2012 Fiscal Year Research-status Report
新たな白内障モデル動物の開発:水晶体破裂と眼内炎抑制に関する研究
Project/Area Number |
24500496
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岡田 利也 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00169111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向本 雅郁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (80231629)
中川 博史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (60336807)
近藤 友宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40585238)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疾患モデルマウス / 水晶体破裂白内障 / 常染色体劣性遺伝 |
Research Abstract |
本研究はCF#1系マウスに新たに発見された遺伝性水晶体破裂マウスの特性を明らかにするとともに眼内炎発症抑制機構に関する解析を行うことにより、新しい疾患モデル動物として確立することを目的としている。本年度はCF#1系由来遺伝性水晶体破裂マウスに関して以下の成績を得た。 ①CF#1由来遺伝性水晶体破裂白内障マウスの病変は肉眼的には生後5週齢から水晶体の白濁として観察され、症状が進むにつれ、白濁部位が本来の水晶体領域から脱落し、水晶体破裂を呈した。②発症個体同士の交配では雌雄ともに発症率は100%で、非発症個体とのF1世代では発症個体が認められなかった。F2世代での発症率は25.2%、戻し交配世代での発症率は45.6%で雌雄間に有意差は見られなかった。このことから、本水晶体破裂白内障マウスにおける疾患の遺伝様式は常染色体劣性遺伝で原因遺伝子は単一であることが分かった。③組織学的には、3週齢で水晶体赤道部に空胞、5週齢で水晶体核領域の後方への脱出が認められた。④BALB/c系マウスとの戻し交配発症個体に関する連鎖解析により、原因遺伝子は第3染色体D3Mit79~D3Mit216の2.4cM領域に存在することがわかった。この領域に存在するBcar3遺伝子のノックアウトマウスは水晶体破裂を示すことが報告されており、本破裂白内障の候補遺伝子と考えられたが、Bcar3のタンパクコード領域に塩基配列の異常は認められなかった。 以上のように、CF#1系由来遺伝性水晶体破裂マウスにおける遺伝様式、形態学的特性、原因遺伝子の染色体上での詳細な位置が明らかになった。今後は、原因遺伝子の同定および細胞増殖因子ならびに水晶体タンパクの発現変化を明らかにするとともに、発症を軽減するような修飾遺伝子の解明を含む眼内炎発症抑制機構を明らかにするための実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度はA)水晶体に関する解析(形態学的特性ならびに水晶体構成蛋白の変化の解明)およびB)遺伝学的解析(原因遺伝子が存在する染色体の決定)を行った。 A)の水晶体に関する解析では、組織学的観察は予定どおり成果を得た。すなわち、生後3週齢の水晶体において線維の膨化と空胞の出現を、5週齢では水晶体核領域の後方への脱出(破裂の兆候)を観察した。細胞増殖因子(FGF-1、FGF-2およびTGF-β)に関する酵素抗体法、リアルタイムPCRによる解析ならびに水晶体構成蛋白の解析については、適切な条件の設定に時間を要し、結果を出すまでに至っていない。 しかしながら、B)の遺伝学的解析では原因遺伝子が存在する染色体の決定に加えて、平成25年度以降に予定していた原因遺伝子の染色体上での詳細な位置の決定(ファインマッピング)を終えている。さらに、絞り込んだ領域における遺伝子の幾つかの発現量の変化等を解析した。水晶体破裂を示すことが報告されているBcar3ノックアウトマウスは絞り込んだ領域に存在するBcar3遺伝子の欠損によって発症することから、本破裂白内障マウスの候補遺伝子と考えられた。