2013 Fiscal Year Research-status Report
聴覚補助器による非言語・パラ言語情報伝達性能を評価するための尺度の構築
Project/Area Number |
24500675
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
籠宮 隆之 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究情報資料センター, 特任助教 (10528269)
|
Keywords | 補聴器 / 人工内耳 / 心理尺度 / パラ言語 / QOL / 話者情報 / パラ言語 |
Research Abstract |
聴覚障害者が補聴器や人工内耳などの聴覚補助器を用いて豊かな音声コミュニケーションを実現するためには,話者の属性,話者の感情や態度などの非言語・パラ言語情報が聴覚補助器で適切に伝達される必要がある.そして,非言語・パラ言語情報を適切に伝達する聴覚補助器を開発するためには,これらの情報がどの程度正確に伝達されているかを評価するための尺度が必要となる.そこで,本研究では,聴覚補助器による非言語・パラ言語情報の伝達性能を評価するための尺度の構築を目指している. 本年度は,これまでに作成した話者感情情報伝達性能評定尺度および話者弁別情報伝達性能評定尺度の有効性について検証した.聴覚補助器の性能が変化した場合に,それぞれの尺度の得点がどのように変化するのかを調査した.聴覚補助器の性能をコントロールするため,電極数を増減させた人工内耳のシミュレーション音を作成し,数十名規模からなる被験者実験にて,それぞれの尺度の得点を求めた.この結果,これまで構築した尺度は聴覚補助器の性能に応じて得点が変化すること,この得点は単音節明瞭度などの尺度は異なる得点推移の傾向を見せること,したがって単音節明瞭度試験の他にこれまでに作成した尺度が必要になることなどが示された. また,これらの研究成果について国内外の学会等で成果を発表し,関連研究者と討議を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では聴覚補助器による非言語・パラ言語情報の伝達性能を評価するための尺度構築を目指している.本年度は,話者感情識別評価尺度のプロトタイプ.および,話者情報伝達評価尺度のプロトタイプの評価試験を実施した.人工内耳シミュレータを用いた被験者実験による評価試験の結果,聴覚補助器の性能に応じた評価得点を示すことが確認できた.したがって,これらの尺度は概ね聴覚補助器の性能評価に貢献するものとなると考えられる. また,これらの評価尺度は,感情の正解率や話者識別の正答率など,聴覚補助器のユーザにとって分かり易い指標となっており,臨床現場でも役立つことが期待されるものである. 以上の理由により,研究プロジェクトの2年目の成果として,概ね順調に達成できていると判断できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでに作成した評価基準以外での評価尺度の構築を検討する.そのために,聴覚障碍者や聴覚補助器のユーザがどのような点で聴覚補助器に不満を持っているかをリサーチする.これには,国内外の研究動向の調査のほか,アンケート調査なども検討する. また,より多様な聴覚補助器の性能を評価し,それぞれの聴覚補助器の性能を正しく捉えているかを検討する.これまでは主にシミュレーション音を用いた評価実験を行ってきたが,実際の聴覚障碍者による評価実験も検討する.さらに,評価尺度を回答する際の負担や時間など,尺度のユーザビリティを検討する.これらの評価実験の結果を反映し,プロトタイプをブラッシュアップさせていく. さらに,研究成果は積極的に国内外での学会や論文誌で発表し,さまざまな分野の専門家からの意見を集める.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度より研究代表者の所属が変更になったことにより,当初購入を予定していた物品が不要になり,また,謝金の支出額が変更された.このような事情により,支出額が少なくなった. 今後の研究の進捗状況により,謝金,物品購入,成果発表旅費などが増加すると考えられる.次年度使用額は,これらに充てていく予定である.
|