2013 Fiscal Year Research-status Report
走行・バランス運動による老化中枢神経活性化プロセスの解明
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24500598
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
金村 尚彦 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (20379895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高柳 清美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (20274061)
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Keywords | 老化 / 運動 / 神経活性化 |
Research Abstract |
神経の生存や維持には,神経栄養因子が必要となるが老年期に至るとこれらの因子の生産能力が低下する。本年度の研究では,ラット腰髄における神経栄養因子とその受容体に対し,バランス運動介入の影響を検討することを目的とした。 Wistar系雄性ラット老齢群2年齢12匹,成体群10週齢10匹)を対象とし,バランス運動群と非運動群はランダムに分けた(老齢運動群6,老齢非運動群6匹, 成体運動群5匹,成体非運動群5匹)。運動群は,外乱刺激装置上で1日1時間,4週間運動を負荷した。すべてのラットにおいて,餌や給水は自由に摂取させた。実験終了後,脊髄(L3-5)を摘出し, total RNAを抽出した。逆転写反応により作成したcDNAを鋳型とし,リアルタイムPCR法(比較Ct法)にて発現量を検討した。ターゲット遺伝子はNGF-TrkA, BDNF-TrkB, NT3-TrkC, GDNF-RET, GFRα1,GFRα2の10遺伝子と内部標準遺伝子は,beta actinを用いた。NT3,GDNF TrkA,TrkC,RET mRNAの発現量は変化がなかったが,その他のターゲット遺伝子については,週齢により,その他の神経栄養因子と受容体については,運動を行う事により発現量が変化していた。週齢により,その他の神経栄養因子と受容体については,運動を行う事により発現量が変化していた。バランス運動により,選択的に神経栄養因子受容体mRNA発現がアップレギュレートされる結果となった。また走行運動時と同様に,老齢期と成体期では,運動により受容体mRNAの発現様式に違いがみられた。神経栄養因子が運動によって脊髄神経自体での発現が増加したことや,末梢器官で発現したその因子が脊髄内の血管や神経の逆行性輸送によって脊髄へ到達し,脊髄内のmRNA発現量が上昇したため脊髄神経が活性化されている事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は,老齢ラットに対し,トレッドミル走行を実施し,腰髄における神経栄養因子の発現量を比較する研究を行ったが,本年度は,バランス運動介入による腰髄における神経栄養因子の発現量を比較する研究を行った。 1.成体から老齢にいたる過程での脊髄に存在する神経栄養因子とその受容体の発現が異なるのかその移行プロセスを明らかにする。 2.バランス運動介入により,脊髄における神経栄養因子とその受容体の発現がアクティベーションされるかどうかを明らかにする。 本年度は,バランス運動介入の効果について老齢ラット,成体ラットについてリアルタイムPCR法にて生化学分析と組織学的検証(免疫組織化学染色法)を目標としていたが,組織学的検証について,当初予定よりやや遅れている状況である.一次抗体を用いた染色結果の定量化を行うが,より客観的な分析を加える予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果を踏まえ,成体から老齢にいたる過程での脊髄神経における神経生存関連因子,アポトーシス関連因子との関係性を明らかにする。 それぞれの運動介入の方法の違いによる神経活性化機構について探索する。 運動介入により活性化された上記の伝達系がどのように関連し,神経の活性化プロセスに関与しているのかについて検討する。また蛋白産生量について生化学分析を行う。脊髄における発現の局在性について組織学的に検討し,最終報告とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では,平成25年度に行う予定であったバランス運動介入後の脊髄神経における生化学分析と組織学的分析を行う予定であった。生化学分析は計画どおりに進んでいるが,平成25年度に予定していた組織学分析を平成26年度の研究予定に加えて分析を行う。免疫組織化学染色を行う方法は確立しているが,染色結果についてどのように評価を加えるか検討しており,研究分担者,連携協力者とも詳細な打ち合わせを行っていたために,研究計画がやや遅れる状況となった。予定していた免疫組織化学染色法に対する試薬について購入を次年度に繰り越して行うこととした。 平成25年度に使用を予定していた研究費については,全額免疫組織化学染色について神経生存に関する一次抗体を購入し,組織学的探索を行う予定である。内訳は,神経生存に関する抗体を予定している。
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