2012 Fiscal Year Research-status Report
新たな呼吸リハビリテーションを展開するために必要な唾液中酸化ストレス指標の確立
Project/Area Number |
24500584
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関川 清一 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 准教授 (30363055)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 呼吸リハビリテーション / 酸化ストレス / 唾液 |
Research Abstract |
本年度は、健常男性(29.8±4.4歳、身長174.4±3.2cm、体重74.4±8.4kg)を対象に上気道局所における抗酸化力をはじめとした酸化ストレスについて、安静時日内変動を解明することを目的とし、次のとおり実施した。唾液は、唾液採取専用ディスポーザブルチューブを用いて、分泌される唾液を綿に吸収させ採取した。血液は、採血用穿刺器具を使用して指尖の毛細血管からミクロキュベットを使用し採取した。唾液中および血漿中の抗酸化力および血漿中の過酸化水素濃度の測定は、フリーラジカル専用吸光度計を用いて解析した。対象者は事前に、唾液検査キットによる潜血テストを実施し、口腔内の潜血反応が陰性であることを確認した。すべての対象者に対し8:30(朝)、12:30(昼)、18:30(夕)に唾液採取と血液採取を行った。なお、測定目前日からは通常通りの生活を送ってもらい、検体採取の2時間前からは飲食および歯磨きを禁止した。 唾液中および血漿中の抗酸化力、血漿中の過酸化水素濃度の時間経過の比較は、一元配置分散分析を用いて検討した。その結果、時間経過による唾液中および血漿中の抗酸化力は、変化を認めなかった(唾液p=0.26、血漿p=0.95)。また時間経過による過酸化水素濃度は、変化を認めなかった(p=0.88)。さらに測定時間毎の唾液中のBAP値と血漿中のBAPとの関連を検討し、各時間において有意な相関を認めなかった(朝p=0.54、昼p=0.39、夕p=0.97)。 以上のことから、健常成人において酸化ストレスを誘発するイベントがない場合、唾液中の抗酸化能および血漿中過酸化水素濃度は変動しないことが明らかとなり、唾液中および血漿中のBAPは関連が低いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
健常者を対象に、過酸化水素や抗酸化力をはじめとした酸化ストレスについて上気道や肺の局所的指標を分析するとともに、安静時日内変動や一過性運動等の変動因子の影響を解明することが、本年度の研究目的であった。本年度は、上気道局所及び血漿中の安静時抗酸化能の変動を分析し、安静時の日内変動を明らかにできた。、さらに、安静時の唾液中と血漿中の抗酸化力の分析を行い、関連性について明らかとなり、当初の計画を達成した。 しかし、上気道局所の酸化ストレスの安静以外の一過性運動等の変動因子の解析は、途中であり、解明に至っていない。さらには、唾液検体の抗酸化能以外の他の酸化ストレスの関連指標の検出し、肺の酸化ストレスとの関連について解析途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
健常者における上気道局所の酸化ストレスの安静以外の一過性運動等の変動因子の解明、さらには、唾液検体の抗酸化能以外の他の酸化ストレスの関連指標の検出し、肺の酸化ストレスとの関連について解明する。酸化ストレスは、喫煙の影響が報告されており、喫煙と禁煙の評価が必要である。そのため、呼気中の一酸化濃度を計測し、喫煙の有無が唾液中酸化ストレスマーカーに与える影響を検証する。唾液の抗酸化力は、歯周病患者の影響をも受ける。そのために研究対象者の唾液中の潜血反応を検出し、歯周疾患のスクリーニングを行う。 次に、対象となる慢性呼吸器疾患患者のリストアップをする。慢性呼吸器疾患患者の選定は、連携研究者とともに、医療機関医師ならびに理学療法士と連携作業により実施する。研究代表者は、選定対象者の臨床医学的所見の収集、健康関連調査を実施する。その後、安静時の唾液中抗酸化能解析を行い、疾患特性を解明する。さらに慢性呼吸器疾患患者における日常の身体機能が、酸化ストレス指標に影響する可能性があるため、運動耐容能のみならず日常活動性を解析し、身体活動水準と抗酸化能との関係を明らかにする。その後順次、呼吸リハビリテーションを行い、健常者を対象にした基礎的研究の成果を基盤として、局所酸化ストレス指標をもとにした呼吸リハビリテーションの効果検証を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
唾液検体のバイオマーカーの分析用キットおよび酸化ストレス分析用試薬を購入し、検体解析を進める。喫煙の有無の影響を検証するために、呼気中の一酸化濃度計測機器を新たに購入する。また、慢性呼吸器疾患患者の身体活動水準と酸化ストレスとの関連要因を検証するために、身体活動量計を購入する。次年度は研究資料収集のみならず、研究成果を発表を行うための旅費、さらには研究成果公表のための学術論文校閲をすすめる。
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