2012 Fiscal Year Research-status Report
実用性の高い「園芸療法認知症総合ケアマップ」の作成
Project/Area Number |
24500633
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
小浦 誠吾 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (90310044)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 敬之 九州保健福祉大学, 保健科学部, 教授 (50331153)
押川 武志 九州保健福祉大学, 保健科学部, 助教 (50435195)
右田 平八 九州保健福祉大学, 保健科学部, 講師 (00582462)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 園芸療法 / 地域包括ケア / 自律神経変化 / マッピング |
Research Abstract |
これまでの研究で、園芸療法の対象のみではなく関わる全ての国民の心身の健康を考慮する園芸療法臨床実践マニュアル作成を通じ、高齢者の医療・福祉関係経費を無理なく節減するための導入・実践マニュアルとそれの伴うマッピングを完成させた。 園芸療法の非薬物療法としての貢献の可能性を検討するにあたり、すでに英国で最も医療・介護コストを必要とする疾患となっている認知症を避けて通ることはできない。日本においても認知症と診断される患者が300万人を超えると言われており、それらの背景から研究及び学会発表・論文作成などを開始し、それぞれの学会にて反響を得ている。 具体的には、人間・植物関係学会平成24年度大会(2012年6月.神戸.)において、「アロマオイルの嗅覚刺激と高気圧環境下の自律神経系作用が末梢循環と脳神経代謝に及ぼす影響.~非薬物療法による認知障害に関する考察~.」を発表し、人間・植物関係学会雑誌第12巻別冊(p24-25)に要旨が掲載されている. また、シンガポールで開催されたGHC(Global Health Conference 2012)において、「Effects on relaxation and cognitive impairment of natural plant aroma oil under the high atmospheric pressure environment.」 の口頭発表を行い、世界各国の参加者から多数の質問を受けるとともに興味関心を示された。日本園芸療法学会2012年度大会においては、「重度アルツハイマー型認知症者の園芸療法における知覚刺激が自律神経系に及ぼす影響.」を口頭発表し、認知症中でも重度となった対象者への園芸療法の可能性と人的および行政負担軽減の可能性についても言及した(日本園芸療法学会誌.Vol.5-Annex.38-39.).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非薬物療法としての園芸療法の多面的な可能性を考慮した場合、園芸療法の可能性は多様で無限であるにもかかわらず、そのことを踏まえて臨床活動ができる専門家は少ないという現実がある。正確にその利点を普及させるには、わかりやすい効用に関するエビデンスの提示に加えて、視覚的に理解しやすく関係者が理解できやすい園芸療法認知症総合ケアに関するマッピングが必要となる。認知症に対する園芸療法の重要性をわかりやすく表現することで、園芸療法の特徴であるたくらまなくても「おだやかな生命」を継続的に感じることや、全ての関係者に精神的な安定などの好影響を与えることがはじめて普及することが期待できる。 本年度は、健常者に対する園芸療法の有効性に関するエビデンスの蓄積のための研究を、認知症を専門分野とする作業療法士(OT)と身体障害を含む老年期を専門分野とする作業療法士が研究代表者と協力して予定通り遂行できた。具体的には、園芸療法実践またはロールプレイ前後の脳機能評価や自律神経測定により、園芸療法の認知症の非薬物療法としてのエビデンスの蓄積を開始した。脳機能評価としては、当初購入を予定していた簡易式光イメージング脳機能測定装置よりも安価で臨床での実用性が高い無侵襲性混合血酸素飽和度監視システムを2台購入し、脳血流量の変化と混合血酸素飽和度の測定を、分析スペクトル解析法による自律神経変化の測定と同時に実施している。 認知症患者に対する園芸療法の具体的な作業技法に対する研究は、視覚刺激だけなく嗅覚,触覚および味覚刺激も容易に刺激できるハーブを活用した技法の可能性を改めて検討を開始した。特に、直接手や足などに接するアロママッサージは、症状が進行しベッドサイドの対応のみとなった対象者に対しても有効な技法となる可能性があり、その侵襲性などのリスク管理も含めて導入の可能性について検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度蓄積した健常者に対する園芸療法時または活動前後の脳機能評価や自律神経測定をもとに、特別養護老人ホーム,デイケアセンター,デイサービスセンター,介護老人保健施設などの高齢者福祉施設における臨床における測定活動を予定通り開始する。これは、高齢者である対象者への負担を最小限にできる無侵襲性混合血酸素飽和度監視システム(INVOS 5100C),心電図スペクトル解析法(MemCalc/Tarawa)による周波数解析による自律神経変化の測定などの、簡易式脳機能測定機器を有効活用して臨床データの蓄積およびエビデンスの構築をはかる予定である。 研究成果は、人間・植物関係学会,日本園芸療法学会および国際老年精神医学会などにおいて発表し、広範囲からの質問,意見および指導を受ける予定である。 臨床研究活動と並行して実施する実用性の高い「園芸療法認知症総合ケアマップ作成」作業は、今年度に具体化できなかったマニュアルの大項目を決定することを優先させ、国際学会参加・成果発表,国内学会参加・成果発表を行いながら、情報収集を継続しながら甲斐項目の作成を実施する予定である。園芸療法認知症総合ケアマップ作成に関する成果は、翌年(最終年の学会にて発表する予定であり、論文(Proceedingsも含む)としての投稿も予定している。さらに最終年度の園芸療法認知症総合ケアマップ作成に関しては、小項目に対しての詳細を追加する作業を予定しており、その前段階までの全体像マッピング作業を完成させることを最低目標としている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は、①認知症者にたいしても視覚刺激だけでなく良好な嗅覚刺激,触覚刺激および味覚刺激をもたらす可能性があるハーブ苗(ミント類,ラムズイヤー,タイム,ローズマリー,ラベンダーなど),ドライハーブ(エキナセア,ローズヒップ,ローズ,ラベンダー,ミント類など)およびハーブエッセンス(エッセンシャルオイル:ローマンカモミール,ジャーマンカモミール,ラベンダー,マージョラム,フランキンセンス,グレープフルーツなどの柑橘系など),園芸資材などの消耗品、②園芸作業時の姿勢評価に関する物品費(姿勢共生用座面,姿勢ねじれ測定装置ホライズンなど),③自律神経変化(心電図スペクトル解析法(MemCalc/Tarawa)用),脳血流(無侵襲性混合血酸素飽和度監視システム(INVOS 5100C)用),などの測定時におけるデータ測定時の消耗品、④データ整理および臨床研究専用パソコン一式(内訳:携帯型ノートパソコン本体,携帯可能プリンター)などの購入に活用する予定である。 旅費は、学会参加・発表活動と調査活動に分類され、学会関係では、10月1-4日に開催予定の国際老年精神医学会(International Psychogeriatric Association (IPA) 16th International Symposium, Seoul Republic of Korea ,10月に開催される日本園芸療法学会2013年度大会(IWAD環境福祉専門学校,広島国際大学主催予定)における学会参加及び論文発表の予定である。各種調査研究に関しては、学会発表では得ることが困難である臨床現場の生の声を集積することを主な目的としており、園芸療法の実践環境や認知症者に対する対応に関する臨床調査などに出向く予定である。また、それらで得られた知見を園芸療法認知症総合ケアマップ作成に活用する予定である。
|