2013 Fiscal Year Research-status Report
皮膚局所麻酔が糖尿病性末梢神経障害の点字触読に及ぼす影響
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24500652
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
中田 眞由美 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 教授 (60207818)
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Keywords | 糖尿病 / 視覚障害 / 点字触読 / 前腕皮膚麻酔 / 触覚閾値 / 2点識別閾 / 知覚再学習 |
Research Abstract |
近年、ヒトの前腕皮膚に局所麻酔剤を塗布することで、手の触覚機能が向上することが報告されている。本研究の目的は、局所麻酔剤の代わりにメントールによる湿布剤を用い同様の作用、つまりa.それを前腕皮膚に貼付することで触覚を鈍化させることが可能か、b.前腕の触覚鈍化により手の触覚機能を向上させることが可能か、を調べることであり、さらにc. 糖尿病による視覚障害者の点字触読訓練への適用を検討することである。 初年度は糖尿病視覚障害者を対象に実験を行う前に、健常者に対して前述のa, bの可能性を明らかにすること、a のメントール剤による作用が可逆的なものであり、有害性はないことを確認する目的で実験を行った。その結果、メントール剤の貼付により、小指指尖における触覚の感受性と空間分解能が向上することが明らかになった。さらに湿布剤剥離後には、鈍化した触覚閾値が元の状態に回復することが確認できた。 本年度はその結果を踏まえて、視覚障害者17名(糖尿病による中途視覚障害者12名、比較対照として糖尿病以外の原因による視覚障害者5名)に対して前述のa, b, c,を明らかにするために実験を行った。 その結果、糖尿病視覚障害者ではメントール剤を貼付した前腕の触覚閾値は有意に上昇し、同側の示指、小指の触覚閾値及び2点識別値は有意に下降しており、前述のa, bの可能性を明らかにすることができた。c については、メントール剤の貼付前に比べ、貼付後は点字の触読ミスが明らかに減少しており、点字触読の正確性が向上することがが示唆された。 また糖尿病による視覚障害者では糖尿病性末梢神経障害を合併していることが多いため、前腕皮膚の鈍化が生じるかどうかの検証が必要であったが、本実験で、糖尿病視覚障害者であっても、健常者と同様の作用が起こり、それにより点字触読能力を向上させることが可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、糖尿病中途視覚障害者の前腕に皮膚麻酔剤を貼付し、その領域の皮膚感覚を一時的に低下させることで 1.手の触覚機能にどのような変化が生じるかを明らかにする 2.点字触読能力がどのように変化するかを調べる 3.点字触読訓練における有用性について明らかにする、ことであった。 25年度の研究では、上記の1,2および3について実験的に明らかにすることができ、おおむね順調に進展することができた。 しかし現在これらの結果について、脳の可塑性の側面から解釈し、考察を深めることに若干時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方策は以下である。 ・現在、24年度に実施した研究の論文化を行っているところであるが、それを専門雑誌に投稿する。 ・25年度に実施した研究についても論文化し、専門雑誌への投稿を準備する。 ・海外共同研究者と、いままでの研究成果についてディスカッションする。 ・本研究は点字触読への有用性について明らかにすることを目的としているが、それにとどまらず、手の知覚探索訓練にも利用できることが予想されるため、その可能性についても視能訓練士などに意見を求め、その具体的な適用方法について、さらに検討を進めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外共同研究者と研究に関するディスカッションを予定し、海外旅費を計上していたが、海外共同研究者との日程の調整がつかず、次年度に使用を見送った為。 26年度に海外共同研究者の研究施設を訪問し、一連の研究についてディスカッションするための海外旅費として使用する予定である。
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