2013 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症における機能的電気刺激を用いた運動療法の開発
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24500774
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
藤林 真美 摂南大学, スポーツ振興センター, 講師 (40599396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森谷 敏夫 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (90175638)
岸田 郁子 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60464533)
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Keywords | 統合失調症 / 機能的電気刺激 / 運動療法 / メタボリックシンドローム |
Research Abstract |
統合失調症患者は薬物療法を中心に治療がなされているが、抗精神病薬の副作用として耐糖能異常や肥満を惹起する場合が少なくない。さらに疾患の特徴である無為自閉なども重なり、極めて多くの患者が身体不活動状態にある。その結果、肥満症や糖尿病など生活習慣病を併発する患者が多数であり、死因も心血管系疾患によることが多いと報告されている。一方で運動は、エネルギー消費による抗糖尿病効果、インスリン感受性、糖代謝や血清脂質の改善、抗圧効果など身体へさまざまな望ましい作用を持つことから、肥満の予防や改善を含めた健康の維持・増進の中核的要素を成している。本研究は上述の現状を鑑みて、統合失調症患者を対象として、他動的に末梢神経を刺激し骨格筋を収縮させる機能的電気刺激法を用いて、運動の効果を享受してもらうことを目的として本研究を継続している。 今年度行った研究は以下のとおりである。統合失調症患者におけるメタボリックシンドローム対策を目的として、機能的電気刺激を12週間介入した。対象:長期入院の統合失調病患者12名。方法:20分間の機能的電気刺激を週に5回、合計12週間実施した。測定項目:体組成、腹部のコンピュータ断層撮影(CT)、血液組成。結果:体組成および腹部の内臓・皮下脂肪面積に有意な変化は見られなかったが、ヘモグロビンA1cが有意に低下した。なお筋肉の損傷などにより高値を示すクレアチンホスホキナーゼ(CPK)の変動はなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の順調に進展した主な理由として、研究代表者・分担者、そして臨床現場(神奈川県藤沢市、藤沢病院)職員とが一同に介し、今年度の実験について細部に渡る入念な計画を立てた。この連携がうまく取れていたことが挙げられる。具体的には実験開始期間前の準備段階において、研究代表者および研究分担者である京都大学の森谷教授が藤沢病院へ出向き、主治医を始め実際にお手伝いくださる職員を対象に、本実験についての詳細な説明および質疑応答の機会を数回設けた。このことにより、臨床の実験現場である藤沢病院職員に実験目的や方法について明確に理解していただくことが出来た。患者様への実験説明は、患者様と日ごろ慣れ親しんでいる病院職員からまず予告していただいた。その後患者様に対し、研究代表者が実験について説明を加え、患者様からの質疑応答を行い、インフォームドコンセントを行った。また同時に、研究協力者および実施者(京都大学森谷研究室院の研究生および院生)もその場に立ち会った。実施にあたっては研究代表者、京都大学森谷研究室の研究生および院生が必ず毎回立ち会い、さらに補佐として元病院看護師および運動指導士に協力して本方法を遂行したため、12週間の長きに渡る実験中事故や怪我もなく無事に終了し、貴重な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり統合失調症患者は、糖尿病やメタボリック症候群などを惹起しやすい状態にあり、その予防と改善策の構築は急務である。ところで糖尿病では、いかに食後血糖を抑制できるかが動脈硬化の進展を防ぐうえで重要であるとされている。欧米では、糖尿病予備群のうち、空腹時血糖値の正常と糖尿病型との範囲を「IFG(空腹時耐糖能障害)」、2時間後血糖値の正常と糖尿病型との範囲を「IGT(負荷時耐糖能障害)」とに分けており、特に後者が糖尿病に移行しやすく、さらに心臓循環器系障害発症のリスクも高まることが知られている。一方で、機能的電気刺激法を用いた我々の一連の研究結果により、一般中高年男性および一般の糖尿病患者を対象として食後に機能的電気刺激を介入した結果、いずれの対象群も食後血糖値の上昇を有意に抑制することが明らかになっている。このような基礎研究による貴重な結果を鑑み、今年度は統合失調症患者を対象として昼食後に機能的電気刺激を介入し、食後血糖値の推移について検討する。統合失調症患者が健康増進、とりわけ糖尿病やメタボリック症候群の予防や改善を目的として行う運動療法の確立は、精神医学分野における重要な方向性の一つである。今後その具体的手段として、機能的電気刺激法を確立してゆきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に使用する皮膚電極が次年度にリニューアルされることになった。実験時には最新の物品を使用して実験を遂行したいと考えたため、本年度は過去に購入したものでまかない、次年度に新製品を購入することとした。 機能的電気刺激装置の付属製品:皮膚電極を購入する。
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Research Products
(13 results)
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[Presentation] The association of autonomic nervous system activity with return to work after sick leave due to mood disorder2013
Author(s)
Kishida I, Fujibayashi M, Shiraishi Y, Kawanishi C, Suda A, Miyauchi M, Ishii C, Ishii N, Moritani T, Hirayasu Y.
Organizer
11th World Federation of Societies of Biological Psychiatry
Place of Presentation
Kyoto, Japan
Year and Date
20130623-20130627
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[Presentation] Effects of risperidone on autonomic nervous system activity in schizophrenia.2013
Author(s)
Suda A, Kishida I, Fujibayashi M, Kawanishi C, Shiraishi Y, Furuno T, Miyauchi M, Ishii C, Ishii N, Sugiyama N, Moritani T, Hirayasu Y.
Organizer
11th World Federation of Societies of Biological Psychiatry
Place of Presentation
Kyoto, Japan
Year and Date
20130623-20130627
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