2013 Fiscal Year Research-status Report
リン酸エステル系高分子による骨リモデリングの正常化
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24500532
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
岩崎 泰彦 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (90280990)
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Keywords | ポリリン酸エステル / タンパク質 / バイオコンジュゲーション / 骨疾患 / DDS / プロドラック |
Research Abstract |
超高齢化社会を迎えた本国では骨疾患をもつ患者数の増加が大きな問題となっている。骨疾患の治療薬のなかでタンパク質製剤はその骨誘導活性の高さと低毒性の点でその有効性が認められているが、血中半減期の短さや骨組織との親和性の低さから侵襲を伴う局所投与によってのみ優れた薬理活性が示される。そこで、タンパク質製剤の血中安定性と骨指向性を高めることで全身投与可能な骨指向性タンパク質製剤の調製を目指した。本研究では骨指向性を示すポリリン酸エステルアイオノマーを合成し、水溶性縮合剤を用いてタンパク質との複合化を行った。 塩基性有機触媒と開始剤にメタノールを用いることで2-メトキシ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(MP)を開環重合させ、PMPを合成した。得られたPMPにトリメチルアミンを作用させた後、陽イオン交換樹脂を用いてメチル基の脱保護を行った。続いて脱保護したポリマーを水に溶かし、水酸化ナトリウム水溶液により中和することでポリ(2-ヒドロキシ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン)ナトリウム塩(PHP-Na)を得た。次いでPHP-NaとEDC、イミダゾール、モデルタンパク質であるリゾチームをPHP-Na:lysozyme =1:1となるように混合し、リゾチームとポリマーの複合体形成をSDS-PAGEにより確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年,骨再生に骨形成タンパク質(BMP)ファミリーが有効に働くことが示されており,これらのタンパク質にポリリン酸エステルアイオノマーを複合化できれば,体内動態の改善に加え,骨指向性も付与できると考えられる。25度では前年度に合成したポリリン酸エステルアイオノマーとタンパク質との複合体を調製し、タンパク質の活性に及ぼすポリリン酸エステルの影響を検討することを目標に掲げた。ポリリン酸エステルアイオノマーの末端に存在するリン酸モノエステルを選択的に活性化し、モデルタンパク質のリゾチームとの複合化に成功した。また、リゾチームの活性はポリリン酸エステルアイオノマーが修飾された後も維持されることも明らかにすることができ、当初の計画通りに研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリリン酸エステルおよびポリマーとタンパク質の複合体が骨芽細胞の分化,機能に及ぼす影響を,急性ならびに長期での応答の双方から評価する。まず,急性の応答についてはマウス骨芽様細胞(MC-3T3E1細胞)を播種したウェル内に所定量の試料を添加する。その後,24時間ごとに市販のキットを用いてウェル内のDNAとアルカリフォスファターゼ(ALP)の定量を行う。この結果を基に,単位細胞あたりのALP産生量を経時的に求める。また,骨分化に関連するタンパク質(ALP, タイプ1コラーゲン,オステオポンチン, オステオカルシン)のmRNAの産生量も申請設備を用いて明らかにする。長期の細胞応答については,試料を添加した細胞を3週間程度培養し,細胞より産生されたカルシウム沈着物をアリザリンS染色法もしくは市販の定量キットを用い分光学的に計測する。本実験ではMC-3T3E1細胞を骨芽細胞に分化させる培地も利用し,試料の骨芽細胞に及ぼす影響が培養環境による変化についても明らかにする。
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Research Products
(10 results)