2012 Fiscal Year Research-status Report
変異型WWP1ユビキチンリガーゼによる筋線維変性の分子機構解析
Project/Area Number |
24500472
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
今村 道博 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部, 室長 (80221787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 伸一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部, 部長 (90171644)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 筋ジストロフィー / WWP1 / E3ユビキチンリガーゼ / HECTドメイン / WWドメイン |
Research Abstract |
筋ジストロフィーニワトリの原因遺伝子に認められるものと同じミスセンス変異(R436Q)をもつWWP1分子を発現させたトランスジェニックマウスでは横紋筋特異的に数百残基のアミノ酸を欠失したWWP1フラグメントを発現するため、このsmall WWP1 (sWWP1)の形成が筋変性に関わるものと推察される。そこで平成24年度はこのsWWP1の形成機構と構造を明らかにする目的で、新規の抗WWP1抗体によるイムノブロットや免疫沈降、また、R436Q WWP1分子のin vitro発現系による解析を行った。 まず、sWWP1の形成(R436Q WWP1の分解)が436番目のアミノ酸変異に起因しているのかどうかを明らかにするために、この変異型R436Q WWP1と正常型WWP1を発現ベクターにより培養筋細胞に導入し、それぞれの分子について解析した。その結果、R436Q WWP1のみが筋分化に伴い分解して行くが、これはMG132により抑制されるため、この分解のにはユビキチンープロテアソーム系が関与するものと考えられた。 次にWWP1分子の異なる領域にエピトープを持つ抗体を入手してsWWP1の欠失領域の特定を試みたが、抗体の特異性に問題があり明瞭な結果は得られなかった。そこで変異型WWP1のN末及びC末端にcMycエピトープタグを導入し、抗Myc抗体で検出するという方法で解析したところ、分子の両端が共に分解されていることが示唆された。 これらの知見は筋ジストロフィーニワトリで発見されたWWP1分子内のミスセンス変異が横紋筋特異的にユビキチン-プロテアソーム系での分解を誘導するシグナルとなり、WWP1の機能に何らかの変化を与え、筋の形成や形態の維持に影響を及ぼす可能性を示唆していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画では、断片化されたsmall WWP1 (sWWP1) の形成機構と構造を調べる目的で、(1)まず、マウスWWP1に生じたR436Qのミスセンス変異がsWWP1形成の引き金となっているのかをin vitro発現系によって解析すると同時に横紋筋特異的な現象かどうかを検討すること、(2)次に、トランスジェニックマウスの骨格筋サンプルなどを用いてsWWP1構造の解析を行うこと、(3)更に、sWWP1に保存されるWWドメインがこれまでに他の組織で報告されている様々な基質と結合できるのかどうかを調べながらターゲット分子を検索することであった。 (1)については、計画通り、筋培養細胞を用いたin vitro 解析によりR436Qミスセンス変異がsWWP1形成を誘導していることが示唆された。また、増殖期の未分化な筋細胞での分解は認められないが、筋分化へのコミットメントが起こると顕著な分解が生じることから、sWWP1生成が横紋筋特異的であることが強く示唆されている。(2)については入手した抗体の性能が悪く、マトランスジェニックマウス由来サンプルの解析を行うことが出来なかったが、変異型WWP1のN末とC末それぞれにエピトープタグを付加した発現ベクターを作成し、これを培養細胞に発現させて分化させることによりWWP1の分解領域に関する知見を得た。(3)は25年度にまたがり行う計画であり、現在はその準備を行っている。 以上のことから平成24年度の研究計画達成度は「おおむね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究計画はおおむね順調に進展しているが、なお明らかにせねばならない部分も残っている。特にR436Q WWP1トランスジェニックマウスを用いたin vivoでのsWWP1の構造解析については、より詳細な情報が必要である。従って、今後は25年度の研究計画に沿ったWWP1分子のターゲット分子(基質)の検索を本格化すると共に、sWWP1の構造解析についても進めて行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
我々のジストロフィーニワトリをマウスにモデル化するという試みは様々な興味深い知見を提供する結果となったが、筋ジストロフィーの症状としてはニワトリよりも軽いものである。これまでの筋ジストロフィーニワトリの研究の中には、性染色体を構成する遺伝子バックグラウンドにより筋症状に変化を生じるという報告がある。また、様々な遺伝子改変マウスを用いた解析では通常は正常と差がなくとも、人為的に筋変性を誘導した場合に筋の修復や再生の過程で異常を検出するという例も少なくない。 平成26年度は、このよう観点から、R346Q WWP1マウスについて筋症状の解析を行う計画である。具体的にはR346Q WWP1トランスジェニックマウスにX染色体上のジストロフィン遺伝子に変異を持つmdxマウス(デュシェンヌ型筋ジストロフィーモデルマウス)を交配させ、或いは局部的な筋変性を生じさせるカルジオトキシンを投与し、変異型WWP1が筋組織の再生に及ぼす影響について解析する。また、これに加え、これまでの研究成果を論文として発表する諸経費にも研究費を使用する。
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[Journal Article] Bodywide skipping of exons 45-55 in dystrophic mdx52 mice by systemic antisense delivery2012
Author(s)
Aoki Y, Yokota T, Nagata T, Nakamura A, Tanihata J, Saito T, Duguez SMR, Nagaraju K, Hoffman EP, Partridge T, Takeda S
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci USA
Volume: 109
Pages: 13763-13768
DOI
Peer Reviewed
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