2013 Fiscal Year Research-status Report
新たな白内障モデル動物の開発:水晶体破裂と眼内炎抑制に関する研究
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24500496
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岡田 利也 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00169111)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向本 雅郁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80231629)
中川 博史 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (60336807)
近藤 友宏 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (40585238)
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Keywords | FGF / 疾患モデルマウス / 水晶体上皮細胞 / 水晶体破裂白内障 / Bcar3 |
Research Abstract |
本研究はCF#1系マウスに新たに発見された遺伝性水晶体破裂マウスの特性を明らかにするとともに、眼内炎発症抑制機構に関する解析を行うことによって新しい疾患モデル動物として確立することを目的としている。本年度はCF#1系由来遺伝性水晶体破裂 (CF#1/lr) マウスに関して以下の成績を得た。 ①成熟後の水晶体におけるFGFとそのレセプター (FGFR)の局在:成熟個体におけるCF#1/lrマウスの水晶体上皮細胞のFGF1抗体ならびにFGFR1抗体に対する反応は対照として用いたddY系マウスに比べて強かったが、FGF2抗体ならびにFGFR2抗体に対する反応には明らかな差は認められなかった。②幼若期の水晶体におけるFGFとFGFRの局在:3週齢ならびに4週齢におけるCF#1/lrマウスの水晶体上皮細胞のFGF1抗体に対する反応はddY系マウスに比べて強かった。3週齢ではFGFR2抗体に対する反応も強かった。それに対して、FGF2抗体ならびにFGFR1抗体に対する反応には明らかな差は認められなかった。③水晶体破裂の候補遺伝子の探索:平成24年度に原因遺伝子の存在する領域として絞り込んだ部分に位置するBcar3遺伝子のシークエンス解析(エキソンを挟む形でゲノムを解析)によりエキソン7に一塩基の挿入変異が認められた。その一塩基挿入によって、本来存在しない終止コドンが形成されていた。 以上のように、CF#1系由来遺伝性水晶体破裂における細胞増殖因子とそのレセプター(FGFとFGFR)の局在および水晶体破裂白内障の候補遺伝子が明らかになった。今後は、発症を軽減するような修飾遺伝子の存在の有無ならびに眼内炎発症抑制機構を明らかにするための実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CF#1系由来遺伝性水晶体破裂 (CF#1/lr)マウスに関して平成24年度に得られた結果(遺伝様式、発症時期、ならびに組織学的変化の解明と原因遺伝子の染色体上での詳細な位置決定)に加えて、平成25年度はA)水晶体における細胞増殖因子とそのレセプターの局在に関する解析およびB)候補遺伝子の検出を行った。 A)の水晶体における細胞増殖因子とそのレセプターの局在に関する解析では、CF#1/lrマウスの成熟個体ならびに幼若個体に関して、FGF(発生期の水晶体形成に重要な役割を果たす一方で、過剰に発現した場合には形成異常を引き起こすことがわかっている細胞増殖因子)とそのレセプターの局在を明らかにした。TGFβ(水晶体上皮細胞に形質転換を引き起こし、白内障発生に関与することが報告されている細胞増殖因子)については現在解析中で、平成26年度も継続して実施する予定である。B)の候補遺伝子の検出では、Bcar3遺伝子(本遺伝子のノックアウトマウスにおいて水晶体破裂が引き起こされることが報告されている)に一塩基挿入変異が存在することが明らかになり、候補遺伝子として特定するに至った。このことにより、平成26年度に実施する予定の修飾遺伝子の探索方法として、交雑実験以外の方法(Bcar3の変異を近交系マウスに導入し、解析する)も考えられ、解析の選択肢が広まった。 以上のように、平成25年度に計画していた実験で一部得られなかった面もあるが、平成26年度に実施することを計画していた実験の一部は終えることができており、おおむね計画通りに進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
水晶体破裂白内障マウスでは水晶体内のcrystallin(熱ショック蛋白の一種で、水晶体の形態維持に役立っている蛋白)の変性にもかかわらず、本白内障マウスでは眼内炎を発症しないという特性を明らかにするために、平成26年度は他の熱ショック蛋白の発現や一酸化窒素合成酵素(iNOS)の局在を調べる。平成25年度に引き続き行う細胞増殖因子の解析として上皮細胞に形質転換を引き起こし、白内障発生に関与することが報告されているTGFβの水晶体における局在を解明する。加えて、①原因遺伝子のヒトにおける相同遺伝子の探索、②水晶体破裂白内障マウスにおける眼内炎抑制機構に関する解析、及び③水晶体破裂白内障の症状を緩和するような修飾遺伝子に関する解析を行う。 ①原因遺伝子の存在するマウス染色体上の領域に相当するヒト染色体の領域に存在する遺伝子を調べる。②水晶体破裂白内障マウスにおける眼内炎抑制機構に関する解析として、②―1 熱ショック蛋白(HSP27)の発現の変化の解明、②-2 NOSの局在の観察を行う。 ②―1:眼内液(前房水、硝子体)に分泌されるHSP27の発現をELISA法により調べ、白内障個体、正常個体及びリポポリサッカライド(LPS)誘発眼内炎マウスとの間で比較する。②-2:眼球におけるNOSの局在を酵素抗体法により調べ、白内障個体、正常個体及びLPS誘発眼内炎マウスとの間で比較する。③修飾遺伝子に関する解析:他の近交系マウスとの交雑実験を行い、F1、F2、ならびに戻し交配世代における発症時期ならびに発症率の変化を明らかにする。 以上のように、最終年度となる平成26年度は、これまでに得られた水晶体破裂白内障マウスの遺伝学的特性および形態学的特性に関する結果に加えて、熱ショック蛋白ならびにiNOSの発現あるいは局在、ならびに修飾遺伝子の有無を明らかにし、新たな疾患モデルマウスとして確立する。
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Research Products
(1 results)