2012 Fiscal Year Research-status Report
運動が脳性麻痺者の脳機能及び筋代謝に及ぼす影響について
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24500728
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
石塚 和重 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (40350912)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳性麻痺 / 脳機能 / 筋代謝 / NIRs System / 科学的トレーニング |
Research Abstract |
脳性麻痺者の科学的トレーニングの基礎研究として、運動が脳性麻痺者の生体に及ぼす影響を脳の前頭前野と下肢骨格筋を多チャンネル近赤外分光法(NIRS System)により同時測定し、得られた酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビン濃度長そして全ヘモグロビン変化から運動が脳性麻痺者の脳機能と筋代謝に及ぼす影響について検討した。平成24年度は測定器具の購入と健常者2名、脳性麻痺者2名(痙直型1名、アテトーゼ型1名)でパイロットスタディを予定したが、健常者1名、脳性麻痺者3名(痙直型1名、アテトーゼ型2名)について検討した。測定方法は1.運動負荷として歩行(時速4~6km)30分または疲労を訴えるまでの運動負荷。2.等速性筋力Biodex 4による膝伸展/屈曲角速度180°/secで10分または疲労を訴えるまでの運動負荷とした。測定装置はSpectratech社制OEG-16:2台使用。観測部位は前頭前野16チャンネル、下肢骨格筋(大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋)4チャンネル合計20チャンネルとした。結果として健常者では歩行、等速性筋力測定時において前頭前野では運動開始から酸素化ヘモグロビンが増加する傾向が認められた。一方、脳性麻痺者では等速性筋力測定時に脱酸素化ヘモグロビンが優位に働いていた。仮説としては健常者と脳性麻痺者では、運動による前頭前野と下肢骨格筋の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの変化が脳性麻痺者の方がより増加する可能性があると予想したが、等速性筋力測定時に脱酸素化ヘモグロビンが優位にあったことは運動時に筋細胞に対して酸素の供給が脳性麻痺者では低いのではないかと推察された。本研究の意義として、脳と筋代謝の研究から1.脳性麻痺者の脳と筋疲労について検討することができる、2.脳性麻痺者に対して適性運動量を示すことが可能になるなどがあげられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は脳性麻痺者の科学的トレーニングの基礎研究として、運動が脳性麻痺者の生体に及ぼす影響を脳の前頭前野と下肢骨格筋を多チャンネル近赤外分光法(NIRS System)により同時測定し、得られた酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビン濃度長そして全ヘモグロビン変化から運動が脳性麻痺者の脳機能と筋代謝に及ぼす影響について検討することが目的となっている。平成24年度は健常者と脳性麻痺者を比較するためのパイロットスタディーを実施した。仮説として1.歩行時、筋力測定時ともに前頭前野では運動開始から酸素化ヘモグロビンが減少し、鏡像的に脱酸素化ヘモグロビンが増加し、時間経過とともに双方の変化が交差し反転すると予想される。2.4つの下肢骨格筋では運動開始から酸素化ヘモグロビンが増加し、脱酸素化ヘモグロビンが減少し、時間経過とともに双方の変化がプラトーになると予想される。3.健常者と脳性麻痺者では、前頭前野と下肢骨格筋の酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの変化が脳性麻痺者の方が増加する可能性があると予想されるなどと考察したが、実際は筋力測定時に下肢筋の脱酸素化ヘモグロビンが酸素化ヘモグロビンより優位であったことは予想外の結果であった。脳性麻痺は酸素消費が激しい可能性が示唆され、筋疲労になりやすい状況を示しているのではないかと考えたいが現在数名の被験者だけの結果なので何とも言えない状況にある。また、運動負荷の設定についても1部追加修正する必要があり、NIRsシステムを用いた疲労研究として自転車エルゴメーターでの有酸素運動が脳機能と筋代謝に及ぼす影響についても検討する必要があると考えている。平成25年度からは負荷内容を1部見直し本格的な研究に入っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
脳性麻痺は脳から生じた筋の運動障害である。脳性麻痺は老化が早いといわれている。脳性麻痺を脳機能と筋代謝の両面から解明することは、将来、脳性麻痺のアンチエイジング、障害者スポーツやリハビリテーション、QOLの向上に意義のある研究になると考えている。24年度の研究結果から、健常者と脳性麻痺者では筋の疲労度に差が出るのではないかと予想される。脳性麻痺の科学的トレーニングについて研究するためには疲労の研究は欠かすことはできない。今後は歩行能力や筋力測定時だけだはなく、自転車エルゴメーターを用いた有酸素運動時での脳機能と筋代謝を捉え、脳性麻痺者の疲労研究を発展させていきたいと考えている。また、脳性麻痺者のスポーツとくにボッチャや陸上競技の選手の健康管理やコンディショニングに役立てていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は被験者の都合で研究開始時期が遅れたために、学会発表ができず次年度使用額(88,680円)が生じてしまった。25年度は助成金70万円と次年度使用額(88,680円)の合計金額788,680円の内、物品費15万円(3Dプローブ位置計測用コンピューターの購入予定)、旅費40万円(被験者旅費及び学会発表用旅費)、謝金20万円(被験者謝金及び測定補助者謝金)その他消耗費約4万円(筋肉用光イメージング装置装着固定具)を予定している。
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