2012 Fiscal Year Research-status Report
補助人工心臓装着患者のQOLを改善する心臓リハビリプログラムの作成と予後評価
Project/Area Number |
24500615
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
上野 敦子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (30277199)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨澤 康子 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00159047)
上塚 芳郎 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (40147418)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | リハビリテーション / 植え込み型補助人工心臓 / 有酸素運動 / 入院期間 / 早期離床 |
Research Abstract |
2012年度は、介入研究の前の現在の植え込み型補助人工心臓装着患者のリハビリテーション状況をまとめた。ADLの拡大には病棟管理も重要な要素と考え患者の入院期間と病棟歩行・筋力および運動耐容能を検討した。入院中病棟での活動制限が無い時期とし、測定項目は下肢筋力と病棟歩行を万歩計にて計測するとともに、退院前の運動耐容能を心肺運動負荷試験で評価し入院期間で比較し『植え込み型補助人工心臓(EVAHEART)患者の病棟プログラムの必要性の検討』として、また、植え込型補助人工心臓装着患者の有酸素運動における強度設定を、実際に行った有酸素運動と運動負荷試験から求めた至適運動強度とを比較検討した『植込み型補助人工心臓装着患者の有酸素運動における至適強度設定についての検討』として第18回日本心臓リハビリテーション学会で発表した。また、運動耐容能と心拍応答が相関し、心拍応答が不良であると運動耐容能も不良であることを同学会で報告した。さらに左室駆出率35%以下の重症心機能低下例での運動耐容能や心拍応答を検討した結果を、第19回心臓リハビリテーション学会で報告予定である。 補助人工心臓装着患者は、補助人工心臓のポンプ回転数に応じて拍出量が維持できているが、座位や立位、歩行という基本動作を行うにあたり、デコンディショニングや慢性心不全状態の持続による骨格筋萎縮が関わると考えられる末梢血管収縮・末梢冷感、易疲労がみられる。この状態を把握することが、早期離床を安全に行うことが可能となることが考えられた。そこで、心拍出量を非侵襲的に測定できる機器のデモ機を健常者で使用し、基本動作や有酸素運動での変化を確認した。実際に介入時に利用できるように現在計画中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
植込み型補助人工心臓装着患者のQOLを評価するにあたり、現在のリハビリテーション施行状況を把握し、ある程度標準化した介入方法設定を決めていく必要がある。ある程度ADLが拡大できてからのリハビリテーション介入については、有酸素運動の強度を含め2012年度の研究から評価できてきている。しかしながら、そこに至るまでの離床から室内歩行レベルのADLを獲得するまでのリハビリテーションを安全かつ有効に介入するかの評価について、評価方法の検討が必要であった。人工心臓のポンプ回転数により拍出量は決定され、患者個々の状態に合わせてポンプ回転数は変更され、拍出量は維持されている。しかし、実際に離床を進めるにあたり、易疲労感が強くADL拡大が困難な症例がある。状態を悪化させることなくリハビリテーション介入を行うために、この状態を評価することが必要と考えられた。臥位から座位・立位などの体位の違いや歩行・筋力訓練・有酸素運動など動きのある状態下での評価が必要なうえ、非侵襲的な測定法が望ましい。その測定を行うための機器の選別に時間を要した。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立できていなかったベッド上臥位の状態から座位、離床まで、さらに立位から歩行までのリハビリ介入方法を決めていく。リハビリ介入を安全に行うために、植え込み型補助人工心臓装着術後早期、血行動態安定まで挿入されているスワンガンツカテーテルにて測定可能な心拍出量や肺動脈圧、右心系圧などから血行動態を評価し、その後の血行動態やバイタルサイン、自覚症状を評価していく。このための評価表を作成する。立位が可能となった時点で、低強度の筋力訓練が可能かを確認し、開始する。筋力訓練についても、安静度拡大に伴いプログラム内容を変更していく必要があり、各症例において可能であった訓練強度を記録し、状態に応じた筋力訓練プログラム作成につなげる。 植え込み型補助人工心臓は左心室補助であり、右心不全のコントロールに難渋する症例が多い。また、拍出量を多くしていくと左室内腔が縮小し脱血カニューレとの間に血栓形成をきたす危険性が増してくる。そのため、ADLを拡大するとともに補助人工心臓のポンプ回転数を必ずしも変更するわけではない。安静で保たれていた血行動態も体位・動作によって崩れ心不全増悪や低心拍出をきたす可能性がある。そこで、血漿BNP測定や腎機能、肝機能などの血液データの確認や骨格筋の状態を確認するためミオスタチンなどの測定を行う。また、ポンプ回転数と中隔―カニューレ間距離との関係と、リハビリ進行度との評価を行う。 術後早期の上記の評価を表に示し、プログラム化していく。 これらのデータ保存、解析のために昨年度購入したPower lab 8CHを利用する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
植込み型補助人工心臓装着術後の血行動態評価を目的に、OSYPKA MEDICAL社の非観血的心拍出量モニター『エスクロンミニ』を購入する。これは、大動脈を流れる赤血球の配向変化を体表に装着した電極により導電性の変化としてとらえ、一回拍出量を測定する原理である。この装置を用い、ベッド上から離床、歩行、自転車エルゴメータなどの有酸素運動時の心拍出量を測定する。 さらに、末梢循環の状態を無侵襲混合血酸素飽和度監視システムであるCOVIDEN社の『INVOS』を使用する。『INVOS』では微小血管(細動脈・細静脈・毛細血管)の酸素飽和度であるrSO2(residual saturation of oxygen)を非侵襲的、連続的にリアルタイムでモニタリング可能なシステムとして、当施設では大血管手術の際に使用されている。このシステムを利用して、末梢特に下肢の血流低下の有無を評価する。このシステム使用のための電極購入を研究費に計上する。
|