2012 Fiscal Year Research-status Report
小学生の習熟度レベルに応じた走運動の評価・指導法の開発
Project/Area Number |
24500697
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
國土 将平 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10241803)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走運動 / 小学生 / 運動習熟度 / 運動観察法 / サイクルモデル |
Research Abstract |
小学校の体育における基礎的な運動動作の中で走運動(ジョギングと全力疾走)に焦点を絞り、運動観察的な動作の評価尺度を構成する。本年度は、走運動の運動観察法による評価に関する先行研究をレビューし、走運動の動作因果関係を考慮した評価観点に関わるモデルを提案することを目的とした。 Dillman(1975)や小林(1990)の走動作のサイクルを考慮しつつ、天野(1985)、宮下(1986)、八木(1988)、Haywood & Getchell(2005)などをレビューした。これらの走運動の多くの評価観点は、足部の動作に注目されており、前方への移動相において足部の移動が高い位置であること、スプリンターでは接地相とキック相のバランスが重要であることが指摘されている。これに走サイクルの情報を付加すると、振り下ろし局面やキック局面についての観点が不十分であった。また、腕の振り方の評価として、交互前後方向に振られていることが指摘されている。しかし、足の動きと腕の動きの連動に関する記述はなく、評価観点に加える必要がある。今日までの走動作の評価では、主に足と腕の動きの指摘が主であるが、これらの動きを支える体軸についての評価は十分に行われていない。 以上のレビューに基づき、走動作の因果-観察モデルはフィッシュボーンダイアグラムを適用して作成され、地面キャッチ、ドライブ、スイング動作の3個の主要な動き、25の観測観点を含むサイクルモデルを考案した。これらの観点を用いて撮影された小学生30人の中間疾走フォームを予備的に分析した。因子分析の結果、2因子が抽出され、、第1因子に21変数が高い因子負荷量を示し、また走時間との間にr=-0.374の有意な相関が得られ、走技能を反映していることが示唆された。しかしながら、ピッチとストライドの観点が十分に評価基準に含まれていないなど、改善点も明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究のレビューは50本以上となり、順調に終了した。バイオメカニクス的な研究は多数あるが、運動観察法による研究は十分にあるとはいえない結果であった。また、乳幼児期の走運動の発生からある程度に走ることができるまでの運動観察が主であり、本研究の対象者である小学生に対する研究はあまり見られなかった。また、走動作の表現が抽象的かつ観念的であり、運動観察法に十分に耐えられる観点が少なかった。 また、主要運動動作の概念があまり明確でなく、連続する走運動動作を説明するモデルを作成することに予想以上の時間を必要とした。専門家とのデルファイ法による、モデルの検証作業では、初期モデルでは主要動作が6動作であったが、より概念を整理して、5動作、さらに3動作とシンプルにまとめることができた。 25の動作評価観点を作成したが、予備解析のための標本が十分でなかったことが課題である。また、分析の結果、走時間との間の相関係数は予想よりも低かった。しかし、これは想定の範囲であり、モデルの改善の方向性も明らかとなり、現在その改善を行っている。また、平成25年度の本調査に向けた調査計画も既におおむね協力体制を確立し、調査実施に向けて、準備中である。 以上の点を総合的に評価すると概ね順調に伸展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
評価モデルの中で、課題となっていることは、ピッチとストライドの観点が十分に含まれていないことである。従って、ピッチとストライドを獲得するための動作に特化して、特性要因分析を行い、主要動作の再構築と評価観点の科改善を行う必要がある。加えて、ストライドを構成する要因である力強い「けり、キック」は弱すぎるとストライドの減少になり、逆に強すぎるとオーバーキック、あるいは足の流れになると予想される。このような最適値の存在するモデルについては、さらに検討が必要であり、引き続きモデルの改善を行う必要がある。 平成25年度の調査の実施は1件については概ね計画が終わり、実施の準備段階である。またもう1件の調査は現在日程調整を行っている。 これらの資料はモデルの改善を行った後、再度予備解析、さらに本解析を実施予定であり、平成25年度中に本解析の一部を解析し、学会などに発表する予定である
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度およそ3万円の研究費は本年度不十分だった予備解析の謝金費用として用いる。この研究費でのべ25時間分の謝金として用いることが可能である。
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