2012 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴う姿勢と運動制御の不安定化メカニズムの解明
Project/Area Number |
24500566
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笠原 敏史 北海道大学, 大学院保健科学研究院, 助教 (10312422)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 理学療法学 / 運動制御 / 加齢・老化 |
Research Abstract |
本研究では、高齢者の運動戦略の多様性の低さと運動成績の不安定さに着目し、運動学的手法を用いて運動学習の各段階での運動制御を若年者と比較し、加齢による運動制御の不安定化メカニズムを明らかにすることを目的とした。 加齢による運動制御への影響を調べるために視覚誘導型足圧中心追跡運動課題の妥当性について検証した。とした。被験者は健常若年者20名及び地域に居住する健康高齢者20名であった。本運動課題の難易度は空間的な要素(振幅の大きさ)と時間的要素(運動の速さ、または、周波数)によって決定され、中等度の運動速度(0.5Hz)と比較的大きな振幅(体重の30%)での運動成績がが両群とも好成績であった。高齢群の運動適応後の運動成績は自身の足圧中心に関する情報のみ視覚的に与えられる条件で若年群より著しく低下していた。また、適応後、視覚情報を遮断しが場合(閉眼時)、両群とも運動成績は遮断前に比べ有意に低下したが、年齢差を認めなかった。適応後の運動制御において、高齢者は、適応後に視覚から得られる自身の足圧中心を処理し、運動制御に役立たせることが困難であることが示された。 今回は被験者の負担軽減のための実験時間短縮、データ収集精度向上と解析の効率化を図るために現有している3次元動作解析システムの更新を行い、被験者あたり約3時間ほどの拘束時間が約2時間に縮小された。新たなシステムに伴うデータの信頼性は高く、その有効性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画と目標は、加齢の運動制御への影響を調べるための視覚誘導型足圧中心追跡運動課題を考案し、被験者の負担軽減のための実験時間の短縮、データ収集精度向上と解析の効率化であった。 地域のシルバー人材センターと連携し、被験者数は当初予定していた人数(若年者10名、高齢者10名)より多い人数(若年者20名、高齢者20名)を確保することが出来た。しかしながら、高齢被験者の場合、実験登録時の健康状態が良好であっても、実験当日の体調がすぐれないことが起こり得る。今回の実験参加者は当日体調不良を訴えなかったが、実験当日の体調の変化に対して中止基準を設定し、同意書等に明文化し、被験者に説明する必要がある。 高齢者を対象とする実験では被験者への身体的及び精神的負担の軽減が必要である。本課題での最適な運動条件が明らかとなったことにより運動条件が1つに絞り込まれたことで運動課題数が縮小し、被験者への負担が軽減した。また、3次元動作解析システムのプログラムの更新(Cortexへアップデート)が完了したことにより、実験準備や条件変更などの操作が簡便化し、被験者の拘束時間の更なる縮小が可能となった。得られた実験データの解析は現在も進行中であるが、全体計画の中では支障なく順調に進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の基本的な運動課題と測定機器を使用し、加齢による運動制御の不安定化の要因について研究を進める。運動制御は常に中枢神経系からの促通あるいは抑制によって適切に調整され、運動を実行する。特に、加齢による誤った運動反応の抑制制御の衰退は知られているが、運動実行中の運動抑制への加齢の影響は明らかになっておらず、高齢者の運動の安定化、転倒予防にとって重要である。より中枢神経系の抑制制御の能力を評価するため、当初の運動学及び運動力学的な情報に加え、Stroopテストなどの言語性範疇の抑制障害評価を用いて前頭前野の機能を評価し、運動制御との関連を明らかにする。 引き続き、被験者数を安定して確保するために、地域のシルバー人材センターと連携して獲得する。施設内計測機器等の利用については、本年度も外部より被験者を招集して行う実験であることから、原則優先されることを施設内で確約を得ている。新たに、同一被験者に認知機能のスクリーニング検査を行うため、運動課題実験とは別に実験日を設けることを予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に、3次元動作解析の精度及び効率の向上と被験者の負担軽減のために現有するシステムのハードウェア及びソフトウェアを更新する予定であったが、ソフトウェアの一部(米国/MotionAnalsis社Coretex3への移行のための経費)を所属する研究室で賄われたため、計画を変更し3次元動作解析データとその他の計測データのネットワーク構築を行うこととした。このため、更なるネットワーク・システムの安定性向上と被験者の負担を軽減するため、平成24年度の未使用金額を主に設備備品費に充て、平成25年度の研究費を合わせて以下の目的に充てる。 設備備品費:重心位置監視用プログラムの作成(3次元動作解析ソフトとデータ収録ソフトとの情報ネットワークの構築)。ライセンスを所有している既存のソフトを基にオーダーメイドで作成する。 消耗品:3次元動作解析用身体マーカー、筋電図用電極、認知テスト用紙一式(ストループテスト)など。本研究課題に必要な消耗品の経費を見込んでいる。 人件費・謝金:健常若年者及び高齢者の被験者を各20名前後を運動課題実験と認知検査の2日間に分けて行う予定。当初予定より被験者への拘束時間が増加するため、予算の増大が必要と見込んでいる。 旅費:国際学会及び国内学会に発表予定。
|
Research Products
(4 results)