2012 Fiscal Year Research-status Report
皮膚局所麻酔が糖尿病性末梢神経障害の点字触読に及ぼす影響
Project/Area Number |
24500652
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
中田 眞由美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (60207818)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 皮膚局所麻酔 / 触覚機能 / 糖尿病 / 点字触読 |
Research Abstract |
近年、前腕に皮膚麻酔薬(EMLAクリーム)を塗布し、その領域の皮膚感覚を一時的に遮断すると手の触覚機能が向上することが報告されており、糖尿病患者においても同様の効果が確認されている。一方、メントールには局所麻酔効果があることが報告されており、EMLAクリームと同様の効果が期待できることがわかった。そこで、まず健常者において前腕にメントール剤を貼付し、指の触覚の変化を調べることを目的に実験を行った。 方法は右利き健常者38名(男性19名、女性19名)を対象に、無作為化二重盲見試験を実施した。介入群には「メントール剤」、対照群には「プラセボ剤」を右前腕に90分間貼付した。測定は、右示指、小指の指尖部において、触覚閾値、静的・動的2点識別(S2pd・M2pd)を、貼付前、貼付30分後、60分後、90分後、貼付剤剥離15分後の計5回実施した。統計解析は、貼付前と各測定時期の変化量をMann-WhitneyのU検定を用いて2群間比較を行った。 その結果、触覚閾値において貼付60分後の介入群の変化量の中央値が-0.0047gで、対照群は0gであり、介入群に触覚の向上が認められたが、統計的な有意差はなかった。S2pdには明らかな変化はなかった。一方、M2pdにおいては、貼付30分後の介入群の変化量の中央値が-0.3mmに対して、対照群が0mmとなり、有意差が認められた(p=0.02)。 以上のことから、健常者においてメントール剤の貼付30分後にM2pd値の低下をもたらすことが明らかになった。動的2点識別は物体を識別する機能や点字触読能力と密接に関係しているといわれているため、本研究により点字触読訓練などへ応用できる可能性が示唆された。 本研究により健常者におけるメントール剤を用いた前腕皮膚麻酔効果のエビデンスが得られたため、次段階として糖尿病視覚障害者の点字触読に対して研究を進めたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した研究計画では、糖尿病視覚障害者を対象に皮膚麻酔薬を塗布して実験を実施する予定であったが、メントール剤に皮膚麻酔効果が期待できることがわかり、メントールの湿布剤を用いれば、より簡便に、リスクが少なく実験できるため、方法を変更して実験を行いたいと考えた。 しかし、糖尿病性視覚障害者に対して湿布剤を用いた実験を行う前に、まず健常者で湿布剤の効果を確認したいと考え、該当年度は計画を変更し、健常者を対象に実験を行った。その結果、健常者における湿布剤の効果が確認できた。 この結果に基づき、糖尿病視覚障害者を対象に湿布剤を用いることで、被験者の負担も軽減でき、より容易に実験が行えることになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
該当年度の実験により、メントールによる触覚機能の向上が確認されたので、次年度には、糖尿病により点字触読が困難な視覚障害者を対象に、同様の実験を実施する。そして、メントール剤貼付による指尖の触覚機能の変化、点字触読における影響を調べる予定である。それにより、点字触読訓練におけるメントール剤貼付の有用性について明らかにしたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
糖尿病視覚障害者を対象とした実験を実施する前に、健常者による実験を行った。これについては、実験を研究協力者に依頼し、分担して実験を実施した。そのため、研究協力者と結果について詳細につき合せ、討議する必要が生じた。そのため、国内旅費を計上することが必要となった。 さらに、該当年次に予定していた海外の共同研究者との研究打ち合わせができず、次年度に実施を予定しているため、海外旅費を計上する。
|