2013 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ競争に拡大体験の地平を探る意味生成論の展開
Project/Area Number |
24500723
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
深澤 浩洋 筑波大学, 体育系, 准教授 (50313432)
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Keywords | 純粋経験 / 私-汝 / 体験 / 経験 / 感覚 / 知覚 |
Research Abstract |
スポーツの特に個人競技及び対人競技において、(1)参加者同士に拡大体験が成立する様相をさぐるべく、西田幾多郎の純粋経験から「私と汝」の論考との関連性について検討を進め、(2)参加者が共に存立する様態の基盤を探るために体験の様相について検討を行った。 西田の「私と汝」との関係論において特徴的なのは、両者の結びつく局面において、「私の底に汝を認め、汝の底に私を認める」ということであった。いわばお互いの自己の内に他者を認めるということが必要であり、決して両者が何ものかの契機を共有するわけではないということである。競技においては、競技者同士が他者とあたかも一体化したかのようでどちらにも自由とはならない瞬間が訪れることがある。この瞬間を競技者間で共有するというよりは、お互いがこの瞬間に、自身にとっては自由にならない事態や相手の心身状態を一挙に認知する(かのような)体験をしている。この瞬間に関する考察より、これは言葉による表現が不可能であり、その者の感覚において生起する可能性を見出すことができた。これに対し、相手の動きを感じ取ったり予測したりする事態を知覚することによって、それは「経験」として認識すべきであるとの見解に至った。それが試合終了後に相手の健闘を称え合う振る舞いとなって現れるのだと考えることができる。このように、感覚が体験に、知覚が経験に相当することから、競技者同士の拡大「体験」という表現よりも、拡大「経験」という表現が妥当であるとの見解に至った。この知見を元に投稿準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
西田幾多郎の私と汝に関する論究からブーバー,M.による「我-汝」論との比較検討という課題が浮かび上がってきていたのだが、研究実績の概要で述べたように、共感に関する感覚と拡大体験との関連性という新たな課題が生じてきた。その意味で研究の深化の面では進展したと言えるが、研究計画を一部見直す必要があるかもしれない。また、英文誌へ投稿したが、25年度中に審査結果が返って来なかったことやベルクソン新訳の刊行が25年度中に完結しなかったことも若干の遅れに影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、M.ブーバーの「我-汝」関係論からの解釈を試み、拡大経験の基礎モデルの構築を行う。また、この経験を視座・認識枠組みとして、競技者にどのような意味生成が起こることになるかを、スポーツノンフィクションや選手のインタビュー記事などから抽出する。これらの成果を踏まえてベルクソンの生成論を元に解釈を行い、意味生成モデルと教育モデルの構想を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ベルクソンの新訳を購入する予定であったが、刊行が完結せず、その購入費並びにベルクソンの生成論を検討するに係る経費(消耗品費)を使用することがなかった。また、韓国での発表が招待講演だったため、それに係る旅費を使用する必要がなかった。さらに、日本体育学会国際誌への投稿が完了せず、これにかかる費用を使用しなかった。 ベルクソンの生成論、スポーツ・ノンフィクションなどスポーツ体験・経験、教育学に関する資料の購入、関連文献の複写費(150千円)、教育学に関する資料収集のための国内旅費(2箇所:100千円)、これらの資料整理のための人件費(200千円)、資料整理等に係るソフトウエア・消耗品等の物品費(50千円)、日本体育学会国際誌への投稿(西田の自他関係論およびスポーツ体験への適用)並びに体育・スポーツ哲学研究への投稿費用(体験と経験の相違に関する知覚-感覚論による区別)(100千円)
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