2013 Fiscal Year Research-status Report
Sox17へテロ不全マウスの新生児肝炎疾患モデル動物としての応用
Project/Area Number |
24500485
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
金井 正美 東京医科歯科大学, 実験動物センター, 教授 (70321883)
|
Keywords | Sox17 / マウス / 胆のう / C57BL/6 / 疾患モデルマウス |
Research Abstract |
先天性胆のう閉鎖症は新生児で発症する胆のう胆管系疾患で、1万人に1人で発生する小児肝移植の70%を占める先天性奇形原因疾患である。発症原因は胎生期のウイルス感染であるとも言われているが、詳細の発症機序は未だ不明である。 Sox17ヘテロ形成不全における、胆のう、胆管上皮の発現量低下が胆道閉塞ならびに胎生期の肝炎を引き起こす機序を明らかにするために、C57BL/6(B6)に遺伝背景をバッククロスしたSox17へテロ個体を用いて組織学的、分子生物学的検討を行った。 W9.5ES細胞は129由来の細胞株であるが、その遺伝背景をB6にバッククロスしたところ、5世代で急速にヘテロ個体の新生児率が減少した。そこで胎生後期におけるワイルドとヘテロ個体の発生について詳細を確認したところ、ヘテロ個体では肝臓重量の低下、周辺部位の病理的変化が認められた。更に17.5日胚ではDBAトレースにより、胆のう低形成と胆管の異常分岐が観察された。肝臓周辺領域では肝細胞の成熟マーカーであるPAS染色陰性細胞はERストレスマーカーであるGRP78陽性を組織学的に示し、また、電顕観察により肝細胞内のERの膨化が観察された。更に肝炎マーカーであるALT, ALP並びに胆汁の生化学的上昇が認められたものの、胆のう上皮、胆管上皮細胞そのもの形態はほぼ正常であった。胆のう上皮には特異的にSox17の発現が観察され、発現の半量になるヘテロ個体においては、胆のう上皮の脱落とそれに伴う、胆管閉塞が形態学的に観察された。 現在は胆嚢組織そのものの自立的分化能と分子レベルの変化をReal time PCR並びに下位遺伝子の発現変化とともに観察を行っており、更に詳細な分子機構を明らかにする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度以降は、1)Sox17欠損胚の肝原基、胆のう・胆管、膵芽の器官培養下での分化能、2)Sox17ヘテロ個体と肝細胞並びに膵臓b細胞を特異的に欠損するTRECKマウスとの掛け合わせを行い、各々の幹細胞の再生過程におけるSox17遺伝子の役割を明らかにし疾患モデル動物として確立する。を達成目標としていたが、その中、前腸領域 を含む肝臓、胆のう・胆管、膵臓原基 (9.5dpc)の器官培養法を用いたSox17欠損胚の胆管の発生・発達能についてはほぼ目標通りに達成したと思われる。 Sox17欠損マウスは10.5dpcに胎生致死となるため、それ以降の内胚葉系臓器の発生・発達の個体での解析は困難である。申請者らは9.5 dpc (20 somite)の胚の肝原基・膵芽を含む前腸領域を取り出し、メンブレンフイルター上で2-3日間の器官培養を行うことにより、PDX1,HNF4αの発現と胆管形成をin vitroで維持、再現した。この系を用いて、9.5 dpc のSox17欠損胚から前腸領域を取り出し、2-3日間の器官培養を行い、胆管の形態形成を誘導する。その培養片を 切片/whole mount 標本において、AFP、 PDX1、 DBAなどの多重蛍光免疫染色によりin vitroでの胆管の形成・分枝パターンを解析する。これによりwild typeとSox17欠損ヘテロ由来の膵臓、肝細胞、胆管細胞の分化、発生能の差異について定量的に比較検討した。本件では胆のう領域のみのorgan cultureを実施することで、ヘテロ個体において1)組織伸長が認められないこと、2)正常で観察されるPCNAによる細胞増殖の組織偏在(伸長方向でのみ強陽性を示す)が観察されず、胆のう領域が自立的分化能を有し、直接的な原因であることを証明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
TRECK(Toxin Receptor-mediated Cell Knock out)法を用いた内胚葉再構築の可視化;Sox17-GFPマウスとTRECK(ジフテリア毒素を用いて特異的細胞死を引き起こす方法)でPdx1(膵臓)、Alb(肝臓)陽性細胞のみを特異的に死滅させるTg(Saito et al, Nature Biotech 2001)との掛け合わせを行うことで内胚葉細胞の再構築過程を観察する。即ち、Sox17-GFPマウス(雌)とPdx1-TRECKマウス(雄)をmatingし、Pdx1が発現する9.5日齢に雌親にジフテリア毒素(5-50 ug.kg)をinjectionしPdx1陽性細胞を死滅させる。48もしくは72時間後にサンプル採取を行う。得られた胎児は抗GFP抗体を用いて細胞移動を詳細に組織化学的に確認する。Pdx1遺伝子は将来、胆のう胆管系、膵臓に派生する細胞に9.5日胚から陽性を示すが、この時期の陽性細胞を死滅させることで、肝芽領域の未分化細胞が膵臓、胆のう領域の細胞へ変換することが可能か、また可能である場合には、bi-potentialな未分化細胞の動きを可視化する。また同日齢胎児の全載培養系を用いて、ジフテリア毒素(5-50 ug.kg)を添加し、特定領域をDiIで細胞ラベルすることで、細胞のムーブメントをwhole embyoで可視化する。以上の実験系において、組織の再構築過程における周辺領域の代替が可能であるかどうかを確認し、領域特異的細胞の未分化能、その環境要因を決定する。現在はPdx1-creとSox17FloxFloxマウスを掛け合わせ、まずは個々の表現系の確認をする準備中である。
|
-
[Journal Article] Sox17 haploinsufficiency results in perinatal biliary atresia and hepatitis in C57BL/6 background mice.2013
Author(s)
Uemura M, Ozawa A, Nagata T, Kurasawa K, Tsunekawa N, Nobuhisa I, Taga T, Hara K, Kudo A, Kawakami H, Saijoh Y, Kurohmaru M, Kanai-Azuma M, Kanai Y.
-
Journal Title
Development
Volume: 140(3)
Pages: 639-648
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-