2012 Fiscal Year Research-status Report
肺気腫症における運動介入が呼吸機能および横隔膜機能,呼吸中枢に与える影響
Project/Area Number |
24500628
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
今北 英高 畿央大学, 健康科学部, 教授 (00412148)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺気腫モデル / タバコ煙溶液 / リポポリサッカライド / 骨格筋 / 横隔膜 / 呼吸機能 / 呼吸中枢 |
Research Abstract |
近年,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界的にも急増しており,今後10年間で患者数は30%増加し,2020年には心臓病・脳卒中に次ぐ世界の死亡原因の第3位になると予想されている。わが国においても,2001年に実施された疫学調査NICEスタディにより,COPDの潜在患者数は530万人にも達すると報告されている。COPD患者に対する呼吸リハビリテーションとして,日常生活活動の拡大や生活の質を高めるために呼吸法の指導,在宅酸素療法,栄養指導,運動療法など様々な治療やトレーニングが実施・研究されている。本研究の目的は,COPDの代表的疾患の1つである肺気腫症において,肺気腫化に至るまでの全身性所見および呼吸機能所見を調査し,歩行・走行運動によるトレーニング効果を生理学,組織化学,生化学的手法を用いて解明することである。 COPDにおける呼吸リハビリテーションのエビデンスレベルAは運動耐容能の改善,呼吸困難感の改善,HR-QOLの改善などであり,エビデンスレベルCは呼吸筋トレーニングの効果が挙げられている(GOLD guideline 2007)。本研究はこれらのエビデンスに対しての基礎的知見を与えられるとともに肺気腫症に対する運動療法や薬物治療,栄養療法などの治療介入効果に関した臨床応用に展開するための基盤を提供できると考えている。 これまで横隔膜筋の生理学・組織化学・生化学的特性や横隔神経切除,頸髄の各髄節レベルでの呼吸機能と横隔膜の役割について研究を行ってきた。本研究では呼吸疾患である肺気腫症における運動介入が呼吸機能や呼吸中枢にどのような影響を与えるかを換気量測定や組織化学染色法,電気泳動法,ELISA法などの分析手法を用いて多角的に明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は実験設備を整え、第1実験として肺気腫モデルラット(CS群)の作製を確立することであった。当初、肺気腫モデルラットを作製するにあたり、30-40日間の薬液投与を予定していたが、途中で死亡する例があり、20-30日間の投与に切り替えた。 実験結果は、4週間のタバコ煙溶液投与にて、1週目は体重および餌摂取量が減少し、それに伴い体重も減少した。2週目以降は上昇に転じたが、コントロール(CT群)に比べ増加率は緩やかであった。 骨格筋のin vitroにおける収縮張力は、ヒラメ筋(SOL)では両群間に有意な差はみられなかったが、長趾伸筋(EDL)では強縮張力でCS群に有意に上昇した。また、横隔膜(DIA)では1-100Hzの電気刺激による張力がCS群で有意に低下した。疲労指数では、SOL、EDLでは両群間に有意差はみられなかったが、DIAでは刺激開始から2分値においてCT群に比べCS群の有意な上昇が認められた。 末梢血酸素飽和度では、両群ともに投与開始から2週目まで減少傾向を示したが、3週目で増加傾向を示した。しかし、両群間に有意な差はみられず、SpO2も95-98%と安定した数値を示した。 薬液投与4週における1回換気量は、CT群に比べCS群で有意に低値を示した。また、組織化学的評価では、肺組織において右葉、左葉ともに、肺胞壁の破壊による肺胞の拡張がCS群において顕著にみられ、気管支への炎症細胞の浸潤も確認できた。 以上の所見により、タバコ煙溶液およびLPS溶液の噴霧投与により肺気腫モデルラットの作成はほぼ確立できたと考えられ、平成24年度に予定していた実験計画は遂行されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,研究計画の2年目を迎える。 当初の計画通り,第1実験である肺気腫モデルラットの作成を3期に分け,詳細な基礎データを取得する予定である。しかし,平成24年度に実施したモデル作成が順調に遂行できたため,平成25年度は3期に分ける必要がないと判断した場合,平成26年度に計画してる運動介入実験の一部を行う予定である。また,発展的に分析項目を追加し,より詳細な基礎データを取得できるように分析技術の向上も目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,実験遂行のため,第一に実験動物や抗体,実験消耗品などに研究費を充てる予定である。また,設備備品費としてゲル撮影システムを購入予定として挙げているが,平成24年度に購入したELISA機器を十分に活用するために,ELISAキット等の実験消耗品に対して優先的に研究費を充てる予定である。後半に入り,研究費予算の状況を見合わせ設備備品費を検討する。
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