2012 Fiscal Year Research-status Report
聴覚補助器による非言語・パラ言語情報伝達性能を評価するための尺度の構築
Project/Area Number |
24500675
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
籠宮 隆之 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 産総研特別研究員 (10528269)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 補聴器 / 人工内耳 / 心理尺度 / 感情音声 / QOL / 話者情報 |
Research Abstract |
聴覚障害者が補聴器や人工内耳などの聴覚補助器を用いて豊かな音声コミュニケーションを実現するためには,話者の属性,話者の感情や態度などの非言語・パラ言語情報が聴覚補助器で適切に伝達される必要がある.そして,非言語・パラ言語情報を適切に伝達する聴覚補助器を開発するためには,これらの情報がどの程度正確に伝達されているかを評価するための尺度が必要となる.そこで,本研究では,聴覚補助器による非言語・パラ言語情報の伝達性能を評価するための尺度の構築を目指している. 本年度は,話者の感情をどの程度伝達できるかを評価する尺度のプロトタイプを構築した.『慶應義塾大学研究用感情音声データベース(Keio-ESD)』に含まれている発話から.Ekmanの基本6感情および「中立」に相当する感情を,モーラ数およびアクセント型を考慮した9語で発話した音声を抽出した.ただし,Keio-ESDには男性話者1名分の発話のみが収録されているため,上述の感情および語彙と同一の発話を女性話者から収録した.このプロトタイプ尺度を用いて人工内耳シミュレータおよび骨導超音波補聴器の評価を行ったところ,それぞれの聴覚補助器の特性に応じた得点および同定結果が得られた. また,本年度は話者情報伝達性能評価尺度のプロトタイプの検討を行った.話者情報伝達性能尺度は,話者弁別尺度,および年齢・性別同定尺度の二つの項目から検討した. また,これらの研究成果について国内外の学会等で成果を発表し,関連研究者と討議を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では聴覚補助器による非言語・パラ言語情報の伝達性能を評価するための尺度構築を目指している.本年度は,話者感情識別評価尺度のプロトタイプを構築した.また,話者情報伝達評価尺度の項目の検討を行った.人工内耳シミュレータおよび骨導超音波補聴器を用いた予備的な評価実験の結果,それぞれの聴覚補助器の特性に応じた評価得点を示していた.したがって,これらの尺度は概ね聴覚補助器の性能評価に貢献するものとなると考えられる. また,これらの評価尺度は,感情の正解率や話者識別の正答率など,聴覚補助器のユーザにとって分かり易い指標となっており,臨床現場でも役立つことが期待されるものである. 以上の理由により,研究プロジェクトの1年目の成果として,概ね順調に達成できていると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに作成した評価基準以外での評価尺度の構築を検討する.そのために,聴覚障害者や聴覚補助器のユーザがどのような点で聴覚補助器に不満を持っているかをリサーチする.これには,国内外の研究動向の調査のほか,アンケート調査なども検討する. また,これまでに作成したプロトタイプ尺度の妥当性を評価するための評価実験を行う. まずは,より大人数の被験者による実験を行い,安定した評価結果が得られるかを検討する.また,より多様な聴覚補助器の性能を評価し,それぞれの聴覚補助器の性能を正しく捉えているかを検討する.さらに,評価尺度を回答する際の負担や時間など,尺度のユーザビリティを検討する.これらの評価実験の結果を反映し,プロトタイプをブラッシュアップさせていく. さらに,研究成果は積極的に国内外での学会や論文誌で発表し,さまざまな分野の専門家からの意見を集める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費は,主に多様な聴覚補助器の性能を評価するための機材やソフトウェアの購入に充てる. 人件費は,アンケート調査や被験者実験の謝金として用いる.また,アンケート調査などを実施した際には,データ整理のためのアルバイト謝金にも充てることを検討している. また,研究成果を発表のための旅費や学会参加費に使用する.
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Research Products
(8 results)