2015 Fiscal Year Research-status Report
吃音児者の個別の支援計画の作成と指導及び支援法の構築・展開
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24500588
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
見上 昌睦 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30279591)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吃音児 / 指導 / 支援 / 通級による指導 / 語想起 / ストレス / コーピング / きょうだい |
Outline of Annual Research Achievements |
吃音児の実態やニーズに即した指導及び支援法について検討するために、事例研究と調査研究を行った。 1.事例研究 【対象児】発話時に不自然な間を呈する吃音学童:初診時に10歳5ヵ月の女児。吃音重症度評定尺度による重症度3、発話意図がありながら不自然な間を呈することが多かった(語想起に問題)。WISC-ⅢによるFIQは79。言語障害通級指導教室で指導。【指導方法】(1)柔らかな起声・声でゆっくりと母音部をひき伸ばし気味に発話(音読を含む)。(2)不自然な間への対応(聴覚的把持力向上のための指導、他者感情の理解、対応策の検討など)、(3)カウンセリング的対応、(4)児童中心遊戯療法、(5)親面接(環境調整)。【経過】指導開始後、自身の応答時に長い間があることに気づいた。吃音重症度2に軽快、不自然な間の頻度と持続時間は減少した。行動・心理面は好転した。【考察】吃音とともに、発話時の不自然な間へのアプローチの効果が示唆された。 2.調査研究 (1)吃音に起因するストレスへのコーピングについて調査し、吃音重症度や吃音の自意識、指導方法との関係について検討した。小学校4~6年の吃音児46名とその指導担当者に調査を行った。吃音起因のストレスコーピングの項目別の得点と、自己評定による吃音重症度、吃音の自意識間には相関のみられたものがあった。対象児の吃音の捉え方や自意識に応じて、選択するコーピング方略が異なることがうかがえた。「行動的回避」で男児、「気分転換」で女児のほうが有意に高い項目があり、性別によって使用するコーピング方略が異なることがうかがえた。 (2)吃音児のきょうだいの意識について質問紙調査を通して試行的に検討した。同胞の吃音への意識等について8人から回答を得た。同胞に吃音があることを生かしていこうという回答(「人の話を熱心に聞くようにしたい」「障害のある人の力になりたい」)もみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吃音児の実態やニーズに即した指導及び支援について検討し、個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成に生かすために、事例研究と調査研究を推進している。 事例研究については、主に吃音の進展した子どもを対象に、合併症(構音障害、知的障害、読みや語想起の問題など)のある子どもも含めて指導及び支援を継続中であり、一部を論文、学会発表(国際学会を含む)、図書(共著)において発表している。 調査研究については、吃音者のセルフヘルプグループや言語障害通級指導教室等との連携による吃音児支援のあり方、吃音者の吃音の公表(公表に伴う心理的変化や聞き手に求める態度等)、吃音児の吃音に起因するストレスへのコーピング、吃音児のきょうだいの意識などについて質問紙調査を実施し検討を進め、一部を学会発表している。さらに、大学の教員養成課程における吃音に関するカリキュラムについても質問紙調査を通して検討を進め、一部を学会発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
事例研究については、福岡教育大学教育総合研究所附属特別支援教育センターを中心に、吃音児(合併症のある子どもを含む)の臨床指導を継続して推進する。指導前後のコミュニケーション態度の変容等についても検討する。成果の一部を学会発表、論文及び図書(共著)に整理する。 国際学会における発表も予定しており、情報収集や研究上の示唆も得ながら継続して推進する。 吃音児者に対する直接的言語指導に焦点を当てた指導方法に関する国内外の研究の整理も行う。さらに、地域の言語障害通級指導教室との吃音児支援に関する連携のあり方についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
本年度、成果発表(情報収集を含む)として第8回国際流暢性障害学会に参加したが、当初の計画よりも旅費がかからなかった。さらに、物品費等の支出が少なく、人件費・謝金を使用しなかった結果、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用計画としては、「物品費」として、データ保存用ディスク、発達・心理検査用紙・教具、パソコン関係備品・ソフトウェアなどを考えている。「旅費」として、成果発表(情報収集を含む)については、国内学会に加え、国際音声言語医学会への参加を考えている。「謝金」として、資料整理を考えている。学会参加費、翻訳料、論文別刷料、通信運搬費、複写費などを考えている。
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Research Products
(7 results)