2013 Fiscal Year Research-status Report
低侵襲手術デバイス装着型位置・力センサと手術データ解析システムの開発
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24500544
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
加藤 大香士 名古屋市立大学, 芸術工学研究科(研究院), 准教授 (90362285)
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Keywords | 医療・福祉 / 解析・評価 / 術技の記録 / 知能機械 |
Research Abstract |
内視鏡下手術は,細い棒状の手術デバイスを体表の小さな切開創から挿入し,モニターに映し出された内視鏡画像を見ながら行われる.一般的には,早期の社会復帰が可能であり,患者に対するメリットは大きいと言われているが,特に年々増加する高齢患者に対し,血管や臓器の弱り,臓器の体内組織との癒着などに起因した合併症リスクの懸念が大きくなってきている. 内視鏡に大きく依存し,かつデバイスの自由度が大幅に制限された手術環境下では,手術ミスや出血の見落としなど,執刀医の経験・実力不足からくる手術事故だけでなく,術者とサポートスタッフとのコミュニケーション不足や連携ミスなど,手術環境のトラブルが手術事故を誘発することもある.従って,内視鏡像に加え,手術デバイスの位置・力情報や手術室内の画像音声情報などを事後解析できるシステムの開発を提唱してきた. 本年度も,前年度に引き続き,収集データを効率的に解析・提示するためのデータ収集・解析技術の開発に取り組んだ.次第に蓄積され肥大化するデータから効率的に特徴データを抽出し,効果的かつわかりやすくデータを提示できる解析・可視化システムを目指している. 最近の成果としては,デバイスの3次元的な位置・力情報の同時計測をするために,磁気式位置センサとロードセルを組込んだユビキタスセンサユニットを試作し,さらにLabViewビジュアルプログラミング環境によって,データ収集,ファイル処理,データ解析と可視化の手順を統合した,半自動化データ処理・解析プラットフォームを開発した.手術環境とは別に,整骨鍼灸院と協力して,手指の動作をリアルタイムで簡便に収集できるシステムを構築してきた.その成果が徐々に実を結び始めたところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実施計画に記した,データ収集用ハードウェア構成の最適化とコンパクト化については,おおむね順調に進んだ. ただ,手術デバイス装着用の位置・力センサユニットの開発を行うために,臨床現場では術者の手指の感覚を把握することが重要であることも次第に分かってきた.同時に,手術デバイス側にセンサ類を実装することが,薬事法上の制限から予想以上に困難であることも分かってきた.すなわち,市販デバイスへのセンサ実装によって,研究室レベルではデータ取得が可能であっても,将来的なセンサ内蔵型デバイスの製品化までが困難である. これらの知見が得られてきたことから,当初の手術デバイスへのセンサ実装だけでなく,ユーザ側が装着できるウェアラブルタイプの位置・力センシングデバイスの開発にも着手した.臨床調査研究も重点的に行ってきたため,当初の達成度がやや遅れ気味になった.ただし,当該知見は,さらなる次世代センサデバイスの開発につながる有用なものであることを付記しておく.
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Strategy for Future Research Activity |
データ収集用ハードウェアの最適化とコンパクト化については,おおむね順調に進んだ.また,新たに手術デバイス装着用の位置・力センサユニットの開発を行うためには,臨床現場では術者の手指の感覚を把握することが重要であることも分かってきた.同時に,手術デバイス側にセンサ類を実装することが,薬事法上の制限から予想以上に困難であることも分かってきた.すなわち,市販デバイスへのセンサ実装によって,研究室レベルではデータ取得と解析が可能であっても,将来的なセンサ内蔵型デバイスの製品化までが困難な現実がある.これらから,当初の手術デバイスへのセンサ実装だけでなく,ユーザ側が装着できるウェアラブルタイプの位置・力センシングデバイスの開発にも着手した.同時に,その実証実験を行うために,臨床調査研究も行っている.最終年度は,以上の状況を踏まえ,下記の研究計画を遂行する. 1) 臨床用ウェアラブルセンサユニット開発:長時間の装用が可能な,位置と力のセンシングデバイス, 2)術者のツール操作の位置・力情報を定量解析する手法の開発:蓄積されるデータ群のデータベース化手法とスマートな定量解析手法,ならびに,従来の医療情報との親和性の向上, 3)ビジュアルプログラミング手法の活用による視認性と操作性に優れるユーザインタフェースの開発:医療従事者並びに患者側へのデータ開示を想定した解析結果の効果的な可視化手法とデータ提示手法の統合デザイン. これらを,医療機関と熟練外科医の協力を仰ぎ,遂行していく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年中に,研究協力機関へ出向いてデータ収集するための出張頻度が当初予定していたよりも高くなり,平成26年の3か月分における旅費支出の増加を見込んで30万円の前倒し支払請求を行った経緯がある.しかし,平成26年になってからの出張回数が,予定していたよりも減ったため,結果として当該年度の所要額よりも,実支出額の累計額が少なくなった. 差額分は,平成25年末に前倒し支払請求を行った理由でもある,研究協力機関への旅費など,国内旅費に充てて有効に活用させていただく. また,前年度の前倒し支払請求によって使用した25万円弱により減少した結果,今年度の使用計画を変更する必要がある.具体的には,ソフトウェアの保守費用を他の研究費から支出すること,臨床研究のための出張頻度(国内旅費)を工夫して抑えることなどである.
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