2016 Fiscal Year Annual Research Report
Developing discussion on semantic generation exploring the horizon of the expanding experience in sport competition
Project/Area Number |
24500723
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
深澤 浩洋 筑波大学, 体育系, 准教授 (50313432)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 溶解体験 / 単眼構造 / 複眼構造 / 感覚 / 知覚 / 相互尊重 |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツ競技における拡大経験を基盤として発生する可能性を持つ相互尊重の特徴とその発生機序について検討を行った。 まず、スポーツ競技を通して発生する尊敬の念と、一般的な尊敬の念との違いについて検討した。その結果、競技者が自身に対して自己認識し、そのパフォーマンス発揮の努力ならびに競争相手の努力を認識する共感により相互尊敬の可能性が開かれることを見出した。共感に関しては、野矢茂樹の知覚・感覚論ならびに単眼構造・複眼構造をベースにその論理構造の解釈を試みた。単眼構造を持つ感覚は必ずしも私秘性や感覚主体の一人称的権威を導くものではない、すなわち他人から全くわからないものではなく、この点に共感の可能性が開かれてくることを文献解釈により確認した。また、感覚に関しては競技者同士に完全な一致を見出すことは不可能である(それ故自己と他者という人称性の基礎となる)が、複眼構造をもつ知覚であれば、スポーツ経験を通して得られる感覚に対し、そこで対象化されたものの知覚を自他共に共有する可能性が導かれる。 こうした感覚を誘発するものを溶解体験に見出すことができた。そして、これが反省的に知覚対象に転じた時に拡大経験が生起することを明らかにした。一方が他方に対して一方的に尊敬の念を抱くのではなく、相互に尊敬ないし尊重するためには、こうした共感を契機とした拡大経験の成立が重要である。したがって、相手を凌駕しようと努力するために競争相手に生じた感覚や知覚を共有しない限り尊敬の念が抱かれることはなく、その意味で溶解体験や拡大経験が果たす役割は大きい。
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