2013 Fiscal Year Research-status Report
PE摩耗ゼロを目指す人工股関節摺動面形状のデザインとその加工技術開発
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24500505
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
森田 真史 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20112667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三木 将仁 埼玉大学, 総合技術支援センター, 専門技術員 (90515066)
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Keywords | 人工股関節 / 摩擦試験 / 腐食試験 / Ti-13Zr-13Nb |
Research Abstract |
【1】摩擦試験機によるDLC膜耐久性およびPEの耐摩耗性の評価 骨頭球とPE臼蓋がHertz接触すると仮定して、Pin試験片下端の等価曲率半径R=4.5cm(Pmax:0.7MPa)とし、PE平板上をPBS疑似体液中で往復摩擦した。更に、溶液中にAg/AgCl参照電極を挿入し、Pin試験片間の腐食電位Ecorrを経時的に測定した。おもな結果はいかの通り。 DLC膜が剥離するとEcorrが急激に卑方向にシフトした。摩擦面の電位シフトをハイインピーダンス電圧計を用いて2分極法で測定し、電位シフトの発生を持ってDLC膜の剥離とみなし、摩擦耐久性を評価した。また、3電極によるアノード分極特性を測定した。前者において摩擦によるDLC膜への機械的ダメージは観察されず、良好な膜が維持された。また、後者では不動態破壊に影響を与えることはなく、簿材金属表面に流れる腐食電流密度は、DLC被覆により1/10程度の抑制されることが分かった。 【2】人工股関節シミュレータ試験 人工関節摺動面で発生するPE摩耗粉の問題は今なお未解決課題である。摺動面に流体潤滑膜を常時維持することでPE臼蓋と骨頭球の固体接触を避けて摩耗を防ぐ。そのためには、骨頭球の真球精度S < 0.5μm(φ28の場合)、表面粗さRa < 0.1μmに加工する必要がある。また、PE臼蓋と骨頭球の半径隙間CR < 20μmにすることで流体潤滑が可能になることを確認した。ただし、60rpm(毎秒1Hz歩行を想定)では理論式から算出された摩擦トルクに比べて試作品によるシミュレーション試験で得られた摩擦トルクはやや高値を示し、完全な流体潤滑膜が形成されているとは判断できず、一部に固体摩擦が存在していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【1】のトライボメータによる摩擦の測定と表面の電気化学試験は、試験片表面の表面粗さ、溶存酸素濃度に依存する。より生体内の環境に適合した装置の改善が望まれ、現在、改善中である。具体的には、大気圧酸素分圧濃度(150mmHg)を窒素ガスバブリング法により、30mmHgに低減して維持できるように環境を遮蔽する。 【2】は実験の性格状、測定結果をだすまでに相当の時間を要する。特にPE摩耗を直接測定するには長期間の連続運転を必要とする。最終完成年度までに答えを出せるようにする。
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Strategy for Future Research Activity |
電解研磨機(チタンブライト)は、骨頭表面の表面粗さをナノレベルで平滑化するために用いる。母材表面のDLC膜被覆処理において、被膜厚さは1μm程度であり、母材表面粗さはほぼそのまま反映される。母材表面をより平滑化しておく必要があることが分かったので、研磨方法を工夫する。たとえば、30nm以下にELID研削による鏡面仕上げを現在検討している。球面のELID研削機器を別途購入したので、その条件出し(ラバーボンド砥石を使用)を検討する。平面研削では去年30nm程度の鏡面加工精度を達成しているが、曲面には使えず、ツルーイングにに課題が残る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試験片の研磨に新たな課題が発生した。当初予定していた物品以外の購入(砥石)に時間がかかったため。 次年度中に実施を予定。
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