2013 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴う姿勢と運動制御の不安定化メカニズムの解明
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24500566
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笠原 敏史 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (10312422)
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Keywords | 理学療法学 / 運動制御 / 加齢・老化 |
Research Abstract |
本研究では高齢者の健康維持・転倒予防のための効果的な運動プログラムを構築するために運動戦略への加齢の影響について運動学的手法を用いて若年者と比較した. 方法は若年者と高齢者に立位時に視覚誘導型の足圧中心追跡課題(コンピュータモニターを見ながら,両方の足底の圧力が最も加わる点と目標となる点を重ね合わせる課題)を行わせ,運動の正確さ,下肢関節運動,下肢筋活動について調べた.高齢者の股関節を主に用いる立位姿勢制御が行われ,過去の研究報告と一致していた.さらに,下肢筋活動の因子分析から二関節筋であるハムストリングスが高齢者の姿勢制御に加わることが明らかとなった. 続いて,一連の運動遂行の中で高齢者の不安定性が主に出現するのかを明らかにするため,足圧中心を前方へランプ状(ゆっくりと動く)とステップ状(素早く動く)に移動させる立位運動課題を高齢者と若年者に行わせた.その結果,ステップ状の運動課題(素早く動いて,止まる課題)では反応時間,前方移動直前に後方へ移動する時間(準備期),運動を停止するのに要する時間(制動期)の変動係数に年齢差がみられ,高齢者でばらつきが大きかった.一方,運動開始後の前方へ移動している時間(推進期)に差はなかった.また,ランプ状の運動課題では全ての項目で差はなかった.これらの結果から,高齢者は素早い運動を行うとき,反応時間だけでなく,運動の準備や停止にも不安定性さが出現することを明らかにした. 今回の調査で,高齢者の姿勢制御への二関節筋(特に,ハムストリングス)の働きと素早い運動に対する反応直後の運動と運動停止に加齢の影響をうけることが明らかとなった.本研究結果を高齢者の転倒予防のため運動プログラムに反応直後の初動動作と停止動作について着目し,適切な訓練内容が必要と思われる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画と目標は,①Feedback系内の運動の推進と制動の制御への加齢の影響(特に,運動の不安定性)を調べること,②加齢における運動戦略と二関節筋の役割の変化,③学習による運動の安定性の加齢の影響であった.①と②に関してはおおむね順調に進展しているが,③についてはやや遅れていると判断する.③は運動学習の効果を調べるため,ある一定の実験期間を必要とする.しかしながら,昨年度より本研究施設の耐震工事に伴い実験室を長期間に渡って使用することができなくなり,また,施設内および施設外で代替の実験室を確保することが出来なかった.そのため,③については早急に対策を立て,実験室の確保及び被験者の日程調整を図るなど研究予定の見直しの必要がある.現在,得られた実験データの解析は進行中であり,全体的の中では支障なく順調に進捗している.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の最終年度にあたり,2つの目標を掲げる.1つ目はこれまでの研究結果より,運動制御の加齢の影響の検証実験を行う.具体的には若年者を対象として,下肢関節活動や下肢関節運動の制限,立位床面条件の変化など模擬的実験条件下において加齢の影響が再現されるかどうかを検討する.2つ目は臨床応用への可能性を検証するため,適切な介入訓練(具体的には,筋力訓練やバランス訓練など)や感覚刺激(フィードバック情報の種類や与え方など)を考案し,運動パフォーマンスの安定化とバランス能力向上への効果を検証する.高齢者の運動制御と運動の安定化について明らかにし,バランス能力の向上と転倒予防について臨床現場に提言する.研究成果の論文誌への投稿,学会での発表はもとより,研究室のホームページを通じて,研究成果をわかりやすく国民に説明し,本研究の意義を積極的に発信していく予定である.また,毎年行われる本学オープンキャンパスを通じて,地域住民や高校生に向けて本研究の研究成果を伝える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り,測定機器のバージョンアップ(EvaRT→Cortex),消耗品(筋電計専用テープ,消毒薬等),学会準備,被験者業務への謝金などに使用した.しかしながら,本研究施設の耐震工事に伴い実験室を長期間に渡って使用することができなくなり,一部の実験(運動学習への加齢の影響を調べる実験)が滞り,予定していた高齢者の被験者業務に対する謝金への支出が行われなかったことによる.また,その実験に関わる消耗品などへの支出が行われなかった. 速やかに,実験計画を修正し,早期に実験を再開する.具体的には,新年度に入り,施設内での実験室の確保と市内シルバー人材センターへの依頼を図る.運動学習の効果を調べるため,実験は一定期間行うことを予定している.様々な理由(身体的,精神的,モチベーションなど)による脱落者も考慮に入れ,高齢者だけでなく若年者も対象に多数の被験者を募ることを考えている.
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Research Products
(15 results)