2013 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中片麻痺上肢の治療的電子楽器演奏法によるリハビリテーション
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24500610
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
笠井 史人 昭和大学, 医学部, 准教授 (50266095)
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Keywords | 片麻痺上肢機能改善 / 音楽療法 / 電子楽器演奏 / 精神健康 / 自尊感情 |
Research Abstract |
初年度に楽器の適正を検討し、YAMAHA 製電子ギターEZ-AGとKorg社製 Wavedrumminiの使用が適正であると判断できた。また、患者への楽器指導を音楽療法士の協力のもとに行うべきであることが確認でき、プロの音楽療法士の介入を決定した。 本年はこれらの楽器を12例の脳卒中片麻痺患者宅に貸出し、週一回外来で音楽療法士とともに楽器演奏指導を行い、計6週間、麻痺側上肢で自宅演奏訓練をしてもらった。外来では他患者との合奏や、弾き語り発表の機会を設けた。その結果、運動機能はFugl-Meyer Assessment上肢運動機能項目で、実施前平均36.17から実施後41.67まで改善した(p<0.01)。対象者に複数の楽器を組み合わせ、楽曲をマスターする達成感を加味し、自宅訓練の高いモチベーションを引き出せたと考える。 また、心理的な効果評価としてGoldbergの精神健康調査を行い、実施前平均14.4から実施後9.0まで改善を確認した(p<0.05)。とRosennbergの自尊感情尺度も測定したが、実施前平均31.8から実施後32.3(有意差なし)と変化が無かった。音楽療法は、心理的な効果をもたらすが、本法のような楽器演奏などの能動的課題は、対象によってはかえって自信喪失につながる懸念がある。実際、自尊感情尺度の低下するケースもみられたが、それらのケース全てにおいて精神健康はむしろ改善しており、自己の障害に直面しても音楽による心理的効果は損なわれないことが窺われた。 今年度の研究で、麻痺側上肢による楽器演奏リハビリテーションは麻痺の改善に加え、精神健康に好影響を及ぼすことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、電子楽器を使用して、脳卒中片麻痺上肢の治療的楽器演奏訓練法を行うことにより、麻痺上肢の機能改善を促すことである。その戦略として1.楽器演奏による脳卒中片麻痺上肢機能改善訓練の効果。2.効率よい訓練プログラム。3.使用する楽器の適正。4.大脳半球の障害側による効果の左右差。5.集団音楽活動による社会性獲得の促進。の5段階からなる。 昨年度に3.使用する楽器の適正の検討を終えており、本年度は1.楽器演奏による脳卒中片麻痺上肢機能改善訓練の効果を統計学的にも示すことができた。さらに2.効率よい訓練プログラム、4.大脳半球の障害側による効果の左右差、についても検討し調べたが、結果には影響が現れなかった。5.集団音楽活動による社会性獲得の促進については、楽器演奏による精神心理的機能の改善から大きく期待でき、こちらを次年度のメインの検討課題とすることにした。 5段階のうち4段階の検討が済み、順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は、回復期リハビリテーション病棟に入院している患者への効果を検討するプログラムも用意していたが、数症例のパイロットスタディにて不適切を考えさせる意見が得られた。発症間もない時期では社会復帰への焦りがあり、電子楽器を演奏するには安定した心理状態に達していないのではないかという点である。本来、当研究の本邦における最大のメリットと言える、楽しみながら自主的に多くの訓練量を稼げる点は在宅患者に大きなアドバンテージを生むため、セラピストからの手厚い訓練の提供を期待できる入院患者にあえて行う必要性が薄いと考えられた。 そこで、最終年度は、集団音楽活動による社会性獲得の促進についてを検討することとし、在宅患者で形成されるバンド形式のグループ演奏を計画し、患者の目標にコンサートでの演奏を課してモチベーションを上げつつ、メンバー相互の助け合い・結びつきを重視した社会参加的効果を検討することにした。集団音楽活動を促し、発表の機会を与え、音楽療法が患者に社会性の獲得までももたらすかについて結論づけ、そのことについて学会報告・論文投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、使用機材としての楽器はまとめて初年度に購入予定であったが、適正楽器の検討を初年度に行ったため、購入を遅らせ、研究の振興に合わせ必要物品をそろえているため。また最終年度はグループ音楽活動としての機材の費用が必要であるとともに、音楽療法士への謝金が必要であるため、研究費の使用額の年度別割合に変更が生じたため。 患者によるグループ音楽活動のための楽器機材の購入、使用する楽曲の編集および録音に必要となる機材とパソコンソフト、楽曲録音・編集、データ集計・論文作成に必要なPCの購入、音楽療法士への謝金。
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