2013 Fiscal Year Research-status Report
肺気腫症における運動介入が呼吸機能および横隔膜機能,呼吸中枢に与える影響
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24500628
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
今北 英高 畿央大学, 健康科学部, 教授 (00412148)
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Keywords | 肺気腫ラット / 運動介入 / 骨格筋 / 横隔膜 / 呼吸機能 / 呼吸中枢 |
Research Abstract |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は世界的に最も重要な死因の1つである。先行研究によると、COPDは1990年には6番目の死因であったにもかかわらず、2030年までには虚血性心疾患・脳血管疾患・HIV/AIDSに次ぐ世界の死因第4位になると予測されている。2001年に行われた疫学調査NICE studyによると、COPDの有病率は40歳以上で8.6%、潜在患者数は530万人と推定され、日本も世界と同様に高いCOPDの有病率を示すことが明らかにされた。高齢化社会の進展に伴い、COPDの患者数は今後もさらに増加していくと考えられ、COPD患者に対する呼吸リハビリテーションとして,日常生活活動の拡大や生活の質を高めるために呼吸法の指導,在宅酸素療法,栄養指導,運動療法など様々な治療やトレーニングが実施・研究されている。本研究の目的は,COPDの代表的疾患の1つである肺気腫症において,肺気腫化に至るまでの全身性所見および呼吸機能所見を調査し,走行運動によるトレーニング効果を生理学,組織化学,生化学的手法を用いて解明することである。 COPDにおける呼吸リハビリテーションのエビデンスレベルAは運動耐容能の改善,呼吸困難感の改善,HR-QOLの改善などであり,エビデンスレベルCは呼吸筋トレーニングの効果が挙げられている(GOLD guideline 2007)。本研究はこれらのエビデンスに対しての基礎的知見を与えられるとともに肺気腫症に対する運動療法や薬物治療,栄養療法などの治療介入効果に関した臨床応用に展開するための基盤を提供できると考えている。 これまで横隔膜筋の生理学・組織化学・生化学的特性や横隔神経切除,頸髄の各髄節レベルでの呼吸機能と横隔膜の役割について研究を行ってきた。本研究では呼吸疾患である肺気腫症における運動介入が呼吸機能や呼吸中枢にどのような影響を与えるかを換気量測定 や組織化学染色法,電気泳動法,ELISA法などの分析手法を用いて多角的に明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は実験設備を整え、第1実験として肺気腫モデルラット(CS群)の作製を確立することであった。肺気腫モデルラットは、20日間のタバコ煙溶液およびリポポリサッカライドの投与により作成が可能となり、モデルによる骨格筋、横隔膜および呼吸機能を分析した。 平成25年度は、第1実験の基礎データの分析を行い、その研究成果を学会にて発表した。さらに第2および第3実験として肺気腫モデルラットを作成し、トレッドミルによる走行運動の介入実験を行った。走行強度は、肺気腫モデルを20日間の投与にて作成し、その時点で、運動負荷試験を行い、血中乳酸を測定することで、至適運動強度を設定した。走行運動介入の結果、肺気腫ラットの筋張力は上昇し、運動効果が認められた。また、呼吸機能においても改善傾向が認められた。現在、骨格筋の組織化学分析および呼吸中枢における分析を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、再度、トレッドミルによる運動介入実験を実施予定。2週間の運動トレーニングによって、後肢骨格筋や横隔膜、呼吸機能などがどのように変化するのかを詳細に分析する予定である。また、肺組織の炎症所見や、血液採取することで、炎症性サイトカインの動向なども新しく分析項目として追加していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の実験において、免疫組織化学染色に使用する抗体を購入予定にしていたが、購入が間に合わず、次年度に繰り越す形となった。そのため次年度使用額が生じた。 次年度に、延髄呼吸中枢内に存在するc-Fosタンパクの発現を探るための抗体や骨格筋のミオシンタンパク抗体など、数種類の蛋白の抗体を購入し、組織化学分析を実施予定。また、次年度分の使用額では、炎症性サイトカインや酸化ストレスなどに関連するELISAキットなども購入し、分析を実施していく予定である。
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