2012 Fiscal Year Research-status Report
生体脳内シナプス可塑性に伴うアストロサイト機能の観測
Project/Area Number |
24500475
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
三嶋 恒子 独立行政法人理化学研究所, 神経グリア回路研究チーム, 研究員 (90415307)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アストロサイト / グリア / 可塑性 / シナプス |
Research Abstract |
シナプス可塑性ひいては記憶・学習の脳内メカニズムにおけるグリア細胞の役割を解明し、微小ネットワーク構造の動態への関わりを明らかにすることを目的とし、初年度(24年度)は脳可塑性誘導プロトコルの確立及びイン・ビボでのアストロサイトの動態・形態観測のための実験セットアップを行った。 1. 脳の可塑的変化の誘導プロトコルはArcdVerus トランスジェニックマウスの片側において,C2位置にあるヒゲ以外を除去する方法を採用した。このマウスではシナプスに可塑的変化が起こっていると考えられる神経細胞にdVenus蛍光蛋白の発現を確認することができる。 本プロトコルによりヒゲ切除側からの感覚入力がマッピングされているC2バレル野浅層(1-4層)に有意に多くのdVenusの発現神経細胞を観察することができた。予備実験に比べ動物による結果のバラつきが少なく可塑的変化をより限定した部位に強くひき起こすことができることを確認した。これにより観察対象のアストロサイトを可塑的変化領域と非変化領域で形態・動態を比較観察することができる。 2.観測対象のアストロサイトの微小突起を可視化するため、アストロサイトへの蛍光蛋白導入をウイルスベクターを用いた脳への直接導入及び間接導入(ソノポレーション法)により試みた。本実験は蛍光タンパクの導入から発現までいずれも時間がかかるのに加え、可塑的変化の誘導前後での計測を行うという慢性実験である。そのため、既に観測窓を脳にうがった動物を、炎症・感染などを避けて長期にわたり維持・飼育する必要がある。間接導入法は導入位置を観測前に正確に知ることができないが、非侵襲導入であるため、脳への直接導入法に比べ、動物の状態維持・導入方法自体がより簡便である。そこでソノポレーションによるウイルスベクター導入条件の最適化を行いin vivoでアストロサイトを観測する基礎を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画書に記したうち「シナプスが可塑的変化を起こした神経細胞群の可視化(可塑性誘導プロトコルの確立」については完全に達成したすることができた。しかしながら「神経細胞群の可塑的変化に伴うグリア(アストロサイト)の形態的変化の観察」については具体的な結果を出すにいたらなかった。一つは計画書に記した免疫染色法を用いた結果が低倍の光顕観察で目立った形態変化が見られなかったため高倍の共焦点顕微鏡を用いた観察が必要になったことである。共焦点レーザー顕微鏡で詳細に観察するにはが一連の結果をだすだけでもかなりの時間がかかるので遅れている。また、サンプルの条件決定を行う際、当初予定したエレクトロポレーション法でのアストロサイトへの蛍光プラスミドの導入が、結果的にvivo観察に耐えるようなものでなかっため、ソノポレーション法に移行した。ソノポレーション法は脳への適用方法は現在確立されておらず、条件検討に時間を要した。但しアストロサイトの蛍光蛋白の導入はもともと25年度の予定だったのでを前倒しで行ったので、本年度は固定切片での観察はおこなわずに形態もふくめたアストロサイトのin vivo観察を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoでの動物で行う。dVenusによりで標識されたシナプス可塑性が誘発された神経細胞及び対照部位の神経細胞の樹状突起周辺のアストロサイト細胞体及び局所での形態およびCa2+動態を二光子顕微鏡を用いて計測・比較検討する。アストロサイトの可視化及びカルシウム感受性蛍光蛋白の導入はウイルスベクターAAV9-GFAP-mcherry/RCampをソノポレーション法を用いて導入する。 二光子顕微鏡下において、dVenusの発現が顕著である細胞の樹状突起を確認したのち、その近隣のアストロサイトのカルシウム動態を麻酔下で計測する。神経細胞群の活動をシリコン多点電極による脳波測定、マルチスパイク活動計測によりモニターする。以上取得したデータについて,Ca2+変動の頻度、振幅、持続期間等の1次的な計測の他に、細胞間同士の同期活動、場所・時間的な相関、dVenus発現細胞との位置関係等の微小ネットワーク構造の動態におけるアストロサイトの役割を究明する解析を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度の購入予定であった蛍光実体顕微鏡は、研究室に23年度に別経費で年度末に急遽納入が決まり、重複した購入をする必要がなかった。また観測のためのウイルス導入法を変更したため研究に遅れを生じたので、学会不参加であった。そのため予定額は次年度に繰り越すこととなった しかしながらアストロサイトの可視化には当初の予定と異なるソノポレーションを採用したので必要な機器・消耗品代が当初のH25年請求額より大幅に増える。 予定している研究費の使用品目はソノポレーターおよびそれにともなう試薬・消耗品、電気生理に使用するシリコン多点電極、電子部品(ヒゲ刺激装置)、Hall検出器、ガス麻酔装置、動物等である。また今年は中間報告を学会で行う予定。
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