2012 Fiscal Year Research-status Report
女性アスリートの方向転換能力向上要因分析と年代別トレーニングプログラム構築
Project/Area Number |
24500764
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
広瀬 統一 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (00408634)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 千秋 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (30180376)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 方向転換 / アジリティ / サッカー / 女性アスリート / トレーニング |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、女子サッカー選手の方向転換能力改善要因を検討することを目的とする。今年度は女子サッカー選手の方向転換動作に影響する要因を横断的に検討し、年代別の特徴を明らかにすることを目的とした。また、女子選手の特徴を明らかにするため、同年代の男子選手と比較した。 対象者は13歳から成人の競技レベルの高い(プロ選手、代表選手、Jリーグ下部組織に所属する選手)サッカー選手277名(女子106名、男子171名)であった。測定項目は身長、体重、除脂肪体重(LBM)、10m走、10m×5走、バウンディングとした。解析方法は、方向転換能力を示す10m×5走タイムを独立因子、その他の測定値を説明因子として重回帰分析を行い、方向転換能力を説明するその他の体力要素について検討した。また、各測定値の横断的変化を検討し、どの時期に各種体力要素が変化するかの基礎情報を得た。 その結果、男子においては10m×5走の説明因子としてLBM、10m、バウンディング(それぞれβ=-0.425、0.348、-0.192)が抽出されたのに対し、女子では10m、LBM、体重(それぞれβ=0.473、-0.402、0.159)が抽出された。さらに13歳から18歳の成長期男女のみで検討すると、女子では10m(β=0.559)のみが説明因子として抽出され、筋量やバウンディングに反映される全身パワーが方向転換能力に生かされていないことが示唆された。一方、成長期男子では成人を含めた場合と同様の結果が得られた。これらの結果から、男女では方向転換能力に影響する体力因子が異なること、また成人と成長期の選手でも異なることが明らかとなった。現在女子選手の方向転換時の動作解析を実施中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画どおりに進んでいる。本研究は1)方向転換能力(スピード)と各種体力要素およびスキルに関する横断的検討、2)方向転換能力(スピード)と各種体力要素およびスキルの縦断的変化の関係、3)方向転換能力向上のためのトレーニングプログラム立案と効果検証の3つで構成されている。初年度は1)を明らかにすること、また2)のベースラインデータを収集することを目的とした。 現在まで1)に関するデータ収集は概ね終了し、解析を実施している段階である。ここまでの結果から、横断的には成長期女子サッカー選手では筋力や筋量が方向転換時のスピードに影響しておらず、10mスプリント能力のみが若干の関係をもつことが示された。現在、前述した結果を説明するものとして膝伸展筋群の遠心性収縮力と、方向転換時の動作解析を行い、膝関節や股関節の屈曲角度と方向転換動作スピードの関係について検証中である。また、縦断的データ解析も同時にすすめており、横断的検討で得られた各種体力要素と方向転換能力との関係が縦断的にも当てはまることを検証中である。 当初の研究計画からの修正点として、男女比較を加えていることである。女子の競技レベル別での検討をプレリミナリーに検討した結果、大きな差異が認められず、体力レベルの相違が強く影響している可能性が示された。そこで女子アスリートの特性をより明らかにするため、現在男子アスリートとの比較を実施している。これまで得られた結果からは、男子においては筋量、筋力、スピードが総合的に方向転換能力に影響しており、女子とは異なる傾向が得られている。これらのことから、男女では異なるトレーニングプログラム立案が必須であること、また女子では体力要素の向上よりもスキルの向上が方向転換能力の向上に貢献する可能性が考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究結果から、女子サッカー選手の方向転換能力は、1)筋力や筋量によってその遅速が影響されづらいこと、2)17歳頃まで緩やかに変化することが明らかとなった。ただしこれらの結果は横断的検討から得られた結果であるため、縦断的にも同様のことが示されるかを今年度の研究で明らかにする。また、筋力、筋量に依存しない女子サッカー選手の方向転換能力であるが、その他の要因をYoungらの分類から考えると、テクニックと反応筋力から説明できると推察できる。この仮説を実証するために女子サッカー選手の方向転換動作時の画像解析、おもに停止期の膝と股関節屈曲角度、接地時間、減速期の体幹側方傾斜角度を分析し、スピードとの関係について検証する。またこれらの振る舞いに影響する要因として反応筋力をカウンタームーブメントジャンプで測定するとともに、バイオデックスによる膝関節伸展筋群の遠心性収縮力も測定し、関連を検討する。 また、新たな分析として、上述した測定を男子サッカー選手に対しても実施し、男女差を検討することで、女子アスリートの特徴をより詳細に検討する。これらの横断的、縦断的検討および男女比較の結果をもとに、女子サッカー選手の方向転換能力向上要因を明らかにした上で、今年度は各年代に合わせたトレーニングプログラムの立案を行い、指導する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は大きく設備費、研究補助費、交通費に研究費を支出する。設備費は現在方向転換能力をグランド上で測定しているが、そのパフォーマンスに影響する要因をより詳細に検証する必要性がでてきていることから、そのため床反力測定器購入にあてることを視野にいれて再計画をたてている。また研究補助費は画像解析データ収集と分析にあて、交通費はデータ収集のための旅費および成果発表と情報収集のための旅費に充てる。
|
Research Products
(6 results)