2012 Fiscal Year Research-status Report
廃用性筋萎縮抑制効果の長軸部位別検証による臨床視点的プログラムの構築
Project/Area Number |
24500575
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山崎 俊明 金沢大学, 保健学系, 教授 (00220319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 廃用性筋萎縮 / 萎縮抑制 / 骨格筋 |
Research Abstract |
骨格筋には解剖学的に起始と停止部があり、全体として作用する臨床視点から、本研究では機能的作用を鑑み、骨格筋全体として効果的に機能を発揮できることが重要と考え、長軸部位(近位・中央・遠位部)による萎縮抑制効果の相違を検証する。平成24年度は廃用性筋萎縮に対するストレッチ介入による萎縮抑制効果を長軸部位別に検証した。 対象はWistar系雄ラットとし、以下3群:通常飼育する対照群、後肢懸垂によりヒラメ筋に廃用性筋萎縮を惹起させる後肢懸垂群、後肢懸垂に加え、1日1回20分の間歇的ストレッチを負荷する後肢懸垂+ストレッチ群とした。実験期間は2週間とした。右側ヒラメ筋の起始部より25%を近位、50%を中央、75%を遠位部として凍結切片を作成した。HE染色を実施し、筋線維横断面積の計測を行った。さらに、Alkaline phosphatase染色にて再生線維と血管(密度)分析を実施した。左側ヒラメ筋は筋血流量分析に使用した。筋血流量は、筋摘出の30分前にThallium-201 (201 Tl) を腹腔内投与し、Autowell Gamma Counter用の試料とした。試料を凍結後25%、50%、75%部位で切断、Autoradiographyの試料とし、201 Tl取り込みの分布をBAS-5000IP reader を用いて画像化した。 断面積の群別比較では、懸垂群・ストレッチ群で部位間に有意差を認め、遠位部>中央部>近位部の順であった。断面積の部位別の比較では、全部位において対照群>ストレッチ群>懸垂群で、ストレッチ介入による萎縮抑制効果を認めた。断面積や血管数の結果から、近位部が後肢懸垂やストレッチの影響を受けやすいこと、血流動態の結果から、介入による部位間の血流動態が変化する可能性があること、さらに血管数・断面積と血流動態の関連は小さいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度(初年度)は、研究実施計画に従い、廃用性筋萎縮に対するストレッチ介入による萎縮抑制効果を長軸部位別に検証した。臨床では筋のストレッチは関節可動域改善のために用いられることが多く、萎縮抑制効果への認識は高いとは言えない。しかし、先行研究におけるデータは萎縮抑制効果を支持するものが多く、臨床に生かす必要がある。そのためには、臨床に沿った方法でのストレッチ方法を用いた基礎研究によりその効果を示すことが重要である。そこで、筆者らは、臨床で多用されており、比較的容易で再現性のある体重量をもとにストレッチ負荷量を規定できる伸張装置を開発した。具体的には、ラットの股関節、膝関節を90°に固定し足関節のみを背屈することにより、ヒラメ筋を選択的に伸張できた。 対象はWistar系雄ラットとし、後肢懸垂は筆者らの方法に準じ、後肢懸垂装具を使用し後肢を非荷重状態とし廃用性筋萎縮を惹起した。右側のヒラメ筋は組織学・組織化学的分析に用い、採取した筋の起始部より25%を近位、50%を中央、75%を遠位部として試料を作成した。HE染色を実施し、筋線維横断面積を計測・分析した。さらに、Alkaline phosphatase染色にて再生線維と血管(密度)分析を行った。 さらに、当初計画にはなかったが、左側筋の血流量分析も実施した。筋血流量は、筆者らが先行研究にて報告した筋血流動態分析法により測定した。具体的には、ヒラメ筋摘出の30分前にThallium-201 (201 Tl) を腹腔内投与し、Autowell Gamma Counter用の試料とした。放射濃度を測定後、試料を凍結し、25%部位、50%部位、75%部位で切断し、各試料の201 Tl取り込みの分布を分析できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度(2年目)は、当初計画どおりに、温熱刺激に焦点を当て研究を進める。まず、臨床応用可能な温熱刺激方法を確立し、温熱単独介入による萎縮抑制効果を長軸部位別に検証予定である。 対象はWistar系雄ラットとし、以下3群:通常飼育する対照群、後肢懸垂によりヒラメ筋に廃用性筋萎縮を惹起させる後肢懸垂群、後肢懸垂に加え、1日1回60分の温熱を負荷する後肢懸垂+温熱負荷群とする。後肢懸垂は筆者らの方法に準じ、後肢懸垂装具を使用し後肢を非荷重状態とする。温熱負荷方法としては、まず腹腔内麻酔下で、両側下腿部に市販用カイロの使用を計画している。予備実験として筋内温度変化を計測し、筋温を41℃に温度調節する。 分析は、右側ヒラメ筋の起始部より25%を近位、50%を中央、75%を遠位部として凍結切片を作成後にHE染色を実施し、筋線維横断面積を計測する。左側ヒラメ筋は筋血流量分析に使用する。筋血流量は、ヒラメ筋摘出の30分前にThallium-201 (201 Tl) を腹腔内投与しヒラメ筋摘出後、Autowell Gamma Counter用の試料とする。試料凍結後、25%部位、50%部位、75%部位で切断し、50μm厚に薄切後、Autoradiographyの試料とし、201Tl取り込みの分布をBAS-5000IP reader を用いて画像化・分析する予定である。 平成26年度(3年目)以降は、当初計画では荷重介入や歩行による萎縮抑制効果を分析予定であった。しかし、介入手段が増え焦点があいまいとなるため、現時点では介入方法をストレッチと温熱介入に絞り詳細に分析した方が、本研究の目的達成には適切と考えている。具体的には、ストレッチと温熱の併用効果、介入時間や負荷量による相違について部位別に検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(未使用額:4,601円)が生じた理由は、試薬、特に麻酔用試薬の使用量が予定量より少なかったことが原因である。小額であり、次年度の試薬購入費に充当する。
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Research Products
(7 results)