2013 Fiscal Year Research-status Report
民俗フットボールにおける伝統存続と近代化の受容からみるスポーツの意味変容について
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24500767
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
吉田 文久 日本福祉大学, 子ども発達学部, 教授 (30191571)
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Keywords | 民俗フットボール / 英国 / 存続 / 伝統 |
Research Abstract |
まず、ハクシー Haxey(イングランド、リンコリン州 Lincolnshire)への調査は2014年1月2日から9日まで現地に出かけ、1月4日に開催されたゲームの観戦・調査にあたった。このゲームは、フードHoodという牛革でできた筒状のものをボールに見立て、ハクシーという町とウェスウッドトサイドWestwoodsideという二つの町が、それぞれの町にあるパブにフードを持ち込むというゲームであった。球状ではないボールを用いるということに加え、ハクシーのゴールは町にある3つのパブがゴールとなっており、片方のチームのゴールが3つあるということが注目すべき特徴であった。ハクシーのプレイヤーたちにとって、自分たちの町にボールを持ち込むことだけではなく、どのパブにゴールをするかが次の争点となり、意味を持つ。それは、日頃どのパブに通い、飲食しているかが重要であり、そのパブ店主との関係の深さで決まるそうである。ゲームのスタート地点から近いパブがこれまで多くのゴール回数を得ていないということがそれを証明している。その他には、委員会組織を持たない、審判がいない、コートや時間の制限もないなど、他の残存する民俗フットボールが有する特徴を持っていることが確認できた。ゲーム開催日近くから酒の消費は驚く量で、ゲーム後も夜明けまでパブ内外で飲み明かしていた。パブがゲームのパトロンであったという歴史を示す一例として貴重なゲームである。 次に、著書の出版であるが、2014年1月8日に創文企画から『フットボールの原点』という著書を日本福祉大学の出版助成を受けて出版した。20年近く取り組んできた民俗フットボール研究の中間的まとめとしてサッカーとラグビーの起源と言われるゲームの実態を示し、そして民俗フットボールを通して現在のスポーツを批判的に分析し、これからのスポーツの在り方を検討するということを目的に作業に取り組み、著書にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度に予定していたハクシーHaxeyへの現地調査を無事実施することできたことから、未調査はハラトンHallaton(イングランド、レスター州)への調査を残すのみとなった。 今回のハクシーでの調査は、ハクシーのゴールの一つとなっているパブに宿泊し、ゲーム開催の前後のパブの様子、パブがゴールとなることから、パブの役割、店主の悩みやかかえる問題も知ることがとができた調査であった。このハクシーのゲームについては、これまでゲームの歴史や実態を明らかにした書物や文献はない。最近はインターネット上に画像によってゲームの様子が紹介され、簡単なゲームの紹介文も散見できるが、それらは概要の域を出ない。また、元フットボール博物館(イングランド、プレストン)の学芸員であったフュー・ホーンビーHugh Hornbyが著した”Uppies and Doonies” は、英国に残存する民俗フットボールを紹介し、貴重な情報を与えてくれる。本著は、英国人の見た民俗フットボールの姿を知る上で、有益な著書であるが、筆者の理解とは異なる部分も多々あり、それは実際に現地に出かけ、自ら確認したことで見えてきたことであり、丁寧に現地調査に取り組んできたことで得られた成果といえる。 一方、民俗フットボール研究ついては、世に研究成果を発信する必要性を受け止めていた。そこで、Jリーグ発足20年、フットボール・アソシエーションFA設立150年を迎えた2013年にサッカーとラグビーの起源として、それらのスポーツとしての面白さを再確認する意味から、本研究を遂行する上で大きな成果と考えている。 調査が残り1か所となったこと、著書を出版できたことで「順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度予定していた作業を順調にこなし、成果が得られたことは示したとおりである。しかし、著書の執筆作業にかなりの時間が費やされ、当初予定していた学会発表を行うことはできなかった。そこで、次年度以降に研究成果を学会で公表する取り組みを位置づけたい。 また、著書にまとめたものの、スコットランドでの調査で得た成果が中心であったため、イングランドに残存するゲームについてきちんと分析を加え、未調査のゲームにも言及して、「英国」に残存する民俗フットボール研究として成果をまとめ、発表していきたい。 さらに、研究成果を教育現場に生かすために、民俗フットボールを教材とした「文化としてのスポーツを学ぶ」体育理論の授業づくりについて、次年度に残すハラトンの調査に加え、進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学会発表旅費及びゲーム記録用のデジタルカメラの購入をしなかったことによる。 ハラトン(イングランド、レスター州)への調査、コーフ・キャッスル及びアッシュボーンへの調査を行い、加えて、国内学会(スポーツ人類学会)の発表も行う予定である。 また、デジタルカメラの購入、タブレット・パソコン購入も予定している。
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Research Products
(1 results)