2012 Fiscal Year Research-status Report
日本近代体育の黎明期における官立師範学校の体育史的意味
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24500779
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagano Prefectural College |
Principal Investigator |
藤坂 由美子 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (20442155)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
1.平成23年度までの研究成果を「体育・スポーツ史国際学会(ISHPES)リオデジャネイロ大会」に参加し、英語で口頭発表した。「日本における近代学校体育の導入過程について-教科書の翻刻と出版から-」と題した研究内容を他国の体育・スポーツ史研究者に伝え、意見交換することにより、外国の身体文化や教育を受容するときの過程について、それぞれの国の類似性や相違性について共に考え、共有することができた。 2.日本体育学会第63回大会(東海大学)において「明治期における音楽を伴った体操に関する一考察」と題して、平成23年度までの研究成果の一部を口頭発表した。これまでの体育史研究を見直す提言ができるような斬新な発表成果はなかったが、今後の「明治期における師範教育および学校体育教材に関する研究」のための新たな課題を発見することができた。また、「遊戯」や「体育」「体操」といった用語の概念整理の必要性についての指摘も受け、この概念整理と構築が今後の体育・スポーツ史研究の大きなテーマとなることを研究者間で確認できた。 3.官立愛知師範学校に関する調査を行うことができた。愛知県教育史を概観し、愛知県において同師範学校関連の史料収集を行ったが、明治初年の新たな貴重史料は発見することができなかった。しかし、同師範学校卒業生の卒業後の教育活動を調査するという研究アプローチと、同時期に愛知県に官立として設置された「愛知外国語学校」とその体育活動についての史料を発見した。これにより、近代初期の日本がまず着手した師範教育と外国語教育という教育政策の2本柱において、体育の目的や教育課程・教材の相違性を明らかにするという、次の研究の方向性が明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究は、おおむね研究実施計画通りに遂行できた。予想した以上に、現存する史料が少なかったことが課題となっているが、わずかでも入手できた史料や、これまでの先行研究から、今後の研究論文作成に取り掛かることができると考えている。平成24年度の研究成果を、次年度の国際学会において発表予定である。 平成24年度は、愛知県を中心とした調査を行った。他県と比較することにより、師範教育や初等・中等教育における愛知県の特殊性も見えてきそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成25年度は、前年度の史料収集・分析において明らかになったことを2つの国際学会に参加して発表する。交付申請書記載の時点では、国内と国際の学会それぞれ1回ずつを予定していたが、2つの国際学会に参加することに変更したい。国外の研究者からの意見や指摘を仰ぎ、自らの研究に新たな視点や方法を取り入れることを期待するためである。参加する国際学会は「東北アジア体育・スポーツ史学会第10回記念大会(札幌)」と「体育・スポーツ史国際学会(ISHPES)台湾大会」である。前者では「日本近代初期における体育の導入過程について-明治初期の愛知県における体育実践-」、後者では「(仮)伊沢修二の体育観の形成に関する一考察」と題した口頭発表を計画している。いずれも外国からの教育の導入や伝播に関する研究であるため、国際学会に適した発表テーマであると考えている。 2.官立大阪師範学校に関する調査を行う。前年度の愛知県同様、大阪府において明治初期の師範学校関係史料の収集と分析を行う。愛知県との比較を試み、地方の独自性についても考察する。 3.交付申請書においては、当初、平成25年度はこのほか「官立長崎師範学校」と「官立広島師範学校」の調査を予定していたが、平成26年度に実施予定であった「官立宮城師範学校」と「官立新潟師範学校」の調査に変更し、調査年度の入れ替えを行いたい。宮城と新潟は、現在居住している長野県から比較的近く、数回の史料調査が可能となり、史料収集が入念にできると考えたためである。平成25年度は、東日本と近畿の調査分析を優先したい。 4.前年度までの調査で明らかになった研究内容を、『体育史研究』または『体育学研究』に原著論文として投稿する。審査を通過した場合の論文掲載は平成26年度以降となる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2回の国際学会への旅費(外国1回、国内1回)を使用予定。また、学会発表のための英語・中国語・韓国語への発表抄録・口頭発表原稿の翻訳にかかわる謝金を使用予定。 大阪・宮城・新潟の3府県へ史料収集のための国内旅費と、史料収集の際の複写費を使用予定。 そのほか、PC関連備品(CDドライバーなど)と、近代教育史関連書籍の購入費を使用予定。
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