2014 Fiscal Year Research-status Report
廃用性筋萎縮抑制効果の長軸部位別検証による臨床視点的プログラムの構築
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24500575
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
山崎 俊明 金沢大学, 保健学系, 教授 (00220319)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 廃用性筋萎縮 / 萎縮抑制 / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋には解剖学的に起始と停止部があり、全体として作用する臨床視点から、本研究では機能的作用を鑑み、骨格筋全体として効果的に機能を発揮できることが重要と考え、長軸部位(近位・中央部・遠位部)による萎縮抑制効果の相違を検証することが主目的である。初年度は廃用性筋萎縮に対するストレッチ介入による萎縮抑制効果を長軸部位別に検証した。次年度は温熱刺激に焦点を当て研究を進め、臨床応用可能な温熱刺激方法を確立し、次段階として温熱単独介入による萎縮抑制効果を長軸部位別に検証した。 平成26年度は「ストレッチ介入」と「温熱刺激」の萎縮抑制効果知見を基に、臨床的効率を考慮した併用効果に焦点を当て研究を進めた。ラットを対象とし、対照群、一週間の後肢懸垂を行う群、後肢懸垂とともに温熱負荷を与える群、後肢懸垂とともに筋伸張を行う群、後肢懸垂とともに温熱負荷と筋伸張を同時に行う群を作成した。温熱負荷は、前年度確立した市販カイロ法にて60分間、下腿深部温約38℃で毎日一回実施した。筋ストレッチは、初年度作成した伸張装置を用い体重の1/3の負荷量で足関節を背屈方向へ持続的に60分間毎日一回実施した。実験期間終了後、右ヒラメ筋を摘出し、筋の起始部より25・50・75%部位の筋線維横断面積(CSA)、酸化系酵素(SHD)活性、毛細血管数を計測した。結果、後肢懸垂により近位部優位なCSAの低下と遠位部優位なSDH活性の低下を認めた。毛細血管数は遠位部と中間部にて後肢懸垂により減少した。各介入により遠位部に対する近位部のCSAの増加と近位部に対する遠位部のSDH活性、毛細血管数の増加を認め、その効果は併用群が最も大きかった。 以上より、不活動や温熱負荷・ストレッチによるCSAやSDH活性、毛細血管数への影響は筋長軸方向で異なること、さらに温熱負荷と筋ストレッチの併用による筋長軸方向部位差の軽減効果を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度(初年度)は、研究実施計画に従い、廃用性筋萎縮に対するストレッチ介入による萎縮抑制効果を長軸部位別に検証した。筆者らは、臨床で多用されており、比較的容易で再現性のある体重量をもとにストレッチ負荷量を規定できる伸張装置を開発した。具体的には、ラットの股関節、膝関節を90°に固定し足関節のみを背屈することにより、ヒラメ筋を選択的に伸張できた。後肢懸垂は筆者らの方法に準じ、後肢懸垂装具を使用し後肢を非荷重状態とし廃用性筋萎縮を惹起した。右側のヒラメ筋は組織学・組織化学的分析に用い、採取した筋の起始部より25%を近位部、50%を中央部、75%を遠位部として試料を作成した。HE染色を実施し、筋線維横断面積を計測・分析し、ストレッチ介入による萎縮抑制効果の長軸部位差を明らかにした。 平成25年度(2年目)は、温熱刺激に焦点を当て研究を進めた。まず、臨床応用可能な温熱刺激方法を確立し、次段階として温熱単独介入による萎縮抑制効果を長軸部位別に検証した。温熱刺激方法として、市販の使い捨てカイロを使用することで、介入10分後には筋深部温約38℃、表在温約41℃に上昇し、60分間以上維持できる方法を確立した。温熱介入による萎縮抑制効果の長軸部位間差を明らかにしたが、温熱負荷による血流量増加部位と萎縮抑制効果は一致せず、萎縮抑制効果の相違は筋血流量以外の要因関与が推察された。 平成26年度(3年目)は、当初計画通りに、これまでに検証してきた「ストレッチ介入」と「温熱刺激」の萎縮抑制効果知見を基に、臨床的効率を考慮した両者の「併用効果」に焦点を当て研究を進め、不活動や温熱負荷・ストレッチによるCSAやSDH活性、毛細血管数への影響は筋長軸方向で異なること、および温熱負荷と筋ストレッチの併用による筋長軸方向部位差の軽減効果を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、最終年度である。3年間の研究結果を踏まえ、「ストレッチ介入による筋線維タイプ別反応の相違および継時的変化」に焦点を絞り、長軸部位別に検証する。また、過去3年間の研究成果をまとめ、2015年(平成27年)5月にシンガポールで、4年に1回開催の「世界理学療法連盟学術集会(WCPT)」にて発表予定(採択済み)である。 具体的には、8週齢のWistar系雄性ラットのヒラメ筋を対象とし、無処置のまま飼育する群(C群)、後肢懸垂処置にて廃用性筋萎縮を作製する群(HS群)および後肢懸垂期間中に1日5分間の間歇的ストレッチ運動を毎日実施する群(ST群)に振り分ける。さらに、C群とHS群、ST群を実験期間3・7・10・14日時点に分ける。組織化学的分析のために、筋腹中央部における凍結横断切片(10μm)を作製し、さらに、長軸部位別検討のため各群7日および14日群では筋腹中央部に加え、近位部(筋長の25%部位)および遠位部(筋長の75%部位)における凍結横断切片を作製する。HE染色およびATPase染色を実施し、顕微鏡画像をもとに筋線維タイプ別断面積(CSA)および筋壊死線維割合を分析する。結果より、筋線維タイプ別反応および継時的変化を明らかにし、廃用性筋萎縮対策としての「臨床的視点的プログラム」構築に関する基礎データを提示予定である。
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Research Products
(8 results)