2012 Fiscal Year Research-status Report
系列物品使用行為の組織化メカニズムの探求‐認知障害者の注視行動分析を通して‐
Project/Area Number |
24500627
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
小田桐 匡 京都橘大学, 健康科学部, 助教 (30388904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 敬太 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60573079)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 失行 / 目と手の協応 / 軽度認知障害 / アルツハイマー病 / 注視行動 / 頭頂葉 / 眼球運動 / 生活関連動作 |
Research Abstract |
後述(現在までの達成度を参照)する幾つかの問題とその対応のため、結果的には被験者データの収集は非常に限定的となった。しかしながら、研究遂行上の諸問題の解決は、結果的に本研究計画の実施基盤の強化に役立ったともいえる。同時に、限られたデータによる知見ではあるが、研究計画段階で提起した幾つかの仮説に該当する諸現象を定性観察によって確認出来た。 第1に、戦略的な視覚探索の欠如である。患者は一連の生活関連動作を一見問題なく遂行するように見えて、注視行動の分布には一貫性が欠如しているようであった。 第2に、被影響性の亢進を確認できた。健常群では必ずしも注視時間の多さによって次の到達把持対象が決定されるわけではない。しかしながら患者では、意味的に関連のない物品であっても、それが視線に止まれば次の操作対象として把持する傾向がみられた。 第3に、当座の行動時には関係しないが後々の使用には関連する対象物品への先行注視が、健常者では明確に確認できるものの、患者の場合、表面的には遂行可能な系列物品使用行為の課題であっても低下しうることが示唆された。 第4に、健常者では円滑な行為の遂行に役立つかのように作用する先行注視が、患者の場合、間違った行動の引き金にもなり得ることが観察された。 このような視覚探索課程や目と手の協応の問題が、果たして患者群全体の特徴になるのか、実際の課題成績と相関するのか、どのような心理機能の問題と関連があるのか、これら後に実施する統計学的処理を通じて明らかにされるであろう。本年度ではさらに、我々が用いる系列物品使用課題自体の有効性を確認することが出来た。幾つかの代表的な認知機能検査を用いても特定出来なかった系列物品使用上の問題を、今回用いた系列物品使用課題では顕在化させることに成功している。このことは系列物品使用課題を研究計画や実験環境に合わせて練り上げる過程で大いに役立った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
諸々の問題が生じた。 第1に、より基礎的な眼球運動能力を評価する更なる行動実験の必要性が判明したため、その準備に時間が割かれたという点である。しかしこの実験データの追加によって、系列物品使用時に得られる視線データの解釈に一層の説得性をもたらすことが期待できる。 第2に主たる研究者が研究場所である京都大学医学部附属病院の所属ではないため、研究遂行上の諸問題の解決に不可避的に時間がとられたという点である。このことは内部施設の運営を熟知した研究者による研究準備、実行に比べ効率性という点において大きく影響した。当初からこの問題を予測していたので、分担研究者の積極的な協力、同施設が統括する倫理委員会への速やかな研究計画の申請、さらには施設使用上にまつわる関連医局との相談等を行ってきた。にもかかわらず、研究遂行場所が普段は日常診療等でも使用せざるをえない環境であるため、使用日時、使用空間、使用可能な設備等の制約を伴い、その結果研究で用いる実施課題(系列物品使用課題)そのものの練り直しさえ必要になった。この問題は、予備実験の実施とその分析など当初の予想を超える時間を要することになった。しかしながらこのプロセスによって、より簡易で実施しやすい課題設定が可能になった。 第3に患者のリクルートが予想以上に困難であったという点である。個々の患者は協力的だが、遠方からの来院という物理的条件が参加に大きく影響した。しかしこの問題は医師の患者リクルートの更なる協力により改善する見込みである。 第4に機器購入業者とのトラブルが発生した。映像信号のシンクジェネレータの購入に当たり、当該業者が研究仕様の機器制作に不慣れであった点が影響し、提示する条件に見合った機器納入ができず、複数回にわたる作り直しの時間を要した。現在上記の問題は完全に解消されたので本年度の研究遂行には何ら影響せず、本格的なデータ収集が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から少しずつ開始したデータ収集を本格的に進める。具体的には、系列物品使用課題及びその時の視線計測、新たに作成した基礎的な眼球運動課題の実験、神経心理テストである。進捗の鍵となるのは患者群のリクルートである。研究分担者や研究協力者による現行外来での患者リクルートに加え、新規開拓として別の外来での患者リクルートを行うことになっており、患者データ数の確保を是非とも実現させたい。 今年度はデータ収集に加えその分析にも集中する。健常被験者は患者群よりも早くリクルートできることが予想されるので、先にデータ収集に入る。健常被験者のデータ自体も、運動の組織化メカニズムの解明という点で十分意義があるからである。 いち早く学会発表や論文発表が実現するようデータ分析の研究協力者も募りデータ解析の練習等をデータ収集と並行して行う予定である。当面7月末を区切りとして集めたデータをまとめ、2014年早々より国内外の学会で発表できるよう準備したい。論文作成も学会準備と併せて進めていくが、方法や仮説等はすぐにでも書けるので、勤務先業務との調整を図りながら進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は本年度同様、被験者への謝金、研究協力者(データ分析を行うアルバイト)への謝金が主たる使用目的である。同時に次年度の場合、国内外での学会発表経費、論文発表経費にも使用する計画である。大型の機材の購入等の予定はない。
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