2013 Fiscal Year Research-status Report
スペクテーター・スポーツの魅力と権力作用に関する研究
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24500741
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
高橋 豪仁 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40206834)
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Keywords | スペクテーター / スポーツ / イベント |
Research Abstract |
「応援妨害予防等請求事件」の訴状、準備書面、判決文などの訴訟記録を資料として、スポーツを見る側の権利の軽重の観点からこの事例について検討した。特に、原告らが主張したプロ野球の公共性を根拠にした「スポーツ権」に注目し、「市民的公共性」の視点から考察を加えた。この研究課題は、前年度から継続してきたものであるが、その研究成果として、スポーツ社会学研究(第22巻第1号、2014年3月発行)に「『見るスポーツ』の権利に関する一考察」が掲載された。 2005年に6チームで発足したbjリーグは、2013-14年シーズンでは21チームとなり、リーグは拡大・発展している。bjリーグのゲームはいかなる魅力を有するのかという問題意識の下、bjリーグにおける観客の満足度とスポーツプロダクト因子との関係を明らかにするために、奈良を地元とする「バンビシャス奈良」のホームゲーム観戦者を対象に、2013年12月1日橿原公苑第一体育館において質問紙調査(有効回答:343票、有効回答率:91.2%)を実施した。スポーツプロダクトの評価に関する項目について因子分析を行ったところ、「試合を観戦する楽しさ」「魅力あるリーグ」「観戦しやすい会場」「豊富なエンターテイメント性」「チームへの地元意識」「チケット入手の容易さ」「魅力的なグッズ」の7つのプロダクト因子を抽出した。「ゲームの全体的な満足度」を従属変数、プロダクトの各因子を独立変数として重回帰分析を行った結果、観戦者の満足度を強く規定する要因はチームへ投影する地元意識であることが明かとなった。「チームへの地元意識」因子は、周辺的なプロダクトである「期待製品」として位置づけられるものであり、スポーツのゲームという基本部分に新たな要素を付加し、プロダクトを魅力的に変容させるものである。こうした点が、地域に根ざしたプロスポーツ特有の魅力であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究から継続して、応援妨害予防等請求事件に注目し、国家的な権力や、市場メカニズムを背景にした経済的な権力が、スポーツ観戦の権利に対してどのような影響力を有しているのかを検討してきたが、本年度は研究成果をスポーツ社会学研究(第22巻第1号、2014年3月発行)に掲載することができた。 地域に根ざすプロスポーツの魅力の魅力については、bjリーグの観客に対する質問紙調査によって検討することができ、結果は奈良教育大学紀要第63巻に投稿した。これらの点においては、順調に本研究が進んでいると言える。ただしスポーツに関する震災復興のナラティブや、有事におけるスポーツに対する人々のとらえ方に関する研究についての進捗状況は芳しくない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度から女子プロ野球の試合方式が変更になることもあり、引き続きスタジアムにおいてどのような演出がなされているかを調査する。スポーツに関する震災復興のナラティブ研究に関しては、2013年における東北楽天ゴールデンイーグルスのパ・リーグ優勝と日本シリーズ優勝の翌日から3日間の新聞において、楽天イーグルスの優勝が如何に物語られているのかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、スタジアムでの調査や文献研究が十分に実施できなかったため、次年度に使用する研究費が生じた。 平成26年度は、スポーツイベントの観察とともに、文献研究に力を入れたい。
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Research Products
(1 results)