の産生機構と機能の解明
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24500449
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
馬場 広子 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (40271499)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経科学 / リードスルー / 翻訳 / ミエリン / 脳・神経 |
Research Abstract |
末梢神経系ミエリンはシュワン細胞によって形成され、ヒトでは脱髄を伴う免疫性あるいは遺伝性末梢神経障害が知られている。申請者らは、末梢神経ミエリン特異的タンパク質であるMyelin protein zero(P0 or MPZ)mRNAのstop codon読み飛ばしにより通常のP0より大きいL-MPZが産生され、慢性脱髄疾患患者やモデル動物の血清中にL-MPZ特異抗体が高率に存在することを見出した。脊椎動物の正常組織においてstop codon読み飛ばしで単一のmRNAから複数の機能分子が産生される例は報告がない。そこで、本研究では、1.この分子の正常ミエリンにおける機能を明らかにし、2.脱髄性疾患との関連性を調べ、3.stop codon読み飛ばし機構の解析とL-MPZを用いた読み飛ばし候補化合物評価系の確立を目的とした。本年度の実績は下記のとおりである。 1.L-MPZはP0と同様にリン酸化を介してミエリン形成に働く可能性がある。そこでリン酸化部位に変異を入れた種々のcDNAを作製し、細胞に強制発現させ、リン酸化状態および細胞接着への影響を検討できる系を準備した。また、リードスルー促進薬G418をマウス腹腔内に投与し、坐骨神経におけるL-MPZ/P0比の変化とミエリン変化を検討した。 2.L-MPZ特異的ペプチドを投与した動物で神経組織を検討したが、抗体価上昇のみでは脱髄は生じなかった。 3.Myc-P0 cDNAを作製し、無細胞翻訳系で反応させMyc抗体でP0とL-MPZを検出した。G418を加えL-MPZ/P0比の上昇を確認し、誘導薬の定量的解析を可能とした。また、stop codon直後の配列に変異を入れたcDNAを作製し、読み飛ばし効率を比較した結果、P0自体読み飛ばし効率が良く、特に直後のCが効率に影響することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度当初の実験計画では、1.L-MPZのミエリンにおける機能の解析、2.脱髄病態におけるL-MPZの役割の検討、3.L-MPZ産生に対する読み飛ばし機序の関与と読み飛ばし薬候補化合物評価系の確立を予定した。実績に記したとおり、1.ではP0およびL-MPZの細胞内ドメインのリン酸化部位それぞれに変異を入れたコンストラクトの作製を予定どおり終了し、細胞への強制発現が可能となった。今後この系を用いて細胞接着の検討を行うことで、L-MPZの機能解析およびこの分子の機能調節部位を解析することが可能となる。一方、in vivoでG418を用いて強制的に読み飛ばしを促進させ、ミエリン形成への影響を見る予定であったが、G418の毒性が大きく、方法自体の再検討が必要となった。2.脱髄におけるL-MPZの役割に関しては、in vivoで抗体価上昇と脱髄の関連をさらに解析中である。3.に関しては、mycをN末につけたP0 cDNAを作製したことにより、当初の目的どおりmyc抗体を用いた読み飛ばし効率の解析が可能となった。さらに、この系を用いてstop codonの前後の配列を変えた変異cDNAを用いて読み飛ばし効率を検討した結果、P0自体のstop codon前後の配列が比較的高い読み飛ばし効率を持つことを明らかにした。今後はこの系を読み飛ばし候補薬のスクリーニングに用いることが可能である。以上の理由から、一部遅れはあるものの、当初の計画どおり進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.L-MPZの末梢神経ミエリンにおける機能:本研究で作製した各種P0 cDNAを用いて、リン酸化部位に変異のあるL-MPZを強制発現させ、細胞接着能を解析する。計画当初は単層培養系細胞の利用を計画したが、今回の検討結果から強制発現させた浮遊細胞を用いてL-MPZの細胞接着能を解析することにした。また、引き続きin vivoでP0 mRNAの読み飛ばし効率を変化させることによりミエリン形成への影響を調べる。G418は非常に毒性が強いため、実際に生じた変化がミエリン形成への直接的効果か毒性によるものか判断が困難であることから、L-MPZおよびその変異コンストラクトをマウス坐骨神経内に強制発現させた上で組織学的解析を行うことも検討する。 2.脱髄性疾患との関連性:あらかじめL-MPZ抗体価を上昇させたマウスの坐骨神経にリゾレシチンを投与し、脱髄病巣の大きさ、再ミエリン化などをL-MPZ抗体のないリゾレシチン投与コントロールと比較することにより、L-MPZ抗体の脱髄病態への関与を調べる。 3.stop codon読み飛ばし機構の解析とL-MPZを用いた読み飛ばし候補化合物評価系の確立:本研究で作製したMyc-P0 cDNAを用いて無細胞翻訳系で産生したタンパク質をウエスタン解析すると、抗Myc抗体によってP0およびL-MPZの2本のバンドを検出することができる。これにより両バンドの濃さを測定した上でL-MPZ/P0の量比を計算し、読み飛ばし効率を定量化ことが可能となった。G418あるいは他の候補薬を添加した場合の効率を計算し、読み飛ばし効率を定量化する。また、前年度の研究で明らかにしたL-MPZのストップコドン周囲の配列をデータベースと比較し、リードスルーされる可能性のある他の分子を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(4 results)