しかし、Bcar3遺伝子のタンパクコード領域には塩基配列の異常は認められず、候補遺伝子からは除外されると考えられた。Bcar3遺伝子の他に候補遺伝子と考えられた5つの遺伝子についてその発現量を調べたが、著しい変化は観察されなかった。 以上のように、平成24年度に計画していた実験で一部結果の得られなかった面もあるが、平成25年度以降に計画していた実験の結果を一部得ることができたことから、おおむね計画どおりにすすんでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は前年度に引き続き、①水晶体における細胞増殖因子および②水晶体蛋白の解析を行う。さらに、③原因遺伝子の同定と候補遺伝子の検出に取り組み、得られた成果を学会発表及び論文発表する。 ①酵素抗体法によりFGF-1、FGF-2あるいはTGF-β陽性細胞の局在を、リアルタイムPCRを用いてmRNAの発現の変化を定量的に調べる。②水晶体蛋白を抽出後、SDS-PAGE、Western blotならびに二次元電気泳動を行う。さらに、発症個体で発現に著しい変化の現れたバンドあるいはスポットを抽出し、そのアミノ酸配列を調べ、水晶体蛋白の変化を特定する。③前年度絞り込んだ原因遺伝子の存在領域に存在している既知遺伝子から候補遺伝子を検出し、ダイレクトシークエンス法によりその候補遺伝子の塩基配列をオートシークエンサーで解析する。さらにDNAマイクロアレイにより、水晶体破裂白内障発症による遺伝子発現の変化を網羅的に解析する。 最終年度となる平成26年度は、原因遺伝子の同定と候補遺伝子の検出に加え、④原因遺伝子のヒトでの相同遺伝子の探索、⑤水晶体破裂白内障発症に影響を及ぼす修飾遺伝子の探索および⑥水晶体破裂白内障マウスにおける眼内炎抑制機構に関する解析を行う。 ④原因遺伝子の存在するマウス染色体上の領域に相当するヒト染色体の領域に存在する遺伝子を調べる。⑤C57BL/6マウスあるいはMSM/Msマウスとの交雑実験を行い、次世代(F1ならびにF2)での発症時期、発症率および水晶体の形態変化を調べ、その原因遺伝子(修飾遺伝子)を解明する。⑥眼球における熱ショック蛋白(HSP27)およびNOSの局在を酵素抗体法により調べ、水晶体破裂白内障発症個体、正常個体及びLPS誘発眼内炎マウスとの間で比較する。 得られた研究成果を学会発表及び論文発表するとともに総合的に考察し、新たな疾患モデル動物を開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は新しい疾患モデル動物を開発しようとするものであり、平成25年度は水晶体における細胞増殖因子ならびに水晶体蛋白の解析に加え、原因遺伝子の同定と候補遺伝子の検出に取り組み、得られた成果を学会発表及び論文発表する。研究費の使用計画は以下のとおりである。 研究経費の内訳:消耗品費75万円(実験用動物及び飼育費;20万円、蛋白解析用試薬;10万円、抗体等細胞増殖因子の発現解析用試薬;10万円、PCR用試薬などの遺伝子関連試薬;20万円、実験器具;10万円、論文別刷り代;5万円)、旅費7万円、謝金7万円およびその他費41万円(マイクロアレイ委託費:32万円、印刷費:3万円、論文投稿料:6万円) 研究経費算出の根拠:実験用動物及び飼育費は対照群あるいは交雑系統として用いるマウスの購入費ならびに大阪府立大学動物科学研究教育センターでの1日の飼育にかかる費用(1ケージあたり50円)にケージ数(約50ケージ)、飼育期間(連鎖解析用は3~4ヶ月、必要に応じて連鎖解析用マウスを作出するための維持用は1年)を元に算出している。PCR用試薬などの遺伝子関連試薬、抗体などの酵素抗体法用試薬ならびに蛋白解析用試薬は全て市販のものを使用する。このように、消耗品費は『今後の研究の推進方策』に記載した内容を元に算出している。できる限り、研究代表者、研究分担者及び連携研究者で実験を遂行し、実験補助に要する謝金は最小限に抑える。旅費は成果発表のためで、国内における学会発表等に必要な金額を想定している。少なくとも1件は論文投稿する予定で、その他費の中に論文投稿料を、消耗品費中に論文別刷代を必要経費として含めている。また、DNAマイクロアレイの機器は設置されていないので、外部委託するためその他費の中に含めている。
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Research Products
(4 results)