2013 Fiscal Year Research-status Report
定量的データに基づくプラスチック短下肢装具機能の分析・評価
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24500666
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
北山 一郎 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (80426535)
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Keywords | 短下肢装具 / プラスチック短下肢装具 / 歩行分析 |
Research Abstract |
前年度開発した6軸力覚センサ内蔵の短下肢装具を用い、5名の健常者に加え新たに2名の短下肢装具装着者(片麻痺患者)によるデータを取得した。はじめに、健常者により、短下肢装具の形状をトリミング(プラスチックの一部を削ること)することで形状を変化させた装具により、どのように力学的データが変わるかを調べ、測定の結果、トリミングにより装具前後方向や足関節底背屈方向回りのモーメントの最大値が増えるなどのことが観察された。トリミングの影響は、次年度本格的に実施する予定である。また、今回実施した片麻痺患者の歩行により取得したデータと健常者によるデータとを比較し次に示す幾つかのポイントを得ることができた。 ○片麻痺患者の歩行では健常者と異なり立脚相初期の底屈荷重が背屈荷重と比較して大きい傾向にある。 ○片麻痺患者の歩行では底背屈に伴う下腿長軸方向(X軸)周りと内側軸周り(Y軸)のモーメントの値が大きい傾向にある。 ○片麻痺の症状が重度となるほど上記の荷重・モーメントが大きくなる傾向にある。 ○上記のことは、片麻痺患者は立脚相初期から中期にかけて装具にいわゆる“もたれかかる”ことで、歩行の安定性を確保していることが示唆される結果である。また、その傾向は重度の患者の方が大きいことが予想される結果であった。さらに、実験結果では、装具の後方への“もたれかかり”は、装具の後方よりも外側にあることが観測された。このことは装具設計の重要なポイントであると考えられる。また、健常者では強くみられた立脚相後期での前方推進を制限する力については片麻痺患者では比較的小さいことが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の平成25年度の計画では、①装具を固定した状態での静的試験、②健常者による歩行実験、③動的-静的実験データによる分析が主要な目標であった。これらの内、①については、トリミングを施したことで装具の静的試験にどのような変化がみられるかを調べることができた。また、②については、歩幅の影響が大きいなどの健常者による歩行実験結果を学会に提出し、原著論文として掲載された。③については、①と②による動的-静的実験の比較を実施するともに、同研究ではトリミングによる装具の力学的変化に対して、有限要素法(FEM)の活用が有効であるという着想のもと、片麻痺患者からの力学的データを元に装具の厚みの影響やトリミングの影響について研究を進めているところである。また、今回は次年度に実施予定であった片麻痺患者によるデータが獲得できたことは非常に大きい成果であると考える。以上のことから、当該年度においては、ほぼ研究目的が達成できたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後進める研究は以下のとおりである。 ①装具使用者に対する歩行実験を実施することで、今年度獲得した立脚相での装具の役割に加え遊脚相での装具の役割を検証する。また、②動的-静的実験データ分析では、歩行実験と静的試験に加え、有限要素法(FEM)を用いた装具の変形や応力分布等によるデータ分析を行う。さらに、③特に有限要素法(FEM)を用いることで、装具のトリミングやプラスチックの厚みと変形や応力分布の関係を調べ、装具設計の基準となる指標の提示と新機能を有する装具の試作を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は主に歩行の立脚相の分析に主眼をおいて実験を実施した。このため、使用予定であった小形のロードセル(1台5万円程度)はアタッチメントの改良で今回購入の2台で全ての被験者に使用することが可能であった。一方、次年度は、遊脚相についても詳細なデータを取得する予定であり、このための遊脚相中にベルトにかかる荷重等を測定する小形のロードセルとそれを保持する特注装具部品をさらに複数台必要とする。 歩行の遊脚相中にベルトや靴底に発生する力を測定するために小形のロードセルを複数台購入して実験を実施する。なお、ロードセル内蔵のための特注装具部品の製作にも研究費を使用する。
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