2012 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中片麻痺上肢の治療的電子楽器演奏法によるリハビリテーション
Project/Area Number |
24500610
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
笠井 史人 昭和大学, 医学部, 准教授 (50266095)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | なし |
Research Abstract |
本研究の目的は、電子楽器を使用して、脳卒中片麻痺上肢の治療的楽器演奏訓練法を行うことにより、麻痺上肢の機能改善を促すことである。まず初年度は、効果の証明と、その最も効率のよいプログラムを作成することにあった。そのため使用する楽器の適正を検討することから始めた。YAMAHA 製電子ギターEZ-AGに関しては先行研究にて、その効果と適正については確かめられている。 組み合わせる打楽器を、当初の実施計画ではRoland 製電子ドラムRMP-5としていた。しかし本製品はスティックを使用して演奏するものであり、麻痺した手で把持することが困難であり、対象者を限定してしまうことが判明した。そこでHand Percussion Pad [HPD-10]、Korg社製 Wavedrumminiを候補として挙げ、比較研修をパイロットスタディとして対象者宅に貸出し使い勝手を調査することで行った。HPD-10は高性能であるが高価であり、患者には扱いづらい傾向にあった。Wavedrumminiは軽量・安価で扱いやすく自宅で患者が使用するのに適正であると判断した。打楽器は麻痺側のみで演奏するよりも下肢を組み合わせることにより、多彩な訓練効果を生むことが予測された。また、患者への楽器指導を研究代表者が行うこととしていたが、評価を同時に行うためには音楽療法士の協力が必要であることも分かった。 本年度の研究実施計画である、上肢機能回復が停止した脳卒中片麻痺患者に対する治療的電子楽器演奏法の効果を見るための、10症例の患者宅に貸し出す研究は上記のパイロットスタディにより若干遅延した。しかし、電子楽器の適正な選択について実際の患者の意見を基に根拠Lをもって結果を出すことができ、効果的なプログラムの構築に大きなヒントが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、電子楽器を使用して、脳卒中片麻痺上肢の治療的楽器演奏訓練法を行うことにより、麻痺上肢の機能改善を促すことである。その戦略として1.楽器演奏による脳卒中片麻痺上肢機能改善訓練の効果。2.効率よい訓練プログラム。3.使用する楽器の適正。4.大脳半球の障害側による効果の左右差。5.集団音楽活動による社会性獲得の促進。の5段階からなる。 本年度は、上肢機能回復が停止した脳卒中片麻痺患者に対する治療的電子楽器演奏法の効果を見るため、10症例の患者宅に楽器を貸し出してデータを取る予定であったが、楽器の適性を決めることが、対象者の選定に影響するため、研究3.の項目を最初にもってきた。そのため、上記のパイロットスタディにより全体の進行は若干遅延した。しかし、電子楽器の適正な選択について実際の患者の意見を基に根拠Lをもって結果を出すことができ、効果的なプログラムの構築に大きなヒントが得られた。これは研究2.の一部をもなしており、集団音楽活動による社会性獲得の促進にもつながるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
上肢機能回復が停止した脳卒中片麻痺患者に対する治療的電子楽器演奏法の効果を調べるために、機能回復が停止していることの確認できた脳卒中片麻痺患者10症例に、YAMAHA 製電子ギターEZ-AG・Korg製 Wavedrumminiを自宅に貸出しし、音楽療法士と共同で検討した患者の好きな曲(リズムは同一に揃える)を麻痺側上肢で一日30 分毎日、8週間、演奏訓練を行い、麻痺側上肢の機能測定を行う。訓練終了後8週間のフォローを行う。 次に回復期の脳卒中片麻痺患者における治療的電子楽器演奏法の上肢機能改善に及ぼす影響を測るため、回復期病棟の入院患者計20症例に電子楽器演奏訓練を行う。週5回、電子ギターと電子ドラムを計20分を行い、対照群20症例と比較する。この研究では音楽療法による機能改善の差を期待するだけではなく、比較的発症早期の患者への介入が心理面に及ぼす影響について探る。 最終的には、楽器の組み合わせ・方法などの理想的プログラムを確定し、集団音楽活動を促し、発表の機会を与え、音楽療法が患者に社会性の獲得までももたらすかも検討する。またそのことについて学会報告・論文投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Wavedrumminiを10台購入し、その維持費、患者への送料、音楽療法士への報酬(音楽療法士には患者への音楽楽曲の選択、演奏指導をお願いする)を900000円で賄う予定である。
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