2013 Fiscal Year Research-status Report
オステオン構造の組成観察に基づいた骨折リスク低減法
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24500503
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
藤崎 和弘 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90435678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横田 秀夫 独立行政法人理化学研究所, 画像情報処理研究チーム, チームリーダー (00261206)
東藤 正浩 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314402)
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Keywords | 生物・生体工学 / 機械材料・材料力学 / 生体材料 / 物性実験 / 医療・福祉 |
Research Abstract |
2013年度は下記4つの課題を実施した [1]骨折リスク除去処理(藤崎):骨折の起点として、皮質骨表面のマクロな傷や組織内に存在する微細穴、あるいはマイクロクラック部の応力集中を想定し、人工的に切欠きを付与した皮質骨試験片を作製した。また、高齢化などによるアパタイト過多がもたらす骨組織の脆化を改善する方法として、脱ミネラル処理による骨組織内アパタイト量の調整を行った。 [2]オステオン構造の観察(藤崎、横田):3次元内部構造顕微鏡システム(理化学研究所所有)を利用し、ハバース管、オステオサイトを含む皮質骨組織のオステオンスケール3次元構造を観察した。また、疲労破壊などに関係の深い内部亀裂の成長過程を観察するため、試験片内部の亀裂発生箇所の特定や亀裂伝播形態を観察するための観察‐評価システムを構築した。これを工業用の金属材料の観察に適用してシステムの有効性を確認した。 [3]ナノスケール構造変化の調査(藤崎、東藤):骨組織が変形するとナノスケール構造要素であるアパタイト結晶がひずみ、変形が過大となると結晶の破壊や、コラーゲン繊維の断裂が発生する。このナノスケールの破壊挙動を、X線回折法およびラマン散乱を用いて評価する方法を提案し、実際の骨試験片負荷時の挙動観察を行った。 [4]破壊試験(藤崎):牛大腿皮質骨から切り出した骨試験片を脱ミネラル処理することで、シャルピー衝撃破壊強度が向上する結果が得られた。この結果を利用し、切欠きを付加した骨試験片を脱ミネラル処理することで、切欠きにより低下した衝撃破壊強度が特定の処理条件下で改善することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度に設定した4つの研究項目に関して順調に進展し、研究者それぞれが学会等での成果公表に至っている。特に研究の最終目標達成に不可欠な研究項目である[4]破壊試験においては、脱ミネラル処理による骨組織強度の改善に成功しており、当該年度中に国内学会での成果報告が実現した。また、関連成果を2014年7月に国際会議で報告する予定である。 また、研究者間の連携や必要な設備の導入といった研究環境の整備は完了しており、次年度の実験実施に問題はない。研究の進展に関する個別の打ち合わせは行ってきたが、中間成果報告会が未実施であるため、2014年度の初期に会議を実施し、最終年度の方針確認、次期研究計画の立案を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に基づき、下記3課題に関する実験・検討を行う。 [1]破壊試験(藤崎、東藤):2013年度に引き続き骨試験片の破壊特性評価を行う。これまでに、脱ミネラル処理の有効性が示されていることから、最適な処理条件について、臨床的な可能性を踏まえて検討していく。 [2]マルチスケール力学解析(藤崎、横田):骨格構造を考慮し、各部に作用する応力分布から、欠陥存在位置とその除去効果を数値解析により確認する。解析には汎用有限要素解析ソフト、または、理化学研究所にて開発されたフリーウェアV-Struct(VCAD システム研究プログラム)を利用する。骨格構造の応力分布を考慮すると、欠陥部を直接除去するだけでなく、周囲の構造を変化させることで、欠陥部にかかる応力集中を回避できる可能性もある。このような骨構造全体についての骨折リスク軽減方法についても検討する。 [3]結果のまとめと開示(全員):本手法の有効性をまとめ、医師、医学系研究者に情報提供する。また、本結果を論文・学会等で広く公開することで、医工学のみならず、生理学、形態学的側面からの意見を集め、臨床適用のための方法論をまとめる。本研究期間内に整形外科の医師との連携を計画する。 なお、公開した成果に関しては、各所属機関を通じたプレスリリース(資料配布)やWeb サイトへの掲載を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定では、研究の最終目標である骨折リスク低減方法の立案と検証に向けて、2013年度は数多くの骨試験片の準備と実験が必要であると考えていたが、破壊強度の改善方法が比較的早い段階で提案できたため、当該年度の成果達成に必要な実験の検討項目が明確になり、薬品など高額な消耗品の使用量が軽減した。また、当該年度の各機関での実験用試験片については成形法と処理条件の統一性の観点から代表者が取りまとめて作製しており、当初予定していた消耗品の重複分がなくなった。 一方、学会などでの成果報告の際に、医療関係や生体医工学関係の研究者の指摘から、臨床応用に向けた展開として、研究計画時に想定していなかった検討事項が明らかになっており、本プロジェクトの研究者間で対策を検討し、関連する追加実験を2014年度の初期に実施することにした。 現在、本プロジェクトで提案した骨組織破壊強度向上方法は限定的かつ結果論的であり、理論的な裏付けや、臨床応用に向けた具体的な方策が明らかになっていない。そこで、2014年度実施計画に記載した処理条件の最適化に関する実験を試験片形状や部位、温度、環境を変えて実施し、臨床応用可能な基礎データを蓄積する。そのためには、早期に実験を実施すること、そして、臨床に近い学会で本成果を発表し、医学系研究者の意見を聞き、さらなる検証実験を計画することが必要になる。 以上のことから、次年度使用額分を2014年度に実施する追加実験用消耗品の購入ならびに、成果報告用旅費、研究者間打ち合わせ費用に充てる。
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Research Products
(6 results)