2014 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ競争に拡大体験の地平を探る意味生成論の展開
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24500723
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
深澤 浩洋 筑波大学, 体育系, 准教授 (50313432)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 拡大経験 / 共感 / 我と汝 / 尊敬 / 相互尊重 / 崇高 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツ競技における拡大体験の意味と教育的意義を探究するにあたり、体験と経験との関係や相違について改めて確認・検討作業を遂行した。その結果、主客未分化の状況において生ずる認識やその変化を体験、その体験を対象化することで主客が分化した状態で認識されるものを経験として、「体験」と「経験」との相違を意味づけることができた。そして、経験の相においてはじめて我と汝との関係が位置づけられる可能性を検討した。この両者の結びつきの鍵を握っているのが共感empathyである。これによって我と汝とが完全に独立した2つの存在というわけではなく、また両者が混在した存在というわけでもなく関係づけられることを示した。そして、共感を伴う人格同士の関係において、従来呼ばれていた拡大体験は、むしろ拡大経験と表現されるべきという見解を導いた。 そこからさらに、経験の一例として、競争においては相手のことを克服すべき相手として捉えがちになる中で、競技においてもなお相互尊重が成立するための要因に関する検討課題が浮かび上がった。これは、競技スポーツに教育的な意義を見出す上で一つの重要な具体例となることから、教育モデル構築の試みを進める前段階として、また、具体的な涵養の目標を見定める上でもこの検討を研究課題の一つに位置づけた。尊敬を感情と捉えるカントの独特な見解の解釈を行い、崇高の概念が考察の重要な手がかりとなる可能性を見出した。そして、競技の場合、相互尊敬にその特徴が表れてくるのではないかとの仮説のもと、身体的な体験や共感から経験への変位で何が生じているのか、という点を今後の考察のポイントとして見定めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
拡大体験の教育モデルについて検討する予定であったが、これを考える手がかりとなる具体的な事例を相互尊重に見出すという、当初予定になかった検討課題を発見したことで、この考察や我-汝関係の鍵となる共感の問題、さらには体験と経験のそれぞれの意味づけという課題へ取り組まざるを得なかった。しかしながら、より実質的で深まりのある研究が遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は、体験と経験の意味づけや相互尊重や尊敬の問題に関する考察を深め、口頭発表を行ったが、論文執筆に至らなかったため、論文発表を進める。また、教育モデルの構築を平行して進め、口頭発表の機会を得る予定である。
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Causes of Carryover |
論文投稿料について論文執筆に至らなかったこと、ならびに旅費について研究成果の口頭発表が招待講演であったことにより、それぞれ未使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
拡大経験の概念に関する論文発表や競技者間の相互尊敬についての論文発表・口頭発表を行うための経費(旅費や投稿料)として使用する計画である。
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