2012 Fiscal Year Research-status Report
民俗フットボールにおける伝統存続と近代化の受容からみるスポーツの意味変容について
Project/Area Number |
24500767
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 文久 日本福祉大学, 子ども発達学部, 教授 (30191571)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 民俗フットボール / スコットランド / イングランド |
Research Abstract |
当初、未だ訪問せず観戦していないゲームの調査に出かける予定であったが、残存する民俗フットボールの中でも知名度の高い二つのゲームの委員会から、ゲームの情報提供の申し出を受け、また来賓扱いで貴重なセレモニーへの招待を受けたことから、今年度の計画を次年度に回し、その二つのゲームの観戦に出かけることにした。 2012年12月に、まずカークウォールに出かけ、Ba'と呼ばれる民俗フットボールを観戦(1月1日に開催)し、ゲームの委員会のチェアマンのBobby Leslie氏にインタビューを行い、貴重な議事録も入手した。その後、エジンバラ大学のスコットランド研究所および付属図書館に出かけ文献探索をした。ロンドンでは、ウェンブリー・スタジアム内のフットボールミュージアムを訪れ、サッカーの歴史がどのように残されているか確認した。さらにハロー校にも訪問し、校内のゲーム開催場所に案内してもらい、ゲームの解説も聞くことができた。 次に、2013年2月にアッシュボーンを訪問し、そこに残存するRyal Shrovetide Footballのゲーム前に実施され、ゲームを支える一大イベントである昼餐会(約600名が参加)に招待客として出席した。そこでは、ゲームの委員会の広報担当のMaichel Betteridge氏の手配により、委員会のチェアマンほか、町の著名人、カウシルのメンバー、ボールを投入する人物、ボールのペインターなどの人物、そして地元の歴史家のLindsey Petter氏とも面会することができ、ゲームについての情報を入手することができた。ゲームの記録はもとより、招待客として地元の人たちからの心遣いにより、これまで知り得なかったゲームの姿や情報得、記録に残すことができた。 この二か所への訪問は、それまでの研究の中で、不明であったことや疑問であったことが解明され、貴重な調査となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は各年1か所に調査に出かけ、残存する民俗フットボールの調査を完了する計画であった。しかし、カークウォールとアッシュボーンのゲームは調査済みとはいえ、資料の不足から不明な点や疑問な点が生まれていたことから、委員会組織が存在し、ゲームの情報が保存され、そこから新たな資料入手が可能だと考え、計画を変更し、その2か所に調査に出かけることにした。それは、今後2年間で、残りの3か所に出かける見通しが立ったからである。 筆者は、残存する17か所の民俗フットボールの調査は完了していない中ではあるが、現在、これまでの研究成果の中間的まとめとして著書の執筆に取り組んでいる。それは、予定していた学会発表による成果の公表を著書による公表に切り替えたからである。そこでは、民俗フットボールが近代化との鬩ぎ合いの中で、伝統の存続のために近代化を一定受け入れ変容させながら存続させてきたこと、終焉を迎えているとも指摘されている近代スポーツのあり方を民俗フットボールのもつ楽しみとの対比で検討する必要があること、そして今後スポーツを受け継ぎ、伝える主体者として私たちは民俗フットボールの存続に学ぶ必要があることについて述べ、残存する民俗フットボールの研究の意義をまとめている。その事例として、今回調査した中で得られた2か所のゲームについての情報は大変有益となった。その著書は年内出版を予定していることから、残りの調査は、同時並行で取り組んでいる論文(2014年度に学会誌に投稿予定)に含む予定である。 重ねて、今回計画を変更して取り組んだが、アッシュボーンに出かけ、日本人としてかつて誰も目にすることがなかったセレモニーに参列し、招待客として歓待され、貴重な資料の提供を受けたこと、またカークウォールでは、門外不出のゲームの運営委員会の議事録の複写を提供されたことなどは、計画を変更するだけの十分な成果があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も現在取り組んでいる執筆作業を進展させる。実は残りの3つのゲームは、球状のボールを使用するのではなく、筒状のものや樽形のものであり、またセレモニーの形で残っているものである。これらは、ボールという概念の理解の問題にも及び、民俗フットボールにそれらを含むかどうか判断が分かれるところではある。しかし、筆者は、それらも残存する民俗フットボールに加えることで、その多様性が存在してきたととらえている。年内に終える中間まとめに、それらをどのように含め、位置づけるのか、改めて検討していきたい。そのためにも、今年度は、1年延期したハクシ-Haxeyに出かけ(2014年1月)、その独自性と共通性をしっかり探りたい。また、できれば2014年3月にコーフ・キャッスルCofe Castleへ出かけ、次年度の4月にハラトンHalaton出かけるという計画で臨みたい。 なお、調査実施までには、中間まとめの著書の執筆に向けて、これまで収集した資料を整理する作業に続けて取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は、ハクシ-(できればコーフキャッスルへの調査の可能性を探る)の調査のための旅費が中心となる。また国内の学会(スポーツ人類学会)への発表の旅費も計上し、物品については、昨年はビデオカメラのみで記録にあたったが、デジタルカメラを購入し、写真による記録も考え、そのための費用を計上している。その他の研究費は、現地で取集する図書の購入費用や資料の複写費用などである。
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Research Products
(1 results)