2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24500630
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
水谷 雅年 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (30108170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小橋 基 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80161967)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 嚥下 / 嚥下障害 / 満腹物質 / 摂食 / GLP-1 |
Research Abstract |
本研究の目的は嚥下障害者の嚥下を改善するための治療法の有効性をテストする簡便なモデルを考案することである。今年度は健常人で生理的な刺激で嚥下能を低下させるものとして食事(満腹)に注目し、食事と嚥下能について調べた。 あらかじめ反復嚥下のトレーニングを行った被験者に1分間、最大頻度で空嚥下を行うよう指示した。嚥下は、顎舌骨上筋群に装着した2極の電極でその筋電図を導出し、記録した。市販の弁当を食べることによって自発性反復嚥下頻度の減少がみられた。弁当の代わりに人工甘味料を用いた無糖ミルクティで作った寒天、ブドウ糖溶液を摂取しても嚥下頻度の減少がみられたが、無糖ミルクティ液そのものを摂取しても嚥下遅延はみられなかった。したがって、食事による嚥下能低下は胃の膨満および血糖値の増加によって引き起こされ、甘味の味覚による影響は少ないと考えられる。また食事による自発性反復嚥下抑制は嚥下遅延モデルとして利用できる可能性が示唆された。 また麻酔下ラットに於いて、摂食抑制、胃排泄遅延、胃酸分泌抑制など満腹物質様作用を持つインクレチンGLP-1(glucagon-like peptide-1、アミノ酸30-31個)の嚥下への作用を調べた。その結果、第4脳室に投与したGLP-1は上喉頭神経の中枢端刺激により惹起された反射性嚥下頻度を減少させるとともに、刺激後最初に現れる嚥下までの潜時も顕著に増加した。このことはラットに於いても満腹が嚥下を抑制することを示唆し、健常人被験者を用いた実験と同様の結果が麻酔下ラットでも得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に於いて、嚥下は唾液分泌の影響を受けやすいので、データとして抽出するphaseについて検討するとしていたが、現在唾液分泌を抽出する手法を持ち合わせていないのでこれについては検討できていない。しかしながら、弁当、寒天、ブドウ糖液、人工甘味料の摂取時の嚥下頻度の計測は予想以上に順調に進み、嚥下頻度の減少は胃の膨満および血糖値の上昇によって引き起こされ、味覚の影響は少ないことを明らかにできた。麻酔下ラットにおける実験に於いても、満腹物質といわれるインクレチン(GLP-1)の嚥下への作用を明らかにでき、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト被験者を用いた実験:1)胃の膨満と血糖値の変化のどちらがより嚥下遅延に関与しているかを明らかにする。そのために血糖値の計測を行いながら、市販の弁当、寒天摂取、ブドウ糖摂取時の血糖値の変化と嚥下遅延の変化との関係を調べる。2)満腹・空腹や嚥下改善セラピーに用いられている香りは、自律神経と強い関連をもつので、自律神経系による嚥下の修飾作用が考えられる。そこで自律神経活性を調べながら、満腹状態と自律神経活性、香りと自律神経活性について調べ、自律神経活性と嚥下能との関連を明らかにする。3)カプサイシンやブラックペッパーの香りが嚥下障害患者嚥下能を著明に改善させるとの報告がある。これらのカプサイシンやブラックペッパーの香りが健常人被験者に於いても、満腹時に生じる嚥下能減弱が改善するかどうかを確認しこのモデルの有用性を示す。 ラットを用いた動物実験:1)昨年に引き続き満腹物質の投与や胃膨満、高血糖の嚥下反射に及ぼす効果を確認するとともにそれらの物質の作用部位を検討し、脳のどの部位に作用しているかを明らかにする。嚥下の起動神経群は延髄背側部に存在し、皮質からの下行神経線維や上喉頭神経などの末梢神経線維からもこの部位に投射し,嚥下を誘発している。この部位は、胃の膨満等を伝える迷走神経の求心性情報が終末する部位の近傍である。また血液中のブドウ糖を関知する神経群もこの部位に存在する。したがって、食事による嚥下の調節部位として最適である。したがってこの部位を中心に脳実質の部分破壊、薬液注入、神経生理学的手法を用いて作用部位を確認する。2)カプサイシンやブラックペッパーの香りが、健常人嚥下遅延モデルに作用した場合の作用点を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヒト被験者を用いた実験:計画当初はフラクレットという古い機械を使って自律神経活性を調べる予定であったが、自律神経活性を簡便に計測でき、かつ持ち運びの容易な加速度脈波計測システム パルスアナライザー(TAS 9) VIEW(55万円前後の物品)の存在を知り、次年度購入することにした。この経費を捻出するため、本年度の旅費の削減と物品費を減額し、次年度に回した。この計測器は次年度の研究計画の中の、満腹時の自律神経活性、香りと自律神経活性を検討する上で必要不可欠なものである。そのほかの経費としては嚥下の筋電図測定に必要な使い捨ての電極と血糖値計測のセンサーなどと、摂食してもらう食品(弁当、寒天、ブドウ糖など)、測定に協力していただく被験者への謝礼が中心となる。 ラットを用いた動物実験:本年度の研究で、飽食ペプチドを麻酔下ラットの第4脳室内投与により嚥下頻度が減少するとともに、初回嚥下の潜時が著明に延長することを明らかにした。しかしながら、第4脳室投与による嚥下抑制作用時点のばらつきが大きいので、さらに詳細な解析を進めるためには、より確実性の高い応答を得るために試薬の微量注入をする必要が生じた。このため先端経30μmの市販の微小ガラス管を使う必要が生じ、本ガラス管及び注入に必要な物品の経費を次年度に繰り越した。
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Research Products
(7 results)