2014 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸困難の情動面にアプローチする呼吸リハビリテーションの開発に向けた生理学的検討
Project/Area Number |
24500611
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
泉崎 雅彦 昭和大学, 医学部, 教授 (20398697)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 呼吸困難感 / 情動 / 脳内活動 / 脳波双極子追跡法 / 二酸化炭素 |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸困難に関与する脳内部位の同定が様々な脳機能解析法により研究されてきた。例えば機能的磁気共鳴画像における活動部位同定の結果は空間分解能に優れるが、一方で時間分解能が劣る。本研究では呼吸困難感を意図的に誘発し時間分解能に優れた脳波双極子追跡法(EEG /DT法)を用いて呼吸困難感に伴う情動変化の脳内活動を捉えた。対象は健常成人男性である。脳波は国際10-20法により測定し、被験者はフェイスマスクを着用し、呼吸数、1回換気量、分時換気量、呼気終末炭酸ガス濃度を測定し、呼吸流量と脳波と同時記録した。5% CO2 + 95% O2の混合ガスを含むバックによるCO2再呼吸法を行なった。呼吸困難感はボルグスケールで評価した。再呼吸によって呼気終末CO2濃度(安静時5.9%、再呼吸7.6%)、1回換気量(安静時670 mL、再呼吸1217 mL)、分時換気量(安静時9.2 L、再呼吸21.3 L)、呼吸困難感が有意に増加した。CO2再呼吸時の吸息に一致させて脳波を総加算し、吸息に伴う脳電位を検出し双極子追跡法にて電源を推定した。加算脳波では吸息開始後100 msで陰性波、250 msで陽性波を認め、吸息に伴う苦しさに関連した呼吸関連電位が検出された。EEG/DT法によりこの電位の電源は吸息後100 ms内で、左眼窩前頭葉、左上前頭回に、100 ms から200 msで左帯状回前部、300 ms内に左の島と扁桃体に活動が収束した。眼窩前頭葉は情動の評価に関わる部位であり、前頭回、帯状回前部は運動の企画、決定に関与している。吸息開始後200 ms内でのこれらの部位の活動は、負の情動の評価、また息苦しさに伴う次の呼吸への期待、随意呼吸が関与していると考えられる。島は情動に関与した辺縁系との連絡が密であり、同時に負の情動に関与した扁桃体の活動も認められた。本結果から息苦しさの情動では次の吸息への期待、随意呼吸に関与する部位と不快情動が同時に関与していることが示された。
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