2012 Fiscal Year Research-status Report
ポスト五輪を見据えたスポーツ政策の戦略性に関する研究
Project/Area Number |
24500720
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大沼 義彦 北海道大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70213808)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換(英国) / オリンピック / 都市 / 政策 |
Research Abstract |
平成24年度は、①英国における五輪及び都市に関する文献研究、②ロンドン五輪後のスポーツ政策や地域的実践に関する調査研究を行った。 文献研究からは、3つの論点が明らかとなった。(1)帝国主義とスポーツ研究:これらは19世紀の英国に端を発する近代スポーツの伝播や近代五輪の開催を、帝国主義的拡張と植民地化、そして脱植民地化の文脈に再定位させ、ナショナリズム、ナショナル・アイデンティティ、人種、エスニシティ、ジェンダーへと接近するものである。(2)スポーツメガイベントと開発研究:スポーツ開発研究からは、①民間・商業部門/新自由主義、②主要なNGO/開発介入主義、③国家機関/戦略的開発主義、④新しい社会運動/社会正義という、主体と開発理念が分類・検討されてきている。スポーツメガイベントは開発という点で闘争のアリーナの最前線となる。五輪後のスポーツ政策を検討する際には、これら諸主体の関連が争点化される。(3)国家と競技スポーツ支援研究:英国では1995年を画期に、公的資金と国営宝くじを財源とするスポーツ強化が図られ、その極点にロンドン五輪は位置づけられる。しかし、国家財政の危機が叫ばれる中、社会福祉的スポーツ予算は削減される一方で、相対的には競技力向上予算は維持される。改めて、国家と競技スポーツとの関係が浮上する。 以上の政策転換期における地域でのスポーツ事業の展開を具体的に把握するため、イングランド中東部のプロスポーツクラブ(5クラブ)の現地調査を行った。対象クラブでは、五輪開催前までは地域を対象とした教育プログラム(例えばPlaying for Success)を行っていたが、補助金削減により廃止され、その代わりに、健康、女性に力点を置くものや、若者の薬物対策としてのスポーツプログラムが提供され、クラブによる地域支援は焦点を変えながら持続されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、①ロンドン五輪における中長期的スポーツ政策、及び都市・社会政策実態の解明、及び②ロンドン五輪後におけるスポーツプログラム/実践と変動要因の解明を課題としていた。特に、①については、英国における研究セミナーへの参加や現地研究者との討論機会を通じ、より積極的な研究枠組みの再検討を行うことができた。この点は、当初の予定以上に進展したといえる。 しかし②については、当初予定していたロンドン東部の五輪パーク周辺現地調査を、五輪パークそのものが五輪開催後閉鎖されたことや滞在先がロンドンから遠隔にあったことから実現できなかった。代わりに滞在先周辺のプロスポーツクラブの実践から間接的にこの課題に接近せざるを得なかったが、まだそれら結果を分析するまでに至ってはいない。この点は課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当初の予定通り北京五輪におけるスポーツ政策の戦略性の解明に集中する。調査課題は①北京五輪後の高等教育機関とトップアスリート養成、②五輪開催を契機とした社区体育(コミュニティ・スポーツ)の進展である。平成24年の課題として残された英国における地域スポーツ研究は、平成25年度の進捗状況を見て行うか、または平成26年度に行うことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には、調査分析用として購入を予定していたパーソナルコンピュータを購入せず現有品で対応したため9万円ほどの残金が生じた。本年度は、このパーソナルコンピュータの購入費として13万円、図書費5万円、国内旅費7万円、外国旅費55万円(北京延べ4週間)、謝金18万円(現地通訳・翻訳費)、その他1万円(現地交通費)を予定している。
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Research Products
(2 results)