2013 Fiscal Year Research-status Report
新たな呼吸リハビリテーションを展開するために必要な唾液中酸化ストレス指標の確立
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24500584
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
関川 清一 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 准教授 (30363055)
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Keywords | 呼吸リハビリテーション / 唾液中酸化ストレス |
Research Abstract |
本年度は、健常男性(年齢 21.2±1.0歳・身長 175.2±9.5cm・体重 70.3±11.6kg)を対象に血中における抗酸化力をはじめとした酸化ストレスの一過性運動の影響を解明することを目的とし、次のとおり実施した。60%最大酸素摂取量の運動負荷量にて30分間の定量運動を実施した。血液の採取は、運動開始前、運動直後の2回行った。血漿中の過酸化水素濃度(d-ROMs)および抗酸化力(BAP)の測定は、フリーラジカル専用吸光度計を用いて解析した。酸化ストレスBAP/d-ROMs値は、運動前9.0 ±1.2μmol/l/ U.CARRに対し、運動後8.7±1.3μmol/l/ U.CARRであり、有意差は認めなかった。このことから、中強度での30分の定量運動負荷は、活性酸素の増加に対して抗酸化物質による防御機構が働き、増加を抑制していることが明らかとなった。 さらに本年度は、生体防御機能向上を目的としたリハビリテーションプログラムを構築するための基礎的資料を収集することを目的に、急性増悪等にて入院し,呼吸リハビリテーションが処方された慢性呼吸器疾患患者(年齢74.4±7.4歳・身長:74.4±7.4cm・体重:40.5±5.5kg)を対象とし、上気道局所酸化ストレスに与える影響を検討した。唾液採取は、唾液採取チューブを用いて付属の綿を噛むことで行い、呼吸リハビリテーション実施前と実施後の2回のタイミングで実施した。その結果、呼吸リハビリテーション実施前のBAPは4313.6±1518.7μmol/L,実施後は3857.2±1666.6μmol/Lであり、有意な変化を認めなかった。今後は、唾液動態メカニズムの更なる解明や長期的な呼吸リハビリテーションの影響を検討していくことが必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は、健常男性を対象に血中における抗酸化力をはじめとした酸化ストレス動態について、一過性運動の影響を明らかにし、当初の研究計画を達成した。しかし、解析データの再検証をすすめているため、研究成果公表までにいたっておらず当初の進捗状況から遅れている。酸化ストレスは、喫煙の影響が報告されているため、呼気中の一酸化炭素濃度を計測し、喫煙の有無が唾液中酸化ストレスマーカーに与える影響を検証する必要があるが、解明するに至っていない。また、研究協力医療機関との連携のもと、慢性呼吸器疾患患者に唾液採取による酸化ストレス分析、呼吸リハビリテーションによる酸化ストレスの応答と特徴所見を検討した。これは当初の研究の目的および研究計画の進行を達成することができた。しかし、対象者の選定が遅れており、本年度の当初の目標患者数の解析にはいたっておらず、唾液中酸化ストレスマーカーの再現性の解明、呼吸リハビリテーションが唾液中酸化ストレスに与える影響について解析途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者は、慢性呼吸器疾患患者の臨床医学的所見の収集、健康関連調査を実施する。その後、安静時の唾液中抗酸化能解析を行い、疾患特性を解明する。唾液中抗酸化能解析の解析のみならず、マーカーの臨床意義を明らかにするために、運動耐容能、身体活動性、末梢筋力、咳嗽力といった従来の呼吸リハビリテーション効果指標である身体諸機能との関連を追加して検証する。今後の研究を遂行する上での課題は、対象患者の選定と参加同意である。慢性呼吸器疾患患者の選定と対象患者に対しての研究参加同意取得は、医療機関医師ならびに理学療法士と連携作業により実施することで対応し、連携を強化する。さらに、喫煙の有無が唾液中抗酸化力に影響すると仮定し、影響検証を実施するために、呼気中の一酸化炭素と唾液中抗酸化力の関係について追加して検証する。本研究を遂行するために、研究代表者が、連携研究者とともに研究体制を構築する。次年度の中間までにはデータの収集および分析を終了し、健常者を対象にした基礎的研究の成果を基盤として、局所酸化ストレス指標をもとにした呼吸リハビリテーションの効果を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画より唾液中酸化ストレス分析、また呼気中の一酸化濃度計測による分析が遅れているため。さらにこれに伴い成果報告も遅れているため。 酸化ストレス分析用試薬を購入し、検体解析を進める。喫煙の有無の影響を検証するために、呼気中の一酸化炭素濃度計測機器を購入する。
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