2013 Fiscal Year Research-status Report
水素貯蔵合金から放出される活性水素を利用した低侵襲型ピンポイント癌治療法の開発
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24500512
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
香川 明男 長崎大学, 工学研究科, 教授 (00093401)
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Keywords | 水素貯蔵合金 / パラジウム / ニッケル / 鉄 / 三次元培地 / 癌細胞 / 正常細胞 |
Research Abstract |
細胞実験に関しては、粉末状のPd-5Ni水素吸蔵合金は水素の吸蔵・放出量がバルク状のものより劣るものの近傍の癌細胞を死滅させる効果を有していることから、粉末という形状を生かし、広範囲に散布することで従来のバルク状の水素吸蔵合金より広範囲での効果を期待できることがわかった。また、生体適合性の点で問題があるニッケルの代替材料としてのPd-5Fe及びPd-5Co水素吸蔵合金はPd-5Ni水素吸蔵合金より最大水素吸蔵量が幾分小さくなるが、癌細胞の死滅効果を有することがわかった。死滅機構から示唆された過酸化水素単体の効果は癌細胞死滅効果の選択性が低いことがわかった。3次元培養したHeLaがん細胞に試料を投入した6h、12h経過後は明瞭な死滅効果はみられなかったが、24h以降において、明瞭な死滅効果がみられた。 次に、水素吸蔵合金(HAS)回転アクチュエーターの特性に関しては、L字型回転モジュールでは軸の傾きが生じることによる回転角の減少と回転角が長さに依存するという問題点があることがわかった。発条型回転モジュールでは吸蔵時の低回転角領域では回転速度が大きく、高回転角領域では回転速度が小さいことがわかった。S字型回転アクチュエータの回転速度は、水素吸蔵・脱蔵速度に対応しており、水素圧による制御の可能性が示唆された。各種回転アクチュエータの回転速度を比較すると、S字型の回転速度はL字型と比較して、吸蔵時で約80倍、脱蔵時で約12倍となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題のうち、(1)Pd-Ni合金の代替としてのPd-Fe、Co合金の癌細胞死滅効果と(2)過酸化水素の直接投与実験については当初の目標通りの結果を明らかにできたが、生体適合性については未完成の状態である。また、(3)の3D培養実験に関しては、活性水素の有意な死滅効果は認められたが、コントロール試料において生存率が時間と共に減少してしまった。今後は適切な3次元培地の選択について検討する予定である。さらに(4)水素吸蔵合金回転アクチュエータに関しては出力特性の評価まで至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までのPd-Ni合金に代わるPd-Fe及びPd-Co合金の生体適合性を調査し、最適な水素吸蔵合金の合金組成を明らかにする。また、動物実験による癌細胞死滅効果の検証を目指して生体細胞に近い構造をとる3D細胞培養において癌死滅効果を検証する。一方、低侵襲型ピンポイント癌治療ピンポイント治療器具の開発に関しては、水素吸蔵合金アクチュエーターの曲げ・回転特性とその制御法ならびに出力特性の評価を行うとともに、マイクロデバイス化を図る。以上、得られた結果から、水素吸蔵合金を水素発生源として用いた新規な低侵襲型ピンポイント癌治療ピンポイント治療法の実用化を図るための基礎技術を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に予定していた国際会議での発表の準備が予定通り進まなかったため。 当該年度では比較的安価な3D培地を形成するための試薬を使用したが、次年度はより適切な試薬の使用を検討する予定であり、その経費と成果発表の経費に充てる予定である。
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