2012 Fiscal Year Research-status Report
血中酸素飽和度測定のための超薄型センサーヘッドシステムの開発
Project/Area Number |
24500661
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
内田 恭敬 帝京科学大学, 生命環境学部, 教授 (80134823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 和良 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10433765)
木暮 嘉明 帝京科学大学, その他部局等, 名誉教授 (20016124)
舩山 朋子 帝京科学大学, 医療科学部, 准教授 (20460389)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | NIRS / Ge / 薄膜 |
Research Abstract |
フィッティング性に優れる密着型センサーヘッド作製のためにGe薄膜をめっき法により堆積する条件を求めた。まず光透過性を重視して透明導電膜着きガラス基板を使用したが、導電膜がめっき時になくなり成膜ができなかった。文献調査の結果をもとに、本研究では真空蒸着法により光が透過できる膜厚の銅(50nm)/チタン(25nm)/基板構造を形成してめっき時の電極とすることでGe薄膜のめっき形成が可能となった。まためっきではめっき浴に電流を導入する外部電極と金属電極との密着性も堆積速度に大きく影響することがわかり銅スペーサーの導入により300nm/時の堆積速度を実現した。 堆積した膜の物性的評価では、FTIR測定から膜中にGe-H、Ge-H2と考えられる結合を確認した。X線回折測定では39°付近に弱い(221)等の回折ピークは見られるのでアモルファス中にごくわずかに結晶化した部分が存在する膜であると考えられる。X線光電子分光装置で深さ方向元素分析を行い、アズデポでは電極として用いた銅とチタン金属のGe膜中への拡散は見られなかった。50nmのアルミニウムを蒸着で形成しショットキーダイオードの電流電圧特性では2桁程度の整流比が得られた。 基板として最適なプラスチックについてまず温度面から検討して、数種類の候補が見つかったが、今までの応用例を考慮すると現状ではポリイミド系の樹脂が最も有効であることが分かった。皮膚へのセンサ装着による不具合については、既存の近赤外分光法を用いたセンサにて20名の健常人を対象とした調査を実施した。ポリイミド系の樹脂については現在検討中である。 通信機能についてはスマートフォンに表示することがシステム構成と携帯性の面から有効であると結論して、アンドロイド端末への表示プログラムを開発中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
センサ用薄膜形成については初期的な目標はほぼ達成できたと考えられる。当初、センサ構造を実現しやすいと考えられた透明電極はメッキ液を成膜温度の60℃にして2時間以上保持しても抵抗率が全く変化しなかったが、めっき時に溶けてなくなってしまうという重要な問題を生じた。これに対して光を透過できる50nm程度の銅薄膜を蒸着やスパッタリング法で形成して問題可決を試みたが電極が溶けるという問題点は可決できなかった。そこで本研究では銅及びチタン膜厚を可視光が透過する50nmと25nmとした2層薄膜構造を用いることによりこの問題を解決することができ、本研究の目的の一つであるGe膜の低温堆積を、めっき法により60℃の低温で達成した。これにより耐熱性の低いプラスチックなどのフレキシブル基板上にGeが堆積可能であることが示せた。 光吸収特性から0.8eV程度のバンドギャップを有することや膜中水素量を制御による光吸収特性制御の可能性を示せた。また、ダイオード特性も得られている。しかし、現状ではダイオード特性は直列抵抗が大きいこと、ダイオード特性の電極金属依存性についての実験ができていないことが今年度の課題である。 センサからの信号を2.4GHz帯無線モジュールで送ることについては、当初予定していたワンチップマイコンを用いたシステムから、Javaを用いたアンドロイド系の携帯意端末で情報を表示することとした。現在、基本的な方針はほぼ確定しており、いくつかの動作環境での確認等が必要である。 耐熱性プラスチックの選定に関しては耐熱性の観点からポリイミド系を用いることとしたが、センサとして用いる場合にどのような安全基準を満たす必要があるのか、どのようなテストを行えばよいのかについて学内の専門家からアドバイスをもとに調査を行っている。この調査はポリイミドだけでなく他の材料も含めて行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ge薄膜を用いたセンサに関しては現在シリコンを熱酸化した基板やガラス基板を中心に膜質の評価を行い、赤及び近赤外光の受光感度を確認する。具体的にはショットキー接合を形成するための金属電極の仕事関数を変化して電流電圧特性がどのように変化するか実験を行い、さらに膜厚の制御により光透過性を調べて最適の膜厚を調べる。また、現在のダイオード特性では直列抵抗の影響が大きく整流特性を劣化させていることが現在までの研究結果から判明しているので、不純物ドーピングを行い電極金属とGe膜間の抵抗を下げるとともに、Ge膜自体の高品質化も併せて行う。これらドーピングと膜質改善の2つに関しては250℃以下の低温で行う必要があるため、エキシマレーザを用いてごく短時間に膜表面を加熱できるレーザアニールについても検討する。これらの件を踏まえてフィルム上へのGeセンサの形成を試みる。 検出信号の無線伝送につては安価で最近応用例が多く報告されているXBeeや低電力かつ他の機器への影響の少ないブルートゥースを用いてアンドロイド系携帯端末へのデータデータ表示を行う。 フレキシブルフィルムは耐熱性の面から最も有望であると考えられるポリイミド系を用いる予定であるが、長時間皮膚に密着させたときの不具合を医療機器・福祉機器の側面から検討する。昨年度実施した近赤外分光法による健常人を対象とした調査から、生理学的変化とノイズ(アーチファクト)の特定を行う。この結果を、ポリイミド系の樹脂に応用する。これと並行して他社から出ているアラミド系の樹脂などについてもセンサ形成と安全性の面から検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Ge薄膜を用いたセンサに関しては昨年度の研究助成で購入した四塩化ゲルマニウムの溶液を引き続き本年度も購入して成膜を行う。現在、シリコンを熱酸化した基板やガラス基板上に作製した膜質の最適化を行うとともに、様々な金属を購入して電極としての特性を比較して素子構造の最適化を行う。そして、赤及び近赤外光の受光特性を現有のシステムを用いて動作速度を確認するとともに、本研究組織では行うことができない素子の量子効率や分光光度特性の分析を本研究助成により外部機関に依頼する。膜中の水素濃度を制御してバンドギャップ制御を行ため、原子状水素処理や高圧水蒸気アニールなどを行えるようにするため本研究助成により配管部品やガスを購入する。 ポイイミド樹脂やアラミド系の樹脂を購入して様々な温度で素子を作製して最適な樹脂は何かを明にするとともに、皮膚との長時間の密着による試験から明らかにする。また、医療用の認可基準ついて照らし合わせて本研究で目指す絆創膏タイプの密着型センサーヘッド構造の問題点などを検討する。素子形状についてはシミュレーション結果と合わせて検討する。 無線通信に関してはタブレットを中心に準備を進めてきたが、本年度はスマートフォンに関する表示についても端末を購入して検討する。 本研究の成果を国内の学会や国際学会で発表するとともに論文誌に投稿する。
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Research Products
(2 results